労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本シェーリング 
事件番号  大阪地労委 昭和50年(不)第59号 
大阪地労委 昭和52年(不)第48号 
大阪地労委 昭和53年(不)第66号 
申立人  総評化学一般日本シェーリング労働組合 
申立人  X1ほか10名 
被申立人  日本シェーリング 株式会社 
命令年月日  昭和55年 6月 6日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  経費節減を理由とする組合活動の拠点である課の廃止及びそれに伴なう組合員の配転、一時金等交渉における不誠意団交、一時金支給の考課査定における別組合員との差別扱い、賃上げにおける「稼働率80%以下の者は賃上げの対象者から除外する」条項の適用及び妥結月払い条項の導入、臨時組合費のチェックオフの一方的中止等が争われた事件で、誠意ある団交応諾、昭和51年度、52年度賃上げ協定中の80%条項・妥結月払い条項の撤回及びバックペイ(年5分相当額加算)、51年度賃上げにおける80%条項該当組合員に対して当該条項がなかったものとしての夏季・冬季一時金の査定及びバックペイ(年5分相当額加算)、昭和51年度夏季・冬季一時金の査定是正及びバックペイ(年5分相当額加算)、臨時組合費のチェックオフ再開、組合費が電算機業務を希望した場合の優先配転及びポスト・ノーティスを命じ、50年度冬季一時金については申立てを却下し、定期組合費等のチェックオフ再開については申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合からの団体交渉の申入れに対し、日時、交渉時間、場所、出席人員、議題を一方的に指定することなく、誠意をもって速やかに団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人組合と締結した昭和51年度及び昭和52年度賃上げに関する協定中、稼働率80%以下の者を賃上げ対象者から除外する旨の条項(以下「80%条項」という)及び新賃金は妥結した月から実施する旨の条項(以下「妥結月払い条項」という)を撤回し、次の措置を講じなければならない。
(1) 昭和51年度及び昭和52年度賃上げにおける80%条項該当組合員に対し、それぞれ昭和51年4月及び昭和52年4月に遡って、昭和51年度及び昭和52年度賃上げが実施されたものとし、それぞれ昭和51年度賃上げ相当額(これに対する年5分の割合による金額を含む)及び昭和52年度賃上げ相当額(これに対する年5分の割合による金額を含む)を支払うこと。
(2) 昭和51年度賃上げにおける80%条項該当組合員以外の組合員に対し、昭和51年4月から賃上げを実施したものとして取り扱い、昭和51年度賃上げの3カ月分相当額(これに対する年5分の割合による金額を含む)を支払うこと。
3 被申立人は、昭和51年度賃上げにおける80%条項該当組合員に対する昭和51年度夏季一時金及び同年度冬季一時金を、上記2の(1)によって同年度賃上げが行われたものとして算出し、その金額から既支給額を控除した額(これに対する年5分の割合による金額を含む)を同年度賃上げにおける80%条項該当組合員に支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人組合員に対し、昭和51年度夏季一時金及び同年度冬季一時金における査定を次のように是正し、それによって算出した金額と既に支給した金額との差額(これに対する年5分の割合による金額を含む)を支払わなければならない。
(1) 申立人組合員各人に対する査定部分を全日本シェーリング労働組合の組合員に対して支給した上記各一時金の平均支給月数と同一になるよう再査定すること。
(2) 上記(1)の再査定は、査定に基づいて既に申立人組合員各人に支給した金額を下回らない限度において行うこと。
5 被申立人は、申立人組合の臨時組合費について、チェック・オフを再開しなければならない。
6 被申立人は、将来電算機業務に人員を配置するに当って、別紙申立人目録記載の組合員がその業務への配置転換を希望した場合、優先的に同人らを同業務に就かせなければならない。
7 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木版に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社正面玄関付近の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
              記
                   年  月  日
  申立人代表者あて
                  被申立人代表者名
 当社は、下記の行為を行いましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であることを認め、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
              記
(1) 貴組合からの団体交渉の申入れに対し、当社より日時、交渉時間、場所、出席人員、議題を限定して団体交渉を申し入れ、この申入れに貴組合が文書で応諾しない限り団体交渉を行わないとの態度を固執したこと
(2) 昭和51年度及び昭和52年度賃上げにおいて、80%条項及び妥結月払い条項を内容とする協定を貴組合に押しつけ、貴組合員を不利益に取り扱ったこと
(3) 昭和51年度夏季一時金及び同年度冬季一時金において、貴組合員を不当に低く査定して不利益に取り扱ったこと
(4) 貴組合の臨時組合費のチェック・オフを一方的に中止したこと
(5) EDP課を廃止して、EDP課の貴組合員を配置転換したこと
 以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
8 昭和50年度冬季一時金に関する申立ては、これを却下する。
9 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
賃上げにつき、組合活動等を含む不就労を算出の基礎とする稼動率80%以下の者を賃上げの対象者から除外するという「80%条項」は、会社側にそれを導入・適用すべき特別の事情があったとは考えられないこと、また、これらの条項が労働者の権利行使等を著しく制限し、それの導入により組合員への影響が別組合員に比べ大きいこと、実際の運営も非組合員が適用除外されることがあったことなどからみて、本条項の導入・適用は、組合員に組合活動上、経済上の不利益を及ぼし、もって組合の弱体化を図ったものと判断せざるを得ない。

1603 組合活動上の不利益
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
臨時組合費の徴収は、組合大会に次ぐ決議機関である職場委員会の決定に基づき行われているものであり、そのチェック・オフが協定に基づき6年間にわたって実施されていたこと、本件紛争当時、臨時組合費の徴収は毎月必要であったこと、チェック・オフを中止する合理的理由が存しないことなどを照らし合わせ考えると、組合を弱体化するために協定を無視して、一方的に臨時組合費のチェック・オフを中止したものと判断せざるを得ない。

2242 回答なし
会社が、一時金等交渉に一貫して応ぜず、あるいはそれに対する回答として、日時、交渉時間、出席人員、議題について組合が文書で応諾しない限り団交を行わないとの態度を固執したことにつき、これらの諸条件を設けなければならない特段の事情が存せず、また、組合の要求に対し関係資料を提出せず、団交途中で退席したことなどからして、誠意をもって団交に臨んだとはいえず不当労働行為である。

3105 事業廃止、工場移転・売却
業務遅延と過大な運営費用の負担を理由とする中枢機構に属するE課の廃止につき、その理由に合理性がみられず、また、当該課が組合活動の拠点であったこと、職場と生活を守る会結成のさい当該課員の中から組合を脱退したものがいなかったこと、Y1部長が「当該課員が組合員ばかりでは困る」旨の発言をしたことなどの諸事情からして、廃止の真意は、組合の壊滅・弱体化を意図した不当労働行為と判断せざるを得ない。

1202 考課査定による差別
2901 組合無視
一時金の考課査定により別組合員と比べ組合員に少なく支給したことに合理的理由がみられず不当労働行為とされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
賃上げにつき、いわゆる妥結月実施条項を導入し別組合には実質上遡及支払と同一の取扱いをしたことが不当労働行為とされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合活動の拠点となっている課の廃止を理由とする組合員の配転につき、課の廃止が不当労働行為である以上、配転も不当労働行為とされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
定期組合費、労働金庫積立金及び共済掛金に関するチェック・オフの再開について、これらを中止したと認めるに足りる疎明がないとして申立てが棄却された例。

5008 その他
労委は、課や業務の廃止及びこれに関連する使用者の行為につき不当労働行為の成否を判定し得るのは当然であるとされた例。

5121 挙証・採証
組合の準備書面により請求する救済の具体的内容が変更され、そのため主張、立証が不十分であるとの会社主張が斥けられた例。

5201 継続する行為
考課査定に基づく各一時金の支給は、それ自体で完結する1回限りの行為であり「継続する行為」に当たらないとされた例。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集67集553頁 
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
中労委 昭和55年(不再)第39号 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和58年 8月 3日 決定 
東京地裁 昭和58年(行ウ)第133号 救済命令の一部取消し  平成 2年 3月 8日 判決 
 
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