労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  内山工業 
事件番号  岡山地労委 昭和63年(不)第7号 
申立人  全国化学労働組合協議会内山工業労働組合 
被申立人  内山工業  株式会社 
命令年月日  平成 4年12月14日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)会社職制らをして組合脱退あるいは新労組への加入を勧奨したこと、(2)営繕緑化などの雑作業をさせるにあたり、組合員を差別したこと、(3)住宅ローンの取扱いにより組合脱退を誘引したこと、(4)社内報により組合活動を誹謗・中傷したこと、(5)集会施設の使用等の便宜供与を一方的に制約したことが争われた事件で、(1)については、脱退勧奨の禁止を、(2)については、支配介入の禁止を、(5)については、集会施設等についての協議の実施を、併せて(1)から(5)については、これに関する文書掲示を命じた。 
命令主文  主   文
1 被申立人内山工業株式会社は、申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合の組合員に対し、同組合から脱退すること及び同組合以外の他の労働組合へ加入することを奨励・勧誘してはならない。
2 被申立人内山工業株式会社は、社内放送や社内報によって、申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合が正当に行った争議行為を誹謗・中傷する広報宣伝を行い、もって申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合の運営を支配してはならない。
3 被申立人内山工業株式会社は、申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合との間で、以下の事柄につき協議しなければならない。
 ア 集会施設の使用の申込み及びその承認に関する事項。
 イ 構内放送設備の利用の申込み及びその承認に関する事項。
 ウ 組合用務にかかわる特別休暇の申込み及びその承認に関する事項。 エ 外来者が申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合の事務所・集会場へ立ち入ることの申込み及びその承認に関する事項。
4 被申立人内山工業株式会社は、本件命令後速やかに申立人全国化学労働組合協議会内山工業労働組合に対して、下記内容を記載した書面を交付しなければならない。
            記
                 平成  年  月  日
全国化学労働組合協議会
内山工業労働組合
 中央執行委員長 X1  殿
              内山工業株式会社
               代表取締役  Y1
当社が、貴組合に対して行った次の行為は、岡山県地方労働委員会によって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、深く反省するとともに、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
            記
1 当社役員及び管理職が、昭和63年 6月中旬から同年 7月下旬に至る間、職場での面接や自宅への電話などにより、貴組合の組合員に対して、貴組合から脱退すること、貴組合以外の他の労働組合へ加入することを奨励・勧誘したこと。
 また、当社が昭和63年 6月初旬から同年10月初旬までの間、貴組合と事前に協議を行うことなく、貴組合員に対して応援の指示によって、営繕緑化・バリ取りなどの業務に就かせ、さらに上記組合員を、従前の職場へ復帰させるに当たり、その時期の先後を利用して、貴組合から脱退すること及び貴組合以外の他の労働組合へ加入することを奨励・勧誘したこと。 当社が昭和63年 7月21日付けで発行したウチヤマニュース号外の、住宅ローンの切り換えに関する記事で、貴組合の組合員に対し、貴組合からの脱退を誘引したこと。
2 当社が昭和63年春闘以降、社長の社内放送やウチヤマニュースの報道内容の一部において、貴組合が正当な組合活動として行った賃上げ要求や争議行為を誹謗・中傷し、貴組合の運営を支配したこと。
3 当社が従来長期にわたり貴組合の便宜のため行ってきた、集会施設の使用、構内放送設備の利用、特別休暇の承認、上部団体役員などの貴組合事務所などへの自由立入りに関し、あらかじめ貴組合と事前に協議することなく、昭和63年 6月初旬から、急にその取扱いを貴組合に不利益に変更したこと。 
判定の要旨  1302 就業上の差別
組合の行った指名スト解除後、本部書記長ら8名に対し、営繕緑化班への応援を指示したことが不当労働行為に当たるとされた例。

1600 休暇の取扱い
従来は殆ど拒否されたことがなかった組合業務のための特別休暇を、その理由を示すことなく、また事前に組合と協議することなく、春闘のさなかに拒否したことが不当労働行為に当たるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社内に新労組結成の事実が公になった日に会社次長が組合員X2に対してなした電話の内容が、同人に対して組合脱退を勧奨するまでの積極的な意図があったとまでは認められないとされた例。また、組合員X3が長期療養生活を終え、病気見舞いの返礼のため会社次長や課長宅を訪問した際における両人の発言は、儀礼行為に附帯した社交上の会話にとどまるものであったとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社課長が部下である組合員X3に対して電話等でなした発言の内容は、総じて組合脱退と新労組への加入を説得したものとされた例。また、会社次長が組合員X3に対してなした電話の内容が、習俗的儀礼の域を越え、組合脱退と新労組への加入を説得したものとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社部長が組合員X3に対してなした発言が、組合からの脱退や新労組への加入を説得したものとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
工場長が、組合員X4に対してなした発言が、同工場長に詰問され多少負い目を感じていたX4に対し、勢いに乗じて、組合からの脱退などを改めて強く促したものとされた例。また、会社課長が組合員Kに対してなした発言が、工場長の意を受けて組合脱退を迫ったものとされた例。しかし、工場長が、スト後職場に復帰した組合員X4に対してなした発言が、同人の態度に注意や忠告を与えたもので、組合脱退まで求めたものとはいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
工場長が組合員X5に対してなした発言には過激にわたるものがあるが、両者の口論の間の売り言葉、買い言葉の類であったと認められ、組合の運動を抑制しようとしたものとはいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
工場長が組合員2名に対してなした発言および工場長が組合委員長X6の義弟である組合員X7に対してなした発言が組合からの脱退ないし新組合への加入勧奨であるとされた例。また、生産現場を巡視中の社長の組合員X8らに対する発言が、組合脱退、新組合加入が望ましいことを表明したもので支配介入に当たるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社長が会社主任と組合員3名の酒席で発言したことが懇談の間に交わされた評論か、自説の展開にすぎず、支配介入に当たらないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社長の組合員X4に対する発言が、新労組加入を勧奨した支配介入に当たるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社専務が組合員X6に対し、組合員たる地位から離れて、会社の労務担当者に就任するよう意向を打診したことについては、当時の事情を総合判断すると違法な組合脱退の勧奨を行ったことの責任を問うことはできないとされた例。

2620 反組合的言動
社内報で、組合が行った争議行為を誹謗・中傷したことが支配介入に当たるとされた例。

2901 組合無視
新労組に対しては、会社施設の貸与に応じながら、組合に対しては拒否したことが差別的取扱いであるとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
両組合に所属していない従業員を対象に、住宅ローンの切り換えに関する案内を社内報で行ったことが、組合脱退が容易に行われるように期待し、その一助としてなされた支配介入であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
会社課長が組合員X4に対してなした発言が、工場長の意を受けてなしたものとされた例。また、会社主任の組合脱退の働きかけが会社の意を体してなされたものとされた例。

3020 組合活動への制約
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
従来組合用務に関する放送については会社構内放送設備を守衛に申し出るだけで利用でき、また、従来使用を認めてきた会社施設について、労使関係が険しくなった時期に、その利用を差し止めたことが不当労働行為に当たるとされた例。

3020 組合活動への制約
従来は殆ど規制されなかった上部団体等関係者の会社構内への立入りを、労使の対立が激しくなった時期に拒否したことが不当労働行為に当たるとされた例。

4421 文書掲示等を命じた例
営繕緑化班への応援指示に関しては、その態様は千差万別であって、これらを包括し、一律に事前の協議を要求することは適当でないので、文書手交を命じた例。また、住宅ローン切り換えに関する広報については、一回限りの広報であることから文書手交を命じることで足りるとされた例。

4417 条件付命令・協議命令
便宜供与の不利益変更に対する救済として、その申込み方法や承認の基準などをめぐり、会社に対し、組合からの協議申入れを受けて合意に向け話し合いに入るよう命じることが相当であるとされた例。

4601 「抽象的不作為命令」を命じた例
会社の役員、管理職によって行われた組合脱退勧奨の救済方法として、会社に反省の意を表示させるとともに、今後かかる行為による支配介入の禁止を命じるのが相当であるとされた例。

業種・規模  ゴム製品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集95集595頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成 5年(不再)第2号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成10年 3月 4日 決定 
 
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