労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  九州旅客鉄道(宮崎不採用) 
事件番号  中労委 平成 1年(不再)第59号 
再審査申立人  九州旅客鉄道 株式会社 
再審査被申立人  国鉄労働組合 
再審査被申立人  国鉄労働組合鹿児島地方本部 
命令年月日  平成 6年11月30日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  本件は、国鉄の分割・民営化により発足した会社が、国労組合員66名を採用しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 初審宮崎地労委は、これを不当労働行為であるとして、(1)上記66名を昭和62年4月1日付で採用したものとしての取扱い、(2)就労すべき職場等についての組合との協議、(3)バック・ペイ(国鉄清算事業団からの支給額との差額)を命じ、併せて文書手交を命じた。
 会社が、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の一部を変更し、(1)初審命令の救済対象者のうち国鉄清算事業団の離職者であって会社に採用を希望した者の中から改めて選考し、採用すべきものと判定した者を昭和62年4月1日付で採用したものとして取扱い、命令交付日から3年以内に就労させること、(2)上記判定の結果及び選考についてそれらに用いた資料を添付した報告、(3)就労すべき職場等についての組合との協議、(4)採用者に対し、平成2年4月2日から就労するまでの間、昭和62年4月1日に採用されていたら得られたであろう賃金相当額の60%の支払いを命じ、併せて文書手交を命じた。 
命令主文  I 本件初審命令主文を次のように改める。
1 再審査申立人九州旅客鉄道株式会社(以下「会社」という。)は、本件初審命令別紙1記 載の組合員のうち、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の 促進に関する特別措置法(昭和61年法律第91号)の失効に伴い平成2年4月2日に申立外日 本国有鉄道清算事業団からの離職を余儀なくされた者であって、本命令交付後会社にその職 員として採用されることを申し出たものの中から、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87 号)第23条第1項の規定により会社の設立委員の提示した職員の採用の基準等を参考として 会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日を もって会社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以内に就労させな ければならない。
2 会社は、上記第1項による選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについ て、それらに用いた資料を添えて、当委員会に報告しなければならない。
3 会社は、上記第1項を履行するに当たり、昭和62年4月1日をもって会社の職員に採用し たものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき職場・職種につ いて、再審査被申立人らと協議しなければならない。
4 会社は、採用対象者に対して、平成2年4月2日からこれらの者が就労するまでの間、こ れらの者がその期間についてそれぞれ昭和62年4月1日に会社に職員として採用されていた ならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額を支払わなければならない。
5 会社は、本命令交付後、速やかに再審査被申立人らに対して、次の文書を交付しなければ ならない。
                     記
  昭和62年4月1日の採用においては、当社の職員として不採用とされた貴組合の組合員の 一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労働委員会により認定されまし た。
  今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。
                                 平成 年 月 日
   国鉄労働組合
    中央執行委員長 X1 殿
   国鉄労働組合鹿児島地方本部
    執行委員長   X2 殿
                           九州旅客鉄道株式会社
                            代表取締役 Y1 印
6 再審査被申立人らのその余の本件救済申立てを棄却する。
II 会社のその余の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  4911 解散事業における使用者
国鉄改革に当たり新会社設立委員の補助機関であったと解される国鉄が行った採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成の過程において、組合所属等による差別的取扱いと目される行為があり、設立委員が右名簿に基づき採用予定者を決定した結果、所属する組合如何により新会社に採用されなかったことが不当労働行為に当たると判断される場合には、その責任を設立委員に帰属させることが改革法の趣旨に沿うものと解することが相当である。

4911 解散事業における使用者
右の新会社の職員の採用に関する最終的な権限を有する設立委員が負うべき行為の責任は、改革法23条5項により承継法人である新会社に帰属すると解することが相当である。

1500 不採用
国鉄が本件国労組合員を採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が両会社の職員として採用しなかったことは、少なくとも一部の者については組合所属の故に不利益取扱いが行われ、それにより国労の弱体化が企図されたものであるから、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たると判断するのが相当である。

4417 条件付命令・協議命令
本件不採用に関して不利益取扱いを受けた者の具体的な特定ができないため、清算事業団離職者であって本命令交付後両会社に採用を希望した者の中から、両会社の設立委員が提示した採用基準等を参考に改めて選考して採用すべきと判定した者を昭和62年4月1日付で採用したものとして取扱い、命令交付から3年以内に就労させること及び選考の経過、判定の結果について使用した資料を添えて報告することを命じた。

4417 条件付命令・協議命令
右採用対象者の数として、労働組合間の採用率の格差や両会社の定員枠と就職申込数との比率、最近3年間分の新規高校卒業者の採用実績等を参酌し、相当数とすべきである。

4408 バックペイが認められなかった例
採用対象者に対して、清算事業団を離職した日から就労するまでの間につき、昭和62年4月1日付で会社に採用されていれば得られたであろう賃金相当額の60%の支払いを命じた。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集100集1107頁 
評釈等情報  中央労働時報 平成7年3月10日  887号 21頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
宮崎地労委 昭和62年(不)第1号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 1年 4月28日 決定 
 
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