労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本貨物鉄道・九州旅客鉄道(佐賀不採用) 
事件番号  中労委 平成 1年(不再)第36号 
中労委 平成 1年(不再)第40号 
再審査申立人  九州旅客鉄道 株式会社 
再審査申立人  日本貨物鉄道 株式会社 
再審査被申立人  国鉄労働組合門司地方本部 
再審査被申立人  国鉄労働組合門司地方本部佐賀県支部 
再審査被申立人  国鉄労働組合 
命令年月日  平成 7年 3月15日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  本件は、国労の分割・民営化により発足した会社が、国労組合員257名を採用しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。初審佐賀地労委は、これを不当労働行為であるとして、(1)上記257名を昭和62年4月1日付で採用したものとして取扱うこと、(2)就労職場等について組合と協議すること、(3)バック・ペイ(国鉄清算事業団からの支給額との差額)及び(4)これらに関する文書の手交を命じた。
 会社がこれを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の一部を変更し、(1)初審命令の救済対象者のうち国鉄清算事業団の離職者であって、採用を希望した者の中から改めて選考し、採用すべきものと判定した者を昭和62年4月1日付で採用したものとして取扱い、命令交付日から3年以内に就労させること、(2)上記判定の結果及び選考についてそれらに用いた資料を添付して中労委に報告すること、(3)就労職場等について組合と協議すること、(4)採用者に対し、平成2年4月2日から就労するまでの間、昭和62年4月1日に採用されていたら得られたであろう賃金相当額の60%の支払いを命じ、併せて文書手交を命じた。 
命令主文  Ⅰ 本件初審命令主文を次のように改める。
1 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社は、本件初審命令別表第1記載の組合員のうち、日本 国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法 (昭和61年法律第91号)の失効に伴う平成2年4月2日に申立外日本国有鉄道清算事業団か らの離職を余儀なくされた者(以下「清算事業団離職者」という。)であって、本命令交付 後同社にその職員として採用されることを申し出たものの中から、また、再審査申立人日本 貨物鉄道株式会社は、本件初審命令別表第2記載の組合員(番号7のX1を除く。)のうち、 清算事業団離職者であって、本命令交付後同社にその職員として採用されることを申し出た ものの中から、それぞれ、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号、以下「改革法」とい う。)第23条第1項の規定により当該会社の設立委員の提示した職員の採用の基準等を参考 として当該会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年 4月1日をもって当該会社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以 内に就労させなければならない。
2 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社及び同日本貨物鉄道株式会社(以下「両会社」とい  う。)は、上記第1項による選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについ て、それらに用いた資料を添えて、それぞれ、当委員会に報告しなければならない。
3 両会社は、上記第1項を履行するに当たり、昭和62年4月1日をもって当該会社の職員に 採用したものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき職場・職 種について、再審査被申立人らと協議しなければならない。
4 両会社は、採用対象者に対して、平成2年4月2日からこれらの者が就労するまでの間、 これらの者がその期間について、それぞれ、昭和62年4月1日に当該会社に職員として採用 されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額を支払わなければならな い。
5 両会社は、本命令交付後、速やかに再審査被申立人らに対して、それぞれ、次の文書を交 付しなければならない。ただし、再審査申立人日本貨物鉄道株式会社にあっては、下記の文 言中「九州旅客鉄道株式会社代表取締役Y1」とあるのは、「日本貨物鉄道株式会社代表取 締役Y2」とする。
                      記
  昭和62年4月1日の採用においては、当社の職員として不採用とされた貴組合の組合員の 一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労働委員会により認定されまし た。
  今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。
                              平成  年  月  日
   国鉄労働組合
    中央執行委員長 X2 殿
   国鉄労働組合門司地方本部
    地方執行委員長 X3 殿
   国鉄労働組合門司地方本部佐賀県支部
    支部執行委員長 X4 殿
                           九州旅客鉄道株式会社
                            代表取締役 Y1 印
6 再審査被申立人らのその余の本件各救済申立てを棄却する。
Ⅱ 両会社のその余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1500 不採用
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した国労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不当労働行為であるとされた例。

4410 雇入拒否の場合
命令交付後新会社に職員としての採用を申し出た者の中から、新会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱い3年以内に就労させることを命じた例。

4422 その他
会社が採用対象者を選考する際に、選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについて、それらに用いた資料を添えて労働委員会に報告することを命じた例。

4410 雇入拒否の場合
救済対象者の数を具体的に明示せず「相当数となるようにすべきである」とした例。

4417 条件付命令・協議命令
昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱われる者の就労すべき職場・職種について、組合と協議することを命じた例。

4408 バックペイが認められなかった例
清算事業団を離職した平成2年4月2日から就労するまでの期間について、昭和62年4月1日に新会社に採用されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額の支払いを命じた例。

4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
陳謝文の手交及び掲示を命じた初審命令を文書交付に変更した例。

5006 採用の請求
新会社発足に当たっての社員の採用は、典型的な新規採用の場合における企業の採用の自由とはその性質を異にしており、しかも、本件不採用は不当労働行為に該当するのであるから採用命令は企業の採用の自由を侵害するものではないとされた例。

5006 採用の請求
基本計画において定められた採用人員枠を超えて採用を命ずることは救済命令の裁量の範囲を逸脱するものであり、会社の経営状況からも命令の実現は不可能であるとの会社主張が斥けられた例。

2901 組合無視
承継法人の職員の採用にあたり、国労と他の組合員の採用率に著しい格差のあることが不当労働行為とされた例。

3421 使用者と取引関係者の言動
国鉄による承継法人への職員となるべき者の選定及び採用候補者名簿の作成は、承継法人の設立委員の補助機関として行ったものであり、その過程に不当労働行為と目される行為があった場合の責任は設立委員に帰属するとされた例。

1500 不採用
改革法23条5項にいう採用とは文字どおり採用のみを指し、不採用については同条項が適用されないとの会社の主張が斥けられた例。

5121 挙証・採証
承継法人の職員の採用にあたり、国労と他の組合の組合員との採用率に著しい格差の生じた合理的理由の疎明がない場合、大量観察方式による判断が許されるとされた例。

3604 労働者に落度がある場合
国鉄改革の過程において職場規律の是正は必ずしも協力的でなかった国労組合員の行動にはそれが勤務の評定に影響を与えることとなったとしても無理からぬ側面もあったとされた例。

3421 使用者と取引関係者の言動
商法上の発起人に相当する鉄道会社の設立委員が負うべき不当労働行為とされる行為の責任は当該鉄道会社に帰属するとされた例。

1500 不採用
本件10名の組合員は西日本鉄道会社の採用通知を受けながら採用を自ら辞退したものであるからそもそも不当労働行為が存在しないとの主張に対し、これは配属先が九州地域以外であったこと等からであるとして、同主張が退けられた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集101集839頁 
評釈等情報  中央労働時報 平成7年5月10日  891号 17頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
佐賀地労委 昭和62年(不)第1号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 1年 3月22日 決定 
 
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