労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本シェーリング 
事件番号  中労委 昭和57年(不再)第36号 
中労委 昭和57年(不再)第37号 
中労委 昭和57年(不再)第38号 
中労委 昭和57年(不再)第39号 
中労委 昭和57年(不再)第56号 
再審査申立人  日本シェーリング 株式会社 
再審査被申立人  総評合化労連化学一般日本シェーリング労働組合 
命令年月日  昭和61年11月12日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)昭和53年度ないし55年度の各賃上げについて、稼働率80%以下の者を賃上げの対象から除外したこと、(2)52年ないし55年の各一時金について、組合員を低く査定したこと、(3)昇給、昇格において組合員を差別的に取り扱ったこと、(4)会社施設の利用を拒否したこと、(5)チェック・オフ協定を破棄し、以後チェック・オフを実施しなかったことが争われた事件で、(1)「80%条項」の撤回、同条項該当組合員に対する賃上げのそれに伴う一時金の是正及び差額の支給(年5分加算)、(2)52年ないし55年の各一時金における別組合員との差額是正(同月数支給)と差額の支給(年5分加算)、(3)組合員37名の昇給、昇格の是正と(4)会社施設の利用応諾、(5)チェック・オフの再開、(6)ポスト・ノーティスを命じ、(7)申立日より1年前にかかる昇給・昇格差別についての申立ては却下し、(8)チェック・オフの明細費の交付を求める申立てについては棄却した初審命令のうち、52年夏季及び各季の各一時金についての申立て、昇給及び昇格の時期、文書掲示の掲示期間について変更し、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  I 大阪地労委昭和54年(不)第16号事件、大阪地労委昭和55年(不)第21号及び昭和56年   (不)第24号併合事件並びに大阪地労委昭和56年(不)第74号事件の命令主文を次のように 変更する。
1 日本シェーリング株式会社(以下「会社」という。)は、総評合化労連化学一般日本シ  ェーリング労働組合(以下「組合」という。)と締結した昭和53年度、昭和54年度及び昭  和55年度賃上げに関する協定中、稼動率80%以下の者を賃上げ対象者から除外する旨の条  項(以下「80%条項」という。)を適用することなく、前記各年度80%条項該当の組合の  組合員に対し、昭和53年4月、昭和54年4月及び昭和55年4月からそれぞれ賃上げが実施  されたものとして取り扱い、当該年度賃上げ相当額から既支給額を控除した額及びこれに  年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
2 会社は、組合の組合員に対し、昭和53年夏季一時金、同年冬季一時金、昭和54年夏季一時 金、同年冬季一時金、昭和55年夏季一時金及び同年冬季一時金を次のとおり是正し、算出し た額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
  (1)組合の組合員の査定部分の平均が、全日本シェーリング労働組合の組合員に対して支給   した上記各一時金の平均支給月数と同一になるよう再査定すること。
  (2)上記(1)の再査定は、既に組合の組合員各人に支給した査定部分の額を下回らない限度に   おいて行うこと。
  (3)上記各一時金の算出に当たっては、昭和53年度、昭和54年度及び昭和55年度賃上げにお   ける80%条項該当組合員に対して、それぞれ同年度賃上げが行われたものとして計算す   ること。
3 会社は、組合に対し、社員食堂、大会議室、休憩室等会社施設を業務に支障のない限り利 用させなければならない。
4 会社は、別紙記載の組合員らを昭和53年4月時点で資格級欄に掲げる資格級に、また、同 年10月時点で職階欄に掲げる係長又は主任にそれぞれ昇給、昇格したものとして取り扱い、 同時期以降得たであろう賃金・一時金相当額から既支給額を控除した額及びこれに年率5分 を乗じた額を支払わなければならない。
5 会社は、組合に対し、組合員名簿の提出を要求することなく、下記によりチェック・オフ を再開しなければならない。
                     記
 (1)定期組合費については、賃金並びに夏季一時金及び冬季一時金支給時の年14回
  (2)臨時組合費については、組合からの申入れの都度
  (3)労働金庫積立金については、前記(1)と同様年14回
  (4) 共済掛金については、賃金支給時の年12回
6 会社は、縦1m×横2mの白色木板に下記のとおり明暸に墨書して、会社正面玄関付近の 従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
                    記
                                 年  月  日
   総評化学一般合化労連
   日本シェーリング労働組合
    執行委員長 X1 殿
                         日本シェーリング株式会社
                          代表取締役 Y1
  当社が行った下記の行為は、中央労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号 に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さない よういたします。
  (1)昭和53年度、昭和54年度及び昭和55年度賃上げにおいて、80%条項を内容とする協定を   貴組合に押し付け、貴組合員を不利益に取り扱ったこと。
  (2)昭和53年夏季一時金、同年冬季一時金、昭和54年夏季一時金、同年冬季一時金、昭和55   年夏季一時金及び同年冬季一時金において、貴組合員を不当に低く査定して不利益に取   り扱ったこと。
  (3)貴組合に対して、不当に会社施設の利用を拒否したこと。
  (4)昇級、昇格に当たって貴組合員を差別的に取り扱ったこと。 
  (5)貴組合に対し、協定を一方的に破棄し、昭和56年9月以降定期組合費等のチェック・オ   フを実施しなかったこと。
7 組合の昭和52年夏季一時金及び同年冬季一時金についての申立て並びに昭和53年3月30日 以前に係る昇級、昇格についての申立てを却下する。
II その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
昭和53年から同55年までの夏季一時金及び冬季一時金の考課査定につき、申立人組合員と別組合員との間に格差をつけたことが、この格差が適正な考課査定によるものであるとの疎明がないこと等からみて、不当労働行為と認めざるを得ないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
賃上げ査定について、遅刻、年次有給休暇、労災休業等による逸失時間をも稼働率の算出の基礎とし、稼働率80%以下の者を賃上げの対象から除外したことが不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

1200 降格・不昇格
2901 組合無視
申立人組合員と別組合員及び非組合員との間に昇給、昇格について差別をつけたことが、不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
チェック・オフ協定は失効しているとして、定期組合費等のチェック・オフを拒否したことが、不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

3020 組合活動への制約
組合が、部外者を参加する旨の断りなく、社員食堂での組合会議に出席させ、これについての始末書の提出を拒否したため、以後、会社施設の利用を認めないことが不当労働行為であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
昇給、昇格差別の救済として、格付けが同時期である者をグループ化し、そのうちほぼ平均的に昇給、昇格している別組合員等と同様に、または、その平均に近い下位者と同様に取扱うのが相当であるとされた例。

5008 その他
昇給、昇格差別に対する救済措置として、必要な範囲内で、昇給、昇格したものとして取り扱うよう命ずることは、救済に関する労働委員会の裁量の問題であるとされた例。

5002 不作為命令または不確定な内容の請求
初審命令において具体的金額を明示していないとしても、会社にとっては、その支払うべき額を算出できると考えるので、これをもって内容不確定のものとして違法であるとはいえないとされた例。

5008 その他
救済制度の趣旨からみて、バック・ペイに年率5分を乗じた額を付加して支払うよう命ずることは、なお労働委員会の裁量の範囲内にあるとされた例。

5124 その他の審査手続
証人の採否は、当委員会の裁量に属するところであり、本件証人の採用の要否については、慎重に検討した結果、その必要なしと判断したものであるとされた例。

5200 除斥期間
本件救済申立ては、当該各一時金の決定及び支払いの日から一年を経過後になされているが、組合は、差別の存在を知った日を疎明しておらず、差別の存在を知り得べき日から1年以内の救済申立てであるとの初審判断は失当であるとされた例。

5201 継続する行為
昇給、昇格の決定行為は、その都度独立した行為であり、それ自体完結する1回限りの行為と解するのが相当であるから、救済申立ての1年前にかかる昇給、昇格についての申立てを却下した初審判断は相当であるとされた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集80集742頁 
評釈等情報  別冊ジュリスト労働判例百選(第5版) 照井 敬 1989年3月10日 別冊 101号  170頁 
労働判例 昭和62年2月28日 1279号 6頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁 昭和62年(行ク)第28号 一部認容  平成 2年 2月13日 決定 
 
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