労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本シェーリング 
事件番号  大阪地労委 昭和57年(不)第21号 
申立人  総評合化労連化学一般日本シェーリング労働組合 
被申立人  日本シェーリング 株式会社 
命令年月日  昭和58年 5月11日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  昭和56年度賃上げにおいて、稼働率80%以下の者を賃上げの対象者から除外する旨のいわゆる「80%条項」を適用したこと及び昭和56年度夏季及び冬季一時金において申立人組合の組合員について低く査定したことが争われた事件で、昭和56年度賃上げに関する協定中の「80%条項」の撤回、昭和56年夏季及び冬季一時金について、(1)昭和56年度における「80%条項」該当の申立人組合員に対する同条項が該当しなかったものとしての取り扱い、(2)申立人組合員に対する査定部分を別組合員に対して支給した一人当り平均支給月数と同一となるよう再査定し、これらの是正措置によって算出した額と既に支払った額との差額(年5分加算)を支払うこと並びにポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合と締結した昭和56年度賃上げに関する協定中、稼働率80%以下の者を賃上げ対象者から除外する旨の条項(以下「80%条項」という)を撤回しなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員に対する昭和56年夏季一時金及び同年冬季一時金について次のとおり是正し、これによって算出した額から既に支払った額を控除した額及びこれに年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
(1) 昭和56年度賃上げにおける80%条項該当の申立人組合員に対しては80%条項が該当しなかったものとして取り扱うこと
(2) 申立人組合員各人に対する査定部分を全日本シェーリング労働組合の組合員に対して支給した上記各一時金の一人当たり平均支給月数と同一になるよう再査定すること
(3) 上記(2)の再査定は、査定に基づいて既に申立人組合員各人に支給した額を下回らない限度において行うこと
3 被申立人は、2メートル×1メートル大の白色木板に下記のとおり明暸に墨書して、被申立人会社正面玄関付近の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
              記
                       年 月 日
総評合化労連化学一般日本シェーリング労働組合
 執行委員長 X1 殿
             日本シェーリング株式会社
             代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は大阪府地方労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
              記
(1) 昭和56年度賃上げにおいて、80%条項を内容とする協定の締結を貴組合に押し付け不利益に取り扱ったこと
(2) 昭和56年夏季一時金及び同年冬季一時金について、貴組合員を不当に低く査定して不利益に取り扱ったこと
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
昭和56年度賃上げにおいて、欠勤等のほかに年次有給休暇、生理休暇、産前産後休暇、組合活動及び団体交渉等による不就労時間を稼働率の算出の基礎とし、稼働率80%以下の者を賃上げの対象から除外する旨のいわゆる「80%条項」を適用したことにつき、これらの項目には労働者の権利行使を著しく制限するものが含まれていること、「80%条項」該当者をみれば、他を圧して申立人組合員が多いこと、同賃上げ交渉における会社の不誠実な態度及び妥結月払条項に固執する態度等からみて労使間で十分な協議がなされないまま協定が締結されているとみられること等から、これは、組合に組合活動上あるいは経済上の不利益を及ぼし、もってその組織の弱体化を意図した不当労働行為であるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
昭和56年夏季及び冬季各一時金について、申立人組合員と別組合員間の平均支給月数に差異をつけたことにつき、会社が主張する職種、性別及び学歴等、人的構成の差異に基づくものとは認められず、申立人組合と別組合員を差別し、もってその組織の弱体化を意図した不当労働行為であるとされた例。

5121 挙証・採証
組合間における一時金の差別の立証方法として、一時金等の支給月数を決定する前提としての考課査定そのものが事の性質上秘密裏に行われ、その内容及び資料が公開されることが少ないため、組合に個々の組合員について差別の事実の立証を要求することは困難を強いることとなり妥当とは言い難いとして、組合としては、組合間の外形的な差別を疎明すればこれによって組合間差別の疎明責任は一応果たされたものと考えるべきであるとされた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集73集373頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 昭和58年(不再)第25号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和62年12月25日 決定 
中労委 昭和59年(不再)第37号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和62年12月25日 決定 
中労委 昭和59年(不再)第36号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和62年12月25日 決定 
 
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