労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  平井運輸 
事件番号  兵庫地労委 平成 3年(不)第5号 
申立人  全日本運輸一般労働組合神戸支部 
被申立人  平井運輸 株式会社 
命令年月日  平成 6年 6月 7日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が(1)平成3年夏季以前の一時金の支給額、労働時間及び割増賃金算定上の時間数について、分会員を別組合員より不利益に取り扱ったこと、(2)会社が分会との団体交渉に応じず、その結果、分会員に3年年末一時金及び4年夏季一時金を支給しなかったこと、(3)分会長X1に対し業務課長を解任し、以後、役職手当を支払ってないこと、(4)分会員X2ら3名に対し、脱退勧奨したこと、(5)分会員X2及びX3に対し、労働時間の長くなる事業部門に配置転換したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 兵庫地労委は、会社に対し、(1)分会員X2ら10名に対し、それぞれ2年年末一時金、3年夏季一時金及び仮払いされた3年年末一時金について別組合員に支給された額との差額合計額の支払い、(2)分会員X4に対し、3年年末一時金の差額の支払い、(3)分会員X2ら11名に対し、4年夏季一時金として1人平均38万円となるよう算定した金額の支払い、(4)組合員に対する労働時間及び休日出勤手当等の算定について別組合員との差別取扱いの禁止、(5)組合脱退勧奨等の支配介入の禁止、(6)分会長X1を業務課長であったものとして取扱うこと、(7)分会員X2ら2名を配置転換がなかったものとして取扱うこと、(8)文書掲示を命じた。
 なお、3年年末一時金に係る団体交渉応諾については、差額の支払いを命じているからその必要がなく、4年夏季一時金の団体交渉応諾については、組合の主張、立証がないこと、別組合の組合員による別組合への加入勧誘は会社の不当労働行為に当たらないとしてそれぞれ申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合に所属するX2、X5、X6、X7、X8、X9、X4、X1、 X10及びX3に対し、それぞれ平成2年年末一時金、平成3年夏季一時金及び仮払いされた 平成3年年末一時金の差額の合計額として20万4千円を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合に所属するX4に対し、仮払いされた平成3年年末一時金の差額 として6万8千円を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合に所属するX2、X5、X6、X7、X8、X9、X4、X1、 X10、X3及びX4に対し、それぞれ平成4年夏季一時金として一人当たりの平均支給額が 38万円となるよう、従前と同様の方法により算定した金額を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人組合に所属する組合員に対し、労働時間並びに休日出勤手当及び時間 外手当の算定の分母に用いる時間数について全日本港湾労働組合阪神支部に所属する組合員 との間で差別をしてはならない。
5 被申立人は、申立人組合に所属する組合員に対し、申立人組合からの脱退を求めるなど、 申立人組合の運営に支配介入してはならない。
6 被申立人は、申立人組合の平井運輸分会長X1を、平成4年2月15日以降も業務課長であ ったものとして取り扱い、同人に対し、業務課長に復職させるまでの期間について、1ヵ月 につき3万5千円を支払わなければならない。
7 被申立人は、申立人組合員X2及びX3に対するタンクローリー事業部門への配置転換の 業務命令を行わなかったものとして取り扱い、配置転換の業務命令の日から、同人らを海上 コンテナートレーラー運転手として業務に就かせるまでの期間につき、同人らに対し、海上 コンテナートレーラー運転手として受けるはずであった賃金を支払わなければならない。
8 被申立人は、本命令書写し到達の日から1週間以内に、事業所内の見やすい位置に、自己 の費用をもって、縦1m×横70cmの白紙に下記の文書を墨書して、10日間掲示しなければな らない。
                      記
                   誓  約  文
                                 平成 年 月 日
   全日本運輸一般労働組合神戸支部
    執行委員長 X11 様
                          平井運輸株式会社
                           代表取締役 Y1
  当社が、貴組合所属の組合員に対し、一時金、労働時間並びに休日出勤手当及び時間外手 当の算定の分母に用いる時間数について不利益な取扱いをするとともに、貴組合からの脱退 を要求したことは、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると兵 庫県地方労働委員会によって認定されました。
  今後このような行為を繰り返さないようにします。
9 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
平成2年年末一時金、3年夏季一時金について、分会員に対し、別組合員より少額の一時金を支給したことについて、配分を組合毎に扱う旨の合意があるなどの事情もなく、分会員なるが故の不利益取扱いであるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
労働時間及び割増賃金算定上の時間数について別組合と差があることの合理的理由がなく、会社は分会を嫌悪して別組合との違いを意図的に隠して分会と協定した結果、労働時間が長く、割増賃金が低いという不利益取扱いを行ったとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
会社が団交を拒否したり、謝罪文の提出を団交開催条件としたことに正当な理由はなく、その結果、分会員に3年年末一時金、4年夏季一時金の支給を遅らせ、又は支給しなかったことが7条1号に該当するとされた例。

2211 団交ルールの先議
交渉が長時間に及びヤジ怒号が発生したのは、従来の説明に反した会社の行動に起因するもので、分会に謝罪文の提出を求め続けて団交を拒否した会社の態度には正当な理由がないとされた例。

2230 不穏当な態度
分会の社長、部長宅への抗議行動には行き過ぎがあり、会社としては、これについての言い分はあるとしても、それらの問題こそ団交の場で中止を求め、事態の改善を図るべきであるから、抗議行動を理由として団交拒否はできないとされた例。

1300 転勤・配転
3500 処分の時期
会社が分会長に対し、業務課長職を解任したことは、業務課長職が職制として組合員資格と相容れないとする会社主張に理由がなく、当時、不当労働行為の救済申立て直後であること等を考慮すれば、この解任は7条1号にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
部長が、会社と分会が対立している時期に、分会員に脱退を勧奨したことは、同人が本件不当労働行為事件の唯一の補佐人であること等からみて、会社による分会に対する支配介入にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
別組合員である業務課長の分会員に対する別組合への加入勧誘は、自己の所属する組合への加入勧誘であり、これを会社の行為と認めるに足らず、支配介入にあたらないとされた例。

1300 転勤・配転
海コン事業部門から勤務時間の長いローリー事業部門への2名の分会員の配転は、手続的にも不自然であり、部長の分会からの脱退要請を拒否した後に行われていること等から、同人らの分会所属を嫌悪した不利益取扱いとされた例。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集99集793頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成 6年(不再)第26号 却下(初審命令において却下の決定書が交付された場合)  平成 7年 5月24日 判決 
 
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