労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  マックスファクター 
事件番号  滋賀地労委昭和49年(不)第1号 
申立人  合成化学産業労働組合連合マックスファクター労働組合 
被申立人  マックスファクター 株式会社 
命令年月日  昭和50年10月18日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  組合と対抗する社員会の結成、会社職制らの組合脱退勧奨をめぐる事件で、支配介入の禁止およびポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  主        文
1.被申立人は、申立人組合の組合員に対し、合成化学産業労働組合連合から申立人組合が脱 退せよ、又は申立人組合から脱退せよとする旨の談話、説得、宣伝等の言動をなし、申立人 組合の組織運営に支配介入をしてはならない。
2.被申立人は、下記の陳謝文を命令書交付の日から7日以内に申立人に交付し、同内容の文 章を縦1メートル横2メートルの白色木板に読みやすく墨書して、被申立人会社本社正面玄 関及び同社滋賀工場正門の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
               記
 会社は、貴組合滋賀支部の組合員に対し、昭和48年11月以来、貴組合の組織の弱体化を図るため、管理職制を使って脱退工作を行なってきたことは、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると滋賀県地方労働委員会により認定されたのでこれを認め、ここに深く陳謝するとともに今後このような行為を再び繰り返さないことを誓約いたします。
  昭和  年  月  日
         マックスファクター株式会社
          代表取締役 Y1
 合成化学産業労働組合連合マックスファクター労働組合
  中央執行委員長  X2 殿 
判定の要旨  2500 別組合の結成・援助
組合員の大量脱退と前後して結成された社員会は、その必要性に乏しく、待遇改善に関する事項を事業内容としている等組合的性格をもっており、組合員が1人も入会していないこと、結成の中心メンバーは、使用者の立場にある会社管理職が占めている等からすると、社員会は、会社が組合に対抗する手段として結成させたものと考えざるをえない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
組合が上部団体に加入したことを会社が快よく思わなかった時期に、課長が組合員であるX2係長と飲食をともにした席上で労使協調の必要性を強調したのは、社員会の目的と一致すること、及び組合大量脱退から社員会結成に至る一連の経緯からすると、課長と係長間の良き人間関係の維持に努めたものとは認められず、組合脱退を勧奨したものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社常務が組合員X2係長ら3名と飲食をともにしたのは工場移転完了の慰労のためというが、組合の2ヵ月に亘る残業拒否闘争の直後にわざわざ京都に連れ出して会合すること自体不自然であり、両者の会合は初めてであること、社員会の結成にいたる一連の経緯からみて、組合脱退を勧奨したものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y2課長等2名の職制が役員室で組合員X2係長と作業計画等につき話したと主張するが、その必要性のなかったこと、社員会結成に至る一連の状況やY2課長が同会の常任幹事であったことなどからすればX2係長に組合脱退を迫ったものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
販売部長は組合員である係長にエネルギー危機切り抜けについて話し合ったというが、部長たる者が一係長をわざわざ呼ぶこと自体不自然であり、同問題はすでに担当諸会議で具体案等が練られており、この時期に呼び出して話しをするほどのことはなかったこと、社員会結成に至る経緯からすれば、組合脱退を勧奨したものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社課長が組合員のX3係長宅に電話をかけたり訪問したことは、貸した本の返還を求めるためであったというが、その際そのことについては一言も触れていないことからみて、同課長の意図は本の返還を求めるためとは考えられず、社員会結成に至る一連の経緯等からみれば、組合の脱退を迫ることが目的であったと判断するのが妥当である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社課長代理が組合員X3係長と役員室で面談したのは、住宅融資についての同人の不満をきいただけであるというが、本人が直接相談に来るならともかく直接上司でもない課長代理が役員室に同人を呼び出していること自体不自然であり、話しの内容が社員会の目的と一致していること、社員会結成に至る一連の経緯や課長代理が同会結成時の幹事であったことなどからすれば、組合脱退を迫ったものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y2課長が組合員X3係長と会議室で面談したのは業務上の打合せであるというが、人員等の不足、増量生産等について、このときに話し合う必要性がなかったことから、他の意図によるものと考えざるを得ず、社員会結成に至る一連の経緯等からすれば、組合脱退を迫ったものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2623 脱退届け作成・提出強要
Y2課長らが組合員X4と会議室で面談したのはエネルギー危機問題等について説明したものであり、脱退届は頼まれて預ったものであるというが、管理職が組合脱退届を預かること自体非常識であり、組合員の大量脱退が相次いでいた時期であること、同人等が社員会結成当時の副会長と常任幹事であったことなどからすれば、組合脱退を迫り、脱退届の提出を強要したものと推認される。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社課長代理が組合員X2を呼び出し面談したのは、新入社員である同人に対するカウンセリングを行なったにすぎないというが、今まで個人的なつながりもなく、休日にわざわざ会社に呼び出す程のこともなかったことから他の意図によるものと考えられ、社員会結成に至る経緯や、当時同課長代理が同会幹事であったことなどからすると、組合脱退を迫ったものと推認される。

3106 その他の行為
本件組合支部からの大量脱退は、同一日に、脱退理由を同じくしてなされたもので、しかも脱退届には同一表現方法によるもの、同一用紙、連名によるもの、部下から委任状をとって脱退届をもってきたものがあること、前後して結成された社員会の結成経過等を勘案すると、会社の介入による結果と判断される。

3106 その他の行為
社内体制の確立を名目として開かれた係長以上の会議の目的は、会社の方針に組合を同調させることにあったものと認められ、席上における会社常務らの発言内容からみて、この会議は組合や上部団体を批判することによって、社員会結成後もなお組合に残留している係長4名に対し、組合脱退を迫ったものである。

業種・規模  化学工業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集76頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和50年(不再)第76号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和52年 2月16日 決定