労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  静岡相互銀行 
事件番号  中労委 昭和54年(不再)第78号 
中労委 昭和55年(不再)第3号 
再審査申立人  株式会社  静岡相互銀行 
再審査申立人  全相銀連静岡相互銀行従業員組合 
再審査被申立人  株式会社 静岡相互銀行 
再審査被申立人  全相銀連静岡相互銀行従業員組合 
命令年月日  昭和62年 4月15日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  銀行が、申立人従業員組合の組合員を、昭和46年度以降52年度までの等級昇格、職位昇進、本給昇給、一時金について、別組合員と差別したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)昭和49年度以降52年度までの本給昇給、一時金及び等級昇給について再評価、再査定のうえ是正することを命じ、(2)昭和46年度以降48年度までの等級昇格、職位昇進、本給昇給、一時金については、「継続する行為」に当たらないとし、また、疎明不十分とした昭和49年度以降の職位昇進の申立ては棄却した初審命令のうち、棄却された職位昇進について救済したほか、等級昇格、職位昇進、本給昇給が「継続する行為」に当たらないとしても、申立て日より1年以内の昇給、昇進、昇給時点において、現に存する差別ないし不利益取扱いについて救済を求めていると認められるときには、その差別ないし不利益取扱いの是正を命じることは、労組法27条2項に何ら抵触するものではないとし、これらに関する初審命令主文を変更し、申立日の1年以上前の等級昇格等の是正を求める救済申立ては却下し、その余の各再審査申立てを棄却した。 
命令主文  I 初審命令主文を次のとおり変更する。
1 株式会社静岡相互銀行(以下「銀行」という。)は、全相銀連静岡相互銀行従業員組合(以下「従組」という。)の組合員(以下「従組員」という。)に対し、等級昇格を次のとおり行ったものとして取り扱わなければならない。
 (1) 昭和49年度以降同52年度までの3等級及び4等級への昇格は、各年度の従業員の昇格試験受験者を対象に、その等級別合格率が静岡相互銀行労働組合の組合員(以下「労組員」という。)の等級別合格率と均衡を失しないよう再評定を行い、再評定後の等級に是正する。
 (2) 従組員X1、X2、X3、X4、X5、X6の5等級への昇格は、昭和50年度以降の昇格試験を受験したものとみなし、その合格率が労組員の受験者の合格率と均衡を失しないよう評定を行って是正する。
 (3) 昭和46年度以降同48年度までの3等級昇格試験の受験者を対象に、従組員の合格率が労組員のそれと均衡を失しないよう再評定を行い、再評定後の昇格者を昭和49年度に3等級とする。
2 銀行は、従組員X1、X2、X3、X4、X5、X6を昭和49年9月までに代理に昇進したものとして取り扱わなければならない。
3 銀行は、従組員に対する本給昇給を次のとおり行ったものとして取り扱わなければならない。
 (1) 昭和49年度以降同52年度までの各年度の等級格付けを上記1の(1)、(2)により是正し、従組員の評定ランクを等級別評定ランク分布率が労組員と均衡を失しないよう再査定し、再査定後の評定ランクに是正して、本給昇給を是正する。なお、昭和49年度本給昇給前の本給は、下記(2)で決定した「新本給」によるものとする。
 (2) 昭和46年度以降同48年度までの等級格付けを上記1の(3)により、評定ランクを等級別評定ランク分布率が労組員のそれと均衡を失しないよう再査定して再査定後の評定ランクにより、各年度の本給昇給を再計算し、それによって昭和49年度本給昇給前の「新本給」を決定しなければならない。
4 銀行は、従組員に対する本給加給について、等級格付け及び定評ランクを上記3の(1)の昭和49年度本給昇給と同一に是正して、再計算しなければならない。
5 銀行は、従組員に対する昭和49年度夏季一時金以降同52年度年末一時金までの一時金について、各期の等級格付け、職位、本給をそれぞれ上記1の(1)、(2)、2、3の(1)に是正し、評定ランクを等級ランク分布率が労組員と均衡を失しないよう再査定し、再査定後の評定ランクに是正して、再計算しなければならない。
6 銀行は、上記1により等級是正を行う従組員に対し是正に伴う資格給の差額相当額を、上記2により職位是正を行う従組員に対し職務手当相当額を、上記3の(1)により本給及び本給昇給の是正を行う従業員に対し既支給額との差額相当額を、上記4により本給加給の是正を行う従組員及び上記5により一時金の是正を行う従組員に対し既支給額との差額相当額を支払わなければならない。この差額相当額には、支払われるべき日の翌日から年5分の割合による金員を加算して支払わなければならない。
  なお、上記の再評定及び再査定において、従組員各人の従来の決定を不利益に変更してはならない。
7 銀行は、命令書交付の日から7日以内に、縦90センチメートル以上、横 180センチメートル以上の木板に、下記のとおり墨書し、銀行本店の見やすい場所に、7日間掲示しなければならない。
  なお、年月日は掲示した初日を記載しなければならない。
                 記
 株式会社静岡相互銀行が、貴組合の組合員に対し、等級昇格、職位昇進、本給昇給、本給加給、夏季及び年末一時金について他の従業員と差別してきたことは、労働組合法第7条に違反する不当労働行為であると中央労働委員会において認定されましたので、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
                    昭和 年 月 日
 全相銀連静岡相互銀行従業員組合
  執行委員長 X7 殿
               株式会社 静岡相互銀行
               代表取締役 Y1
8 従組の昭和49年2月23日以前に係る等級昇格、職位昇進、本給昇給、資格給、職務手当、夏季及び年末一時金についての申立てを却下する。
9 従組その余の申立てを棄却する。
II その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
銀行が、3・4等級昇格試験において別組合と合格率に格差を生じさせ、組合員の等級昇格を遅くしていることが不当労働行為とされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
銀行が、組合員に受験資格を与えないでおきながら、5等級昇格試験に合格していないことをもって昇格させないことが不当労働行為とされた。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
受験資格が別組合と差別されていることの疎明がなされない以上、6等級に昇格していないことをもって不当労働行為に当たるとまではいえないとされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
職位昇進につき、合理的理由のないまま別組合員によりX1ら6名の職位昇進を遅くしたことが不当労働行為とされた。

1202 考課査定による差別
2901 組合無視
組合員の本給昇給前の本給及び本給昇給は、等級格付及び評定ランクにおいて不利益取扱いであるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
別組合員の次長昇進の実態がモデル賃金表に準じているとの疎明がなされない以上、組合員がモデル賃金表より遅れていることをもって不当労働行為であるとまではいえないとされた。

1201 支払い遅延・給付差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員に対する本給加給及び一時金が、不当労働行為とされる本給昇給と同じ等級格付及び評定ランクにより取り扱われているとされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
再審査結審時までに定年あるいは自己都合により退職したX8ら18名の救済利益、これら組合員に対する組合の救済利益は失われないとされた。

4415 賃金是正を命じた例
昇給等不利益取扱いの救済は、申立日より前1年以内のものであって、現に存する差別ないし不利益取扱いの是正を命ずることは労組法27条2項に抵触しないとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
各年度の組合員の昇格試験受験者を対象に、その等級別合格率が別組合員の合格率と均衡を失しないよう再評定を行い、再評定後の等級に是正するよう命じた例。

4415 賃金是正を命じた例
組合員X1らの昇給は、昇格試験を受験したものとみなし、その合格率が別組合員の受験者の合格率と均衡を失しないよう再評定を行い、是正を命じた。

4415 賃金是正を命じた例
組合員の等級格付けを別組合員の等級別評定ランク分布率と均衡を失しないよう再評定を行い、是正を命じた。

4617 その他
誓約文の提示命令は、労委の救済方法として確立しており、良心の自由を侵す懲罰的、報復的措置とはいえず、労委の裁量の範囲を逸脱するものではないとされた。

5201 継続する行為
各年度の等級昇給、職位昇進及び本給昇給は、それぞれの決定行為がなされた時点で完了し、また、一時金は支給がされた時点で完了するものであって「継続する行為」とは認められないとされた。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集81集596頁 
評釈等情報  中央労働時報  1987.8.10  766号 15頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
静岡地労委 昭和50年(不)第2号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和54年12月24日 決定 
 
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