概要情報
事件名 |
中川タクシー |
事件番号 |
中労委 昭和63年(不再)第62号
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再審査申立人 |
中川タクシー こと Y1 (第62号事件) |
再審査申立人 |
奈良県自動車交通労働組合中川タクシー分会(第63号事件) |
再審査被申立人 |
奈良県自動車交通労働組合中川タクシー分会(第62号事件) |
再審査被申立人 |
X1 外1名(第62号事件) |
再審査被申立人 |
中川タクシー こと Y1 (第63号事件) |
命令年月日 |
平成 4年 4月15日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
使用者が、(1)賃上げ等に関し誠実に団交を行わなかったこと、(2)親睦会の旅行経費を負担することにより非組合員を優遇し、組合員を差別したこと、(3)非組合員の団体である親睦会を結成し、組合員に対し同会への加入及び組合からの脱退を勧奨したこと、(4)敗者に当たり組合員を差別等したこと、(5)組合員X2に対し残業を禁止したことが争われた事件で、(1)については、誠実団交の実施及び文書掲示を、(2)、(7)については、同様な差別の禁止及び文書掲示を、(5)、(8)については同様の不利益取扱いの禁止、バックペイ及び文書掲示を命じ、(3)については、申立期間の経過を理由に却下し、その余の申立てを棄却した初審命令のうち、(5)、(8)については、同様の差別がすでに行われていないとして当該命令部分を削除し、その他一部を変更したほかは再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 初審命令主文の一部を次のように変更する。 (1) 第1項中「賃上げ」「定年延長」「退職金」「仮眠所設置」並びに「営業車の割り当て」を「昭和62年2月16日付け要求書及び同年3月10日付け要求書に係る「賃上げ」、「定年延長」、「退職金」及び「仮眠所設置」に改める。 (2) 第2項中「組合員を差別してはならない」を「弱体化を図ってはならない」に改める。 (3) 第3項及び第4項を削除する。 (4) 第5項中「申立人らと話し合い解決し、」を削り、同項を第3項とする。 (5) 第6項中「白色木板」を「白紙」に、「貴分会の要求」を「昭和62年2月16日付け及び同年3月10日付け貴分会の要求」に、「X2に対し」を「X2氏に対し」に改め、同項から第8項までを2項ずつ繰り上げる。 2 その余の本件各再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1302 就業上の差別
Y1の長男であるY2が組合員X1に対して一旦無線により配車しながら、非分会員である別の従業員に振り替えたことが、直ちに分会員又は分会員になろうとする者に対する不利益取扱いとはいえないとされた例。
1401 労務の受領拒否
交通事故にあった組合員X2に対して始末書や誓約書の提出を求め、これを拒否した同人の乗務を禁止したことが不利益取扱いにあたるとされた例。
1302 就業上の差別
分会員X1に中型車から小型車に乗り換えるよう指示したY1の行為は、同人が分会に加入する以前になされたもので、このことをもって直ちに分会員又は分会員になろうとする者に対する不利益取扱いとはいえないとされた例。
1302 就業上の差別
Y1が組合員X2に対し、従来認めていた残業を突如制限したことが不利益取扱いであるとされた例。
1602 精神・生活上の不利益
組合員X2が配車係からの指示と異なる客を乗せたことに対して、Y1の長男であるY2が無線で叱責したことが、注意の範囲内のもので不当労働行為とはいえないとされた例。
2240 説明・説得の程度
Y1は組合の賃上げ要求に対して十分検討し、また自己の提案について具体的な根拠を明らかにしてその合理性、相当性を分会に説明すべく努力を尽くし、誠意をもって対応したとはいえず、不当労働行為に当たるとされた例。
2802 福利厚生資金に関する寄付・貸付等
分会と相対立する親睦会の慰安旅行経費をY1が負担したことは、非組合員の優遇を通じて一方へ肩入れすることにより分会の弱体化を図った支配介入に当たるとされた例。
3411 その他の従業員の言動
会社の配車係X3の分会員に対する配車の仕方がY1の意を受けて行われた組合員差別とはいえないとされた例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
専属車の割当に係る部分については、本件再審査終結時には、分会員全員に専属車を割り当てているので、初審命令主文中該当部分を削除するとした例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
組合員X2に対する乗務禁止は、本件再審査審問終結時においてはもはやされていないので、初審命令主文中該当部分を削除した例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
本件審問終結時において分会員全員に専属車が配車されるに至っているので、初審命令主文中該当部分を削除した例。
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
組合員X2に対する残業禁止は、本件審問終結時において行われていないので、その是正を命じた初審命令主文中該当部分が削除された例。
4417 条件付命令・協議命令
組合員X2に対する乗務拒否及び残業禁止によって逸失した賃金相当額を支給するに当たっては、両当事者が話合いをすべきは当然であるとして、初審命令主文中、話合い解決を求めた部分を削除した例。
4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
Y1が親睦会旅行費を負担したことが不当労働行為であるからといって、何ら具体的な旅行計画を持っていない分会員に対して、同額の金員を支給するのは相当でないとした初審判断は相当であるとされた例。
5201 継続する行為
親睦会結成に関連して行われたY1の組合に対する支配介入と目される行為自体、親睦会が結成された以後も継続して行われたものと認めるに足りる疎明がないので不当労働行為には当たらないとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集94集679頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 平成4年9月10日 347号 15頁 
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