労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  エス・ウント・エー 
事件番号  東京地労委平成 1年(不)第3号 
申立人  法律会計特許一般労働組合ゾンデルホフ分会 
申立人  法律会計特許一般労働組合 
被申立人  エス・ウント・エー  有限会社 
命令年月日  平成 3年12月17日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)組合の団交申入れに対し、会社の限定した日時・議題等を組合が応諾した場合のみ団交を行うという態度に固執したこと、(2)賃上げ等の団交での回答において、根拠を明らかにするなどして誠実に対応しなかったこと、(3)会社が、自ら費用の負担等を行う「職場を守る会」主催の諸行事に、組合員の参加が妨げられていることを容認していたことが争われた事件で、(1)については、従来と同様の態度をとることなくすみやかに団交に応じること、(2)については、関係資料を提示すること等により誠実に団交に応じること、(3)については、組合員の参加が妨げられることのないよう配慮等することを命じ、併せて文書掲示及び履行報告を命じた。 
命令主文  1.被申立人エス・ウント・エー有限会社は、今後、申立人法律会計特許一般労働組合および 申立人法律会計特許一般労働組合ゾンデルホフ分会から、昭和63年12月26日付要求書記載の 第4項ないし第14項の11項目要求事項および昇給(賃上げ)・賞与(一時金)について団体 交渉の申入れがあったときは、被申立人から新たに日時、議題等を限定して団体交渉を申し 入れ、この申入れの内容のとおりに申立人らが文書等で応諾しない限り団体交渉を行わない という態度に固執することなく、誠意をもってすみやかに団体交渉に応じなければならな  い。
2.被申立人会社は、今後、申立人らと昇給(賃上げ)・賞与(一時金)について団体交渉を 行うときは、被申立人主張について、関係資料の提示等により、その根拠を具体的に明らか にするなどして誠実に対応しなければならない。
3.被申立人会社は、今後、「職場を守る会」の主催名義で行われる新年会、忘年会、ビアパ ーティーおよび旅行に、申立人分会所属の組合員の参加が妨げられないよう配慮しなければ ならず、それが実現しない場合には、「職場を守る会」に対し、上記各行事について、「寄 付」その他名目の如何を問わず、所要経費の援助を行ってはならない。
4.被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、110cm×160cm(新聞紙4頁大)の 白紙に、下記文書を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の正面入口に10日間掲示しなけれ ばならない。
                     記
                                 年  月  日
   法律会計特許一般労働組合
    執行委員長 X1 殿
   法律会計特許一般労働組合ゾンデルホフ分会
    分会長 X2 殿
                         エス・ウント・エー有限会社
                          取締役社長 Y1
  当社が、昭和63年12月26日付要求書記載の第 4項ないし第14項の11項目要求事項および昭 和63年度昇給(賃上げ)・夏季賞与(一時金)・冬季賞与(一時金)、平成元年昇給(賃上 げ)についての団体交渉において、貴組合からの団体交渉申入れに応諾せず、常に当社から 貴組合に、新たに日時、議題等を限定して申し入れた団体交渉に貴組合が文書等で応諾した 場合にのみ団体交渉を行うという態度に固執したこと、また、上記昇給(賃上げ)等の団体 交渉において、当社主張について、関係資料の提示等により、その根拠を明らかにするなど して誠実に対応しなかったことならびに「職場を守る会」主催名義の新年会、忘年会、ビア パーティーおよび旅行において、貴組合所属の組合員の参加が妨げられていることを容認し ていたことは、いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されまし た。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
5.被申立人会社は、前項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければな らない。 
判定の要旨  1601 福利厚生上の差別
3411 その他の従業員の言動
「職場を守る会」がその主催する新年会等の諸行事から組合員を排除したことは、会社と意を通じて会社のために行った不当労働行為であるとされた例。

2211 団交ルールの先議
会社が組合からの団交申入れに対して直接に応諾することなく、常に会社側から新たに日時、議題等を指定し、この申入れに組合が文書で応諾しない限り団交を行わないことは、組合の団交権の行使を不当に制限するもので、不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
団交の席上、組合の要求や主張に耳を傾け、これを検討するという姿勢を全く執らず、一方回答等の根拠を具体的に説明したりして組合の理解を求める努力を行わない会社の態度が不当労働行為であるとされた例。

2244 特定条件の固執
昇給や賞与についていわゆる「一発回答方式」を採用し、これに固執し組合に押しつけたことが不当労働行為であるとされた例。

2249 その他使用者の態度
団交はその制度の趣旨からみて労使が会見のうえ口頭によって交渉する方法によるのが原則であり、労使双方が合意しない限り文書の往復や電話等による交渉をもって団交に代えることはできないとされた例。

2120 交渉委任
会社の団交担当者である総務部長等の団交における態度は、会社としての意思決定を受けたうえでその意を体したものであるから、団交に決定権限のある者の出席を求める旨の組合の主張は認められないとされた例。

3900 「不利益の範囲」
本件諸行事は会社の福利厚生の一環としての行事であり、これらの行事からの正当な理由のない組合員の排除は「不利益取扱」に該当するとされた例。

4417 条件付命令・協議命令
本件諸行事からの組合員の排除につき、今後「職場を守る会」主催名義で行われる諸行事に組合員の参加が妨げられないよう配慮すること及び組合員の参加が引き続き妨げられる場合には同会に所要経費の援助を行わないよう命じた例。

4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
会社は、組合の団交申入れに対し、会社側から新たに日時、議題等を指定し、この申入れに応諾しない限り団交を行わないとの態度を今後も繰り返すことが必至とみられることから、かかる態度に固執することなく、すみやかに団交に応じるべき旨を命じた例。

4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
昇給、一時金の団交に関する救済として、今後、昇給、一時金について団交を行うときは、自らの主張について関係資料の提示等により、その根拠を具体的に明らかにするなど誠実に対応すべき旨を命じた例。

業種・規模  専門サービス業(法律事務所、経営コンサルタント業等) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集93集584頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成 4年(不再)第3号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 6年11月30日 決定 
東京地裁平成 7年(行ウ)第3号 救済命令の一部取消し  平成 9年10月29日 判決 
 
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