概要情報
事件名 |
豊栄運輸 |
事件番号 |
愛知地労委 昭和55年(不)第11号
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申立人 |
全日本運輸一般労働組合豊栄運輸支部 |
被申立人 |
豊栄運輸 株式会社 |
命令年月日 |
昭和61年12月 5日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)無許可ビラ配布を理由に委員長を戒告処分に付したこと、(2)団交につき、別組合を先行させていること、(3)郵便物の取次ぎをしなかったこと、(4)組合事務所の移転を認めず、掲示板の設置要求にも応じなかったこと、(5)組合脱退を勧奨したこと、(6)クラブ活動、忘年会、ソフトボール大会に組合員を参加させなかったこと、(7)組合員7名を副班長に昇格させなかったこと等が争われた事件で、(1)委員長の戒告処分の取消し、(2)組合事務所の移転を認め、掲示板を設置し貸与する、(3)脱退勧奨等の支配介入の禁止、(4)組合員7名の副班長への昇格及びバックペイ、(5)文書手交を命じ、(6)申立て日まで1年以上経過している昇格等の申立ては却下し、(7)その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人執行委員長X1に対する昭和55年6月2日付の戒告処分を取り消さな ければならない。 2 被申立人は、美山物流センター内への申立人の組合事務所の移転を認め、同センター内に 申立人の組合掲示板を設置し貸与しなければならない。 3 被申立人は、申立人組合員に対し脱退勧奨を行うなどして、申立人の運営に支配介入して はならない。 4 被申立人は、申立人組合員のX2、X1及びX3を昭和55年7月1日に、X4を昭和56年 7月1日に、X5及びX6を昭和57年7月1日に、X7を昭和59年7月1日に、それぞれ遡 及して副班長に昇格させ、同人らに対し、それぞれ、昇格に伴って支払うべき賃金と既に支 払われた賃金との差額相当額を支払わなければならない。 5 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を本命令書交付の日から7日以内に手交しなけれ ばならない。 記 当社が、貴組合又は貴組合員に対し、昭和55年6月2日付の戒告処分を行ったこと、組合 事務所の美山ターミナル内への移転を認めなかったこと、組合掲示板を貸与しなかったこ と、美山ターミナル内会議室の借用申込を断わったこと、脱退勧奨を行うなどしたこと、X 2氏始め7人を副班長に昇格させなかったことは、いずれも、愛知県地方労働委員会によっ て不当労働行為であると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 昭和 年 月 日 全日本運輸一般労働組合豊栄運輸支部 執行委員長 X1 殿 豊栄運輸株式会社 代表取締役 Y1 6 申立人のX8に係る賃上げの是正を求める申立て及び申立人組合員らに係る昭和54年12月 25日以前の昇格を求める申立ては、これを却下する。 7 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 |
判定の要旨 |
0200 宣伝活動
会社施設内で許可なく機関紙を配布したことにつき、始業時刻前に終了しており、機関紙の内容について会社も問題としておらず、また、配布によって従業員間に混乱を生じたとの疎明もないことから、正当な組合活動を逸脱したとまではいえないとされた例。
1202 考課査定による差別
会社の考課査定は、全従業員一律ではなく、組合毎に行われているので、別組合を脱退し、支部に加入したことによる格差は、支部に加入したことを理由とした不利益取扱いとはいえないとされた例。
1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員7名を副班長に昇格させないことは、昇格させないことにつき、特段の事情があるとの疎明もないことからみて、支部を嫌悪した故になされた不当労働行為であるとされた例。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社の許可なく、始業時刻前に、会社施設内で機関紙を配布したことを理由に、支部執行委員長X9を戒告処分に付したことが、当該配布活動は正当な組合活動を逸脱したものとは認められないことから不当労働行為であるとされた例。
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
会社が運営する各クラブを名目上、別組合のクラブに改変し、申立人支部組合員を排除し、差別しているとの申立人支部主張が斥けられた例。
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
忘年会を別組合主催という名目で行ったことが、実質的には会社が行ってきたものとみることは困難であり不当労働行為とはいえないとされた例。
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
社内ソフトボール大会を中止し、別組合主催という名目のソフトボール大会を開催したことが、実質的に会社が開催したものとは認め難いとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社職制らが、支部組合員らに対し、脱退等を働きかけたことが不当労働行為であるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
会社総務部長、同副部長らが団交の席上、組合の上部団体について説明したことが支配介入ではないとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
別組合に対しては、会社施設の利用を認めながら、組合からの組合事務所の移転及び組合掲示版の設置の要求に応じないこと等が不当労働行為であるとされた例。
3020 組合活動への制約
組合からの集会開催のための会社会議室使用申入れを拒否したことが支配介入であるとされた例。
2901 組合無視
同一の交渉議題において、別組合を先にし、申立人支部を後にしているのは差別扱いであるとの組合主張が斥けられた例。
2901 組合無視
別組合宛の郵便物は取り次いでいるが、申立人支部宛の郵便物は取り次がず、同支部の改善申しいれにも応じていないことは、差別扱いであるとの主張が斥けられた例。
3410 職制上の地位にある者の言動
関連会社の設立委員として同社に出向を命じられた会社次長X9が、正社員になったばかりのX10に対し、申立人支部へ加入するより別組合へ加入した方がよい旨発言したことは、会社に帰責させることが相当であるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
副班長昇格差別の救済として、勤続年数20年3月を超えた年の7月1日に遡及して昇格させることを命じた例。
5200 除斥期間
組合員X8に対する考課査定に関する申立ては、いずれも、申立日までに1年以上経過したものであるとして、申立てを却下した例。
5200 除斥期間
昇格は、その都度独立して行われる1回限りの行為であり、継続する行為とは認められないとして、申立日以前1年以前の申立てを却下した例。
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集80集518頁 |
評釈等情報 |
 
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