労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  安全タクシー 
事件番号  中労委 平成 3年(不再)第26号 
中労委 平成 3年(不再)第27号 
再審査申立人  有限会社 安全タクシー 
再審査被申立人  安全タクシー労働組合 
命令年月日  平成 7年 3月15日 
命令区分  全部変更(初審命令を全部取消し) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、新賃金協定の不締結を理由として組合員18名に対して早出、残業及び公休出勤を禁止し、協定残業手当及び一時金を支給しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審長崎地労委は、(1)組合員に対する早出、残業及び公休出勤を禁止の業務命令の取消し、(2)組合員8名に対する上記業務命令がなければ得たであろう賃金と支払い済み金額との差額の支払い(年6分加算)、(3)組合員8名に対する一時金の金額の是正及び差額の支払い(年6分加算)、(4)組合員X1に対する職場復帰後の賃金補正と差額の支払い(年6分加算)及びその余の不利益是正を命じ、組合員9名については申立てを棄却した。
組合及び会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を変更し、(1)組合員X2ら13名に対する残業等の禁止がなければ得たであろう月例賃金額と既支給済額との差額の支払い(年6分加算)、(2)組合員X2ら13名のうち昭和63年度夏期・冬期各一時金について、各支給日在籍者に対し会社回答に基づく額と既支給済額との差額の支払い(年6分加算)、(3)組合員X2ら13名のうち元年度及び2年度の夏期・冬期各一時金について、各支給日在籍者に対し残業等の禁止がなければ得たであろう月例賃金額と既支給済額との差額の支払い(年6分加算)、(4)組合員X1に対する職場復帰後の月例賃金の補正と既支給済額との差額の支払い(年6分加算)を命じ、その余の組合の救済申立て及び本件再審査申立てを棄却した。 
命令主文  Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。
1.有限会社安全タクシー(以下「会社」という。)は、下記イの7名には昭和63年7月15日 から平成3年7月24日までの間、下記ロの6名には昭和63年7月15日からそれぞれの退職日 までの間、同人らが残業等を禁止されていなければ得られたであろう各月例賃金額と支給済 額との差額相当額に、年6分相当額を加算した金員を支払わなければならない。
                  (下記略)
2.会社は、第1項の記の13名のうち、昭和63年度の夏期一時金及び冬期一時金の各支給日に 在籍していた者には、同年6月16日の団体交渉における同年度一時金に関する会社回答に基 づいて算定した各一時金額と支給済額との差額相当額に、年6分相当額を加算した金員を支 払わなければならない。
3.会社は、第1項の記の13名のうち、平成元年度及び平成2年度の夏期一時金及び冬期一時 金の各支給日に在籍していた者には、同人らが残業等を禁止されていなければ得られたであ ろう各一時金額と支給済額との差額相当額に、年6分相当額を加算した金員を支払わなけれ ばならない。
4.会社は、X1には、平成2年6月分ないし平成3年7月分の各月例賃金について、昭和62 年度協定に規定する協定残業手当等を加算した金額と支給済額との差額相当額に、年6分相 当額の金員を加算して支払わなければならない。
  また、同人に生じたその余の不利益については、第1項及び第3項の趣旨に沿って、労使 協議のうえ、措置しなければならない。
5.安全タクシー労働組合のその余の救済申立てを棄却する。
Ⅱ その余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1302 就業上の差別
36協定の調印はされたが賃金協定が成立していないとして、会社が組合の組合員らにのみ早出・残業を禁止し、協定残業手当を支払わなかったことが、組合間差別であり、不当労働行為とされた例。

2244 特定条件の固執
賃金と一時金との同時妥結を主張して、賃金協定が未成立であるから一時金も妥結しようとしないことが、不当労働行為とされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
労働条件についての監督官庁への働き掛け等活発な組合活動を嫌悪して、組合員に経済的不利益を課し、組合の弱体化を図ったことが組合の運営に支配介入したとされた例。

2901 組合無視
別組合との間においても、未だ新賃金案に関する協定が未成立であるのに、申立組合組合員らにのみ残業等を禁止した組合間差別が不当労働行為とされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
組合員であるが故に不利益を被ったままの退職をした者について、救済利益を放棄するとの積極的意思表示がないかぎり、すでに組合員でなくなったとしても、これを救済の対象とするのが相当であるとした例。

4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
残業等を禁止されてから解禁されるまでの間の割増賃金及び一時金について、残業等を禁止されていなければ得られたであろう各月別賃金額と支給済み額との差額相当額に、年6分相当額を加算した金員を支払わなければならないとした例。

4407 バックペイの支払い方法
残業等の禁止により得べかりし利益を支払わせるについて、その救済の始期は、現に残業等の禁止が命ぜられた日とするのが相当である、とした例。

4407 バックペイの支払い方法
残業等の禁止がなければ得べかりし組合員の賃金額は、残業等禁止以前1年間の年間平均一乗務営収額を求め、これに残業等禁止後の各月間乗務数を乗じて各月間営収額を算出し、当該各月間営収補正額を既存の賃金体系に当てはめるとした例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集101集978頁 
評釈等情報  中央労働時報 平成7年8月10日  894号 23頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
長崎地労委 昭和63年(不)第8号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 3年 3月27日 決定 
 
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