概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(品川駅外脱退勧奨) |
事件番号 |
東京地労委 昭和63年(不)第13号
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申立人 |
国鉄労働組合東京地方本部 |
被申立人 |
東日本旅客鉄道 株式会社 |
命令年月日 |
平成 5年 1月26日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)A駅の首席助役及び総括助役が組合員X1ら2名に、B駅駅長が組合員X2ら2名に、及びC駅駅長が組合員X3にX3の妻を通じて並びにD給電区区長が組合員X4に対してそれぞれ組合脱退勧奨を行ったこと、(2)会社が、A駅助役らが組合員X5ら3名に、及びB駅助役らが組合員X6ら6名に対してなした組合からの脱退を勧奨する言動を放置したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 東京地労委は、(1)について組合脱退勧奨の禁止、(2)について脱退勧奨を放置することによる組合への支配介入の禁止を命じ、併せて(1)、(2)についての文書掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人東日本旅客鉄道株式会社は、品川駅の首席助役および総括助役、浜松町の駅長、原宿駅の駅長および高崎給電区の区長らに、申立人国鉄労働組合東京地方本部傘下の申立外同新橋支部品川駅分会、同浜松町駅分会、同原宿駅分会および同高崎給電区分会所属の組合員らに対して、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を行わせてはならない。 また、被申立人会社は、品川駅の助役および浜松町駅の助役らのなす、申立人国鉄労働組合東京地方本部傘下の申立外同新橋支部品川駅分会および同浜松町駅分会所属の組合員らに対する、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する行為を放置することによって、申立人組合の組織運営に支配介入してはならない。 2 被申立人会社は、本命令受領の日から1週間以内に、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記文書を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の本社正面玄関並びに品川駅、浜松町駅、原宿駅および高崎給電区の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。 記 年 月 日 国鉄労働組合東京地方本部 地方執行委員長 X7殿 東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役 Y1 昭和63年2月8日および同月9日に当社品川駅の首席助役および総括助役が、貴組合傘下の新橋支部品川駅分会所属の組合員X1氏、同X8氏に対して、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を行ったこと、同年1月19日および2月9日に当社浜松町駅の駅長が、貴組合傘下の新橋支部浜松町駅分会所属の組合員X2氏および同X6氏に対して、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を行ったこと、同年1月16日に当社原宿駅の駅長が、貴組合傘下の新橋支部原宿駅分会所属の組合員X3氏の妻を通じて、同氏が国鉄労働組合から脱退するよう勧奨する言動を行ったこと、および同年2月5日に当社高崎給電区の区長が、貴組合傘下の新橋支部高崎給電区分会所属の組合員X4氏に対して、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を行ったことは、いずれも当社の不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。 また、昭和63年1月24日および同月31日に当社品川駅の助役らが、貴組合傘下の新橋支部品川駅分会所属の組合員X5氏および同X9氏に対してなした、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を放置したこと、同年2月2日に当社品川駅の助役が、貴組合傘下の新橋支部品川駅分会所属の組合員X10氏の両親を通じてなした、同氏が国鉄労働組合から脱退するよう勧奨する言動を放置したこと、同年1月26日から同月30日の間に当社浜松町駅の助役らが、貴組合傘下の新橋支部浜松町駅分会所属の組合員X6氏、同X11氏、同X12氏、同X13氏、同X14氏および同X15氏に対してなした、国鉄労働組合からの脱退を勧奨する言動を放置したことは、いずれも当社の不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。 今後このようなことが繰り返されないよう留意します。 (注;年月日は文書を掲示した日を記載すること。) 3 被申立人会社は、前第2項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判定の要旨 |
4820 単一組織の支部・分会等
国労東京地本は独自の規約、会計および執行機関などを有しており、地本として独立した固有の組合活動をしており、申立人適格を有するとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
品川駅の首席助役が国労組合員X1に対してなした言動が国労からの脱退勧奨を行ったものとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
品川駅の総括助役が国労組合員X8に対してなした言動が国労からの脱退勧奨にあたるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
品川駅のY2助役が国労組合員X5に対してなした言動が国労からの脱退勧奨にあたるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
品川駅のY3助役が国労組合員X10の両親に対してなした言動が、両親を通じてX10の国労からの脱退勧奨を行ったものとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
浜松町駅長が国労組合員X2駅長室に呼んで行った発言が国労からの脱退勧奨にあたるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
浜松町駅長が国労組合員X6を駅長室に呼んで叱責したことが、単に社員管理上の個人面談とは認められず、国労からの脱退勧奨の意図をもって話したものとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
浜松町駅のY4助役が部下の国労組合員X6に対してなした言動が同人の地位を利用して国労からの脱退勧奨を行ったものとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
本件申立人組合は、浜松町駅のY4助役が部下の国労組合員X16に対して脱退勧奨をを行ったと主張するが、いつ、どこで、いかなる不当労働行為があったか立証していないことから、支配介入と判断しなかった例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
浜松町のY5助役が国労組合員X15に対してなした言動は、同人が結局国労を脱退していることから、国労からの脱退勧奨にあたるとされた例。
3410 職制上の地位にある者の言動
品川駅の首席助役、総括助役、駅長および区長の国労脱退勧奨の言動は、国労を嫌悪し、その弱体化を希求する会社の意を体し、その地位を利して、会社のために行ったもので会社に帰責されるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
原宿駅長Y6が同駅分会副分会長X3の妻に対してなした言動が、X3の妻を通じて同人に対し、国労からの脱退勧奨を行った支配介入であるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
高崎給電区長Y7が同区分会員X4との面談における言動が、自己申告書の確認を行ったものとはいえず、同区長が国労からの脱退勧奨を行った支配介入とされた例。
3410 職制上の地位にある者の言動
別組合の組合員である助役らの国労からの脱退と別組合への加入勧奨が一企業一組合という会社方針と一致するところから、会社はこれを容認ないし放置していたものと認められ、会社の不当労働行為とされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集96集48頁 |
評釈等情報 |
 
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