概要情報
事件名 |
九州旅客鉄道(大分不採用) |
事件番号 |
中労委 平成 1年(不再)第55号
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再審査申立人 |
九州旅客鉄道 株式会社 |
再審査被申立人 |
国鉄労働組合 |
再審査被申立人 |
国鉄労働組合大分地方本部 |
命令年月日 |
平成 7年 5月24日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、申立人組合員16名を新会社発足時の昭和62年4月1日付で採用しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 大分地労委は、申立人組合員16名を、昭和62年4月1日付で採用したものとして取り扱うこと、申立人組合らの就労すべき職場、職種について申立人組合と誠実に協議すること、バック・ペイ及びこれらに関する文書手交を命じた。 会社がこれを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、国鉄精算事業団解雇者の中から会社が改めて公正に選考し、採用すべきと判定した者を昭和62年4月1日をもって採用したものとして取り扱うこと、選考に用いた資料を添えて中労委に報告すること、就労職場等について組合と協議すること、採用者に対し、平成2年4月2日から就労するまでの間、昭和62年4月1日に採用されていたら得られたであろう賃金相当額の60%の支払いを命じ、併せて文書手交を命じた。 |
命令主文 |
Ⅰ 本件初審命令主文を次のように改める。 1 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社(以下「会社」という。)は、本件初審命令別紙記載 の組合員のうち、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道精算事業団職員の再就職の促 進に関する特別措置法(昭和61年法律第91号)の失効に伴い平成 2年 4月 2日に申立外日本 国有鉄道精算事業団からの離職を余儀なくされた者であって、本命令交付後会社にその職員 として採用されることを申し出たものの中から、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87 号) 第23条第 1項の規定により会社の設立委員の提示した職員の採用の基準等を参考として 会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月 1日をも って会社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以内に就労させなけ ればならない。 2 会社は、上記第1項による選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについ て、それらに用いた資料を添えて、当委員会に報告しなければならない。 3 会社は、上記第1項を履行するに当たり、昭和62年 4月 1日をもって会社の職員に採用し たものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき職場・職種につ いて、再審査被申立人らと協議しなければならない。 4 会社は、採用対象者に対して、平成 2年 4月 2日からこれらの者が就労するまでの間、こ れらの者がその期間についてそれぞれ昭和62年 4月 1日に会社に職員として採用されていた ならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額を支払わなければならない。 5 会社は、本命令交付後、速やかに再審査被申立人らに対して、次の文書を交付しなけれ ばならない。 記 昭和62年 4月 1日の採用においては、当社の職員として不採用とされた貴組合の組合員の 一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労働委員会により認定されまし た。 今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。 平成 年 月 日 国鉄労働組合 中央執行委員長 X1 殿 国鉄労働組合大分地方本部 執行委員長 X2 殿 九州旅客鉄道株式会社 代表取締役 Y1 印 6 再審査被申立人らのその余の本件救済申立てを棄却する。 Ⅱ 会社のその余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1500 不採用
2901 組合無視
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した国労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不当労働行為であるとされた例。
1500 不採用
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した国労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不利益取扱があったと判断された例。
4410 雇入拒否の場合
命令交付後新会社に職員としての採用を申し出た者の中から、新会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判断した者を、昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱い3年以内に就労させることを命じた例。
4422 その他
会社が採用対象者を選考する際に、選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについて、それらに用いた資料を添えて労働委員会に報告することを命じた例。
4410 雇入拒否の場合
救済対象者の数を具体的に明示せず「相当数となるようにすべきである」とした例。
4417 条件付命令・協議命令
昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱われる者の就労すべき職場・職●について、組合と協議することを命じた例。
4408 バックペイが認められなかった例
精算事業団を隔離した平成2年4月2日から就労するまでの期間について、昭和62年4月1日に新会社に採用されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額の支払いを命じた例。
4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
陳謝文の手交及び掲示を命じた初審命令を文書交付に変更した例。
5005 損害賠償の請求
新会社発足に当たっての社員の採用は、典型的な新規採用の場合における企業の採用の自由とはその性質を異にしており、しかも、本件不採用は不当労働行為に該当するのであるから採用命令は企業の採用の自由を侵害するものではないとされた例。
5005 損害賠償の請求
基本計画において定められた採用人員枠を超えて採用を命ずることは救済命令の裁量の範囲を逸脱するものであり、会社の経営状況からも命令の実現は不可能であるとの会社主張が斥けられた例。
1500 不採用
2900 非組合員の優遇
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
承継法人の職員の採用にあたり、国労を他の組合員の採用率に著しい格差のあることが不当労働行為とされた例。
4911 解散事業における使用者
国鉄による承継法人への職員となるべき者の選定並び採用候補者名簿の作成は、承継法人の設立委員の補助採用として行ったものであり、その過程に不当労働行為と目される行為があった場合の責任は設立委員に帰属するとされた例。
5121 挙証・採証
改革法23条5項にいう採用とは文字どおり採用のみを指し、不採用については同条項が適用されないとの会社の主張が斥けられた例。
5121 挙証・採証
承継法人の職員の採用にあたり、国労と他の組合の組合員との採用率に著しい格差の生じた合理的理由の疎明がない場合、大量観察方式による判断が許されるとされた例。
3604 労働者に落度がある場合
国鉄改革の過程において職場規律の是正に必ずしも協力的でなかった国労組合員の行動にはそれが勤務の評定に影響を与えることとなったとしても無理からぬ側面もあったとされた例。
3421 使用者と取引関係者の言動
商法上の発起人に相当する鉄道会社の設立委員が負うべき不当労働行為とされる行為の責任は当該鉄道会社に帰属するとされた例。
5006 採用の請求
本件においては、新規採用の法形式がとられたとはいえ、新会社の職員の採用に当たって募集の対象が国鉄職員に限られ、典型的な新規採用の場合における企業の採用とは性質を異にし、しかも既判断のとおり本件不採用は不当労働行為に該当するものであるから、かかる場合の救済措置として労委が会社に改革法の定める採用手続によらない採用を命じることは法律上不可能であるということはできず、また企業の採用の自由を侵害するものとはいえないとされた例。
5008 その他
労委の命令の履行によって、法的拘束力をもつ基本計画において定められた採用人員枠を越えて職員を採用することとなり、また、会社の経営に影響を及ぼすものであっても、それは改革法の手続によるものではなく、不当労働行為の救済措置として命ずることによるものであるから、労委の裁量の範囲に属するとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集102集544頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 平成 7年10月10日 896号 17頁 
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