労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本国有鉄道東京駅 
事件番号  公労委 昭和58年(不)第2号 
申立人  国鉄労働組合 
申立人  国鉄労働組合東京地方本部 
被申立人  日本国有鉄道 
命令年月日  昭和60年12月17日 
命令区分  棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下) 
重要度   
事件概要  駅助役らが、(1)駅事務室に神棚を設置し、組合員に対し礼拝を強要したこと、(2)組合員に対して懲戒処分等の通知を手交した際、組合からの脱退を強要し、組合を誹謗中傷したこと、(3)組合の掲示板約30枚を一方的に撤去し、業務用に転用したこと、(4)組合集会を妨害したこと、(5)組合員X1に対して不必要な学習をさせたうえ、他職場への降職的な配転に応ずるよう強要したこと、(6)X1の合意もなく、配転通知を行い、発令したこと、(7)X1が配転命令に応じなかったことを理由に、懲戒処分に付したことが争われた事件で、組合の申立てを棄却した。 
命令主文  主  文
本件申立てを棄却する。 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
2700 威嚇・暴力行為
被申立人が改札事務室に神棚を移設したのは、殊更に分会の組合員らに礼拝等を行わせる目的からではなく、また、助役が組合員らに対して当該組合員であることを誹謗しつつ神棚への礼拝を強要した事実は認められないから、不当労働行為は成立しない。

0210 リボン・ワッペン等の着用
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
駅長が被処分者に処分通知書を手交した際にした発言には厳しいものがあつたが、部内の規程等によつて禁止されたワッペンを助役の事前の制止をも無視して着用したまま駅長室に入り、しかも、反省の色もなく反抗的態度をとり続けている職員に対し、駅長としての立場から、厳しい言葉でその場において注意を与える等することには理由があり、その発言の内容も、組合からの脱退や組合活動の取りやめをするよう威迫し、又は組合を誹謗中傷するようなものとは認められないから、本件駅長の言動については、不当労働行為は成立しない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3020 組合活動への制約
本件分会の各班における掲示板については、労使間の合意あるいは当局の黙認により、相当年月前から正規の許可手続を経ることなく組合用として使用してきた事実が認められるが、このような事実をもつて労使慣行というにしても、この慣行は、関係の事実規程に基づく許可を得ることなく事実上通用してきたにとどまり、被申立人としては、これを将来に向かつて破棄することができる。けだし、被申立人などの企業は、職場環境を適正良好に保持し、規律のある業務の運営態勢を確保するため、企業が本来有する施設管理権等に基づき、一般的に規則、規程によつてその物的施設を目的以外に使用する場合の許可手続等を定め、あるいは当該施設の運用に関して具体的に時宜に応じて指示、命令することができ、一方、労働組合は、所定の手続を経ずに当然に当該施設を利用する権利を保障されているわけではないからである。また、掲示板の撤去等に至るまでの間の管理者の組合側に対する措置は、再三にわたり注意、警告する等同規程に適合しており、更に、一部の班の掲示物には、助役ら個人を誹謗、侮蔑し、又は被申立人の信用を傷つける内容の記載があった。したがつて、本件掲示物の撤去等の行為は、適法かつ妥当なもので、不当労働行為とはならない。

3020 組合活動への制約
分会においては、長年にわたり当局の黙認により、正規の承認手続を経ることなく遺失物取扱所裏の敷地において集会を開催してきた事実が認められるが、このような事実を労使慣行というにしても、被申立人においてこれを将来に向かつて破棄することができる。そして、本件組合集会が業務に支障を及ぼさないからといつて、被申立人の施設管理権の及ぶ駅構内で所定の手続を経ずに自由に集会を開催できる理由はなく、また、未承認の集会を禁止する旨の警告を無視して開催された集会について管理者らが現場で解散すべき旨を通告するとともに、その開催状況をメモする等したことは、被申立人の有する施設管理権の行使として当然の措置であつて集会の妨害と評価されるものではないから、本件組合集会についての管理者らの対応は、正当なものであつて不当労働行為にはあたらない。

1300 転勤・配転
2700 威嚇・暴力行為
3011 従業員教育
停職期間終了後における分会書記長に対する被申立人の措置ないし取扱いについては、同人を隔離、軟禁したとする会議室の構造その他同人に対する自由の拘束の程度からみて、「隔離・軟禁」とはいえず、同会議室で同人が命ぜられた学習の内容も不必要なものではない。また、管理者らが同書記長に対して10回程度ねばり強く配転応諾の説得をした事実はあるが、穏当な言葉づかいにより、しかも、3駅を挙げて選択の余地を与えるという配慮の下になされたもので、配転応諾の「強要」にはあたらず、当該説得は、労使協定や慣行を無視したものでもない。更に、同人を他の職場へ配転したことには合理性があるから、単に同人が積極的に組合活動をした事実があるからといつて、他に証拠がない以上、本件被申立人の同書記長に対する措置ないし取扱いは、同人の積極的な組合活動等に対する報復としてなされたものとはいえず、不当労働行為は成立しない。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会書記長に対する他駅への配転は、合理化に伴う過員解消策の一環として行われたもので、配転先の決定も同人の接客従業員としての不適格性を考慮してなされたものである。そして、本件配転は、従来どおり「配転協定」にのつとり行われたものであつて、過去において個別の人事問題について団体交渉や協議が行われたことはなく、また、最終的に本人の同意が得られないまま配転が行われた例も過去に何件かあつた。更に、過去に分会の役員であつても配転させられた例があり、単に同書記長が活発な組合活動をしていたからといつて、他に証拠がない以上、本件配転は、同人の組合活動に対する妨害と分会の団結壊滅を狙ってなされたとはいえず、正当なものであるから、不当労働行為は成立しない。

1102 業務命令違反
正当な本件配転に応ぜず、3時間近く配転先における勤務を放棄し続けた分会書記長の行為が法律、就業規則等に定める懲戒事由に該当することは明らかであり、かつ、本件の場合、懲戒処分として免職を選択しても懲戒権者が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したとはいえないから、被申立人がした本件懲戒免職処分は適法である。また、本件懲戒免職処分が分会の団結の壊滅を狙つてなされたと認めるに足りる証拠はないから、結局不当労働行為は成立しない。

業種・規模  分類不能の産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁 昭和61年(行ウ)第9号 請求の棄却  平成 3年 7月 3日 判決 
東京高裁 平成 3年(行コ)第88号 控訴の棄却  平成 4年 9月29日 判決 
 
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