労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  橋本タクシー 
事件番号  和歌山地労委昭和48年(不)第3号 
申立人  全国自動車交通労働組合連合会、和歌山地方連合会和歌山自動車交通労働組合、橋本タクシー分会 
申立人  全国自動車交通労働組合連合会、和歌山地方連合会和歌山自動車交通労働組合 
被申立人  橋本タクシー 株式会社 
命令年月日  昭和50年 9月25日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  分会脱退・別組合加入の勧奨、組合員をして組合員全員を勧誘して退職するよう慫慂、分会旗および立看板の撤去、別組合員に対してのみ残業中止に伴う金銭および夏期一時金を支給、定年制導入、日勤勤務替え拒否等をめぐる事件で支配介入の禁止、金銭上の不利益是正、ポスト・ノーティスを命じ、立看板の撤去、日勤勤務替え拒否については棄却し解決金支払請求は却下した。 
命令主文  主     文
1 被申立人は、申立組合加入の組合員に対し、暗に組合加入により不利益を生じることの不 安を与え、あるいは予測させることにより、組合脱退を示唆し、第一組合加入を勧奨し、さ らに申立組合員をして組合員全員を勧誘し退職するよう慫慂し、また、申立組合の組合旗を 合理的理由なく撤去するなどの方法により、申立組合の自主的運営に対する支配介入をして はならない。
2 被申立人は、申立組合の組合員に対し、昭和48年4月及び5月の残業中止に際し、第一組 合員に金銭を手交したことにより生じた申立組合員の不利益を是正する措置をとらなければ ならない。
3 被申立人は、申立組合の組合員に対し、昭和48年夏期一時金に関する交渉当時において、 第一組合員に金銭を手交したことにより生じた申立組合員の不利益を是正する措置をとらな ければならない。
4 被申立人は、本命令書到達後10日以内に縦1m×横2mの白色木板に下記の文言を分かりや すく墨書し、これを被申立人会社の本社内の従業員の見やすい場所に引き続き10日間掲示し なければならない。
              記
  会社は全自交橋本タクシー労働組合が昭和46年7月10日に結成されてから今日まで、同労 組をきらい、不当な手段によって脱退を唆し、あるいは脱退させたことについて陳謝いたし ます。
  会社は、このような不当労働行為によって、同組合と組合員のみなさんに多大のご迷惑を かけたことについて十分反省し、今後このような組合活動に対する支配介入は一切いたしま せん。
  現在、会社内に二つの労働組合がありますが、従業員のみなさんが、どちらの組合に加入 されるかはみなさんの自由であり、そのことについて、会社は今後一切干渉いたしません。
   昭和 年 月 日
                      橋本タクシー株式会社
                       代表取締役 Y1
   全自交和自交労働組合橋本タクシー分会
    分会長   X1 殿
   全自交和自交労働組合
    執行委員長 X2 殿
  以上、和歌山県地方労働委員会の命によって掲示します。
5 申立人らの請求のうち、被申立人に対する、申立人組合および組合員が被った物質的損害 および精神的苦痛に相当する解決金の支払いを求める部分は、これを却下する。
6 申立人らのその余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1205 別組合員に対する特別手当の支給
2900 非組合員の優遇
分会が時間外手当等について労基法違反の申告を労基署に提出したことを契機として、会社が残業を中止した際、分会所属組合員以外の者に対してのみ金銭を交付したことは、分会員を差別した不利益扱いであり、分会の弱体化を意図した不当労働行為である。

1205 別組合員に対する特別手当の支給
2900 非組合員の優遇
夏期一時金につき分会が交渉中に、既に会社と妥結し、その支給を受けた別組合員に対して、別途貸付金と称して勤務態度や水揚げに応じて金員を支給したことは、分会員を嫌悪し、不利益な取扱いをすることによって分会の弱体化を図った不当労働行為である。

1302 就業上の差別
分会員X3が、かつて非分会員当時病気を理由とする日勤勤務申出を許可されたのに、分会加入後、同様申出を会社が拒否したとしても、事務手伝等の日勤勤務であれば認めるとしているのであるから、これを直ちに不当労働行為と断じられない。

2621 個別的示唆・説得・非難等
非組合員であったY2に対し、分会と対抗関係にあった別組合への加入を勧奨したことは、別組合の勢力を強め、会社が嫌悪する分会を弱める結果を招くことは明らかで分会に対する支配介入にあたる。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
分会副委員長X1に対し、会社相談役が、2~3ヵ月後の復職とその間の給料の保証、勤続年数通算等を条件に全分会員を引きつれて退職するよう勧奨したことは、分会壊滅を意図した支配介入にあたる。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3500 処分の時期
定年制導入に伴う就業規則の変更届出は、その内容が定年到達者たる組合員X4の解雇を予測させるようなものであること、組合員増加の可能性をうかがわせる時期になされたこと、分会役員名の届出のあった翌日に告知したこと等の会社の態度からみて、分会に再加入したX4への報復と他従業員に対し見せしめにする一貫した意図でなされた支配介入である。

3020 組合活動への制約
夏期一時金交渉中、分会が本社社屋の車庫入口に立てた公会旗を、会社が一方的に撤去し、組合の強い返還要求によりいったんこれを返却したが、分会が再び立てたところ、すぐこれを撤去したことは、施設管理権に藉口した不当労働行為である。

3020 組合活動への制約
夏期一時金交渉中、分会が市役所周辺に立てた立看板を従業員に命じて撤去し、焼却させた行為は行き過ぎの非難は免れないが、場所が会社自体と直接関係のない所であり、その内容も、会社相談役個人を誹謗するものであることを考えると、これをもって直ちに不当労働行為と断ずることはできない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3500 処分の時期
分会員X4が約半月前に行なった乗車拒否について、当時何らの注意も与えず、同人が分会に加入した旨の届出がなされた日に、労基署に解雇予告除外認定申請を提出したことは、過去にも同人が分会に加入した際、定年制による解雇を仄めかし分会から脱退させたこと等からみて、分会に加入する限り会社から排除することを示唆し、同人の分会脱退と、他従業員の分会加入を阻止しようとしてなした支配介入である。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会員X1およびX3の借金返済について、分会未加入時には都合のつく月々返済することで特に問題にしなかったのに分会加入後、未返済金について即時返済を求めた会社の行為は、分会加入の不利益をちらつかせて脱退を示唆し、分会に動揺を与え、ひいてはその運営に支配介入することを意図したものである。

3421 使用者と取引関係者の言動
会社相談役Y3は社長辞任後も相談役として会社の相当重要な問題を独自に処理していること、しかも、同人の言動を会社が積極的に否定した形跡も見当たらず、かえって暗黙裏に了承していることから、同人の行為は実質的には会社の行為である。

5005 損害賠償の請求
申立人らは、申立人組合及び組合員の物質的損害及び精神的、肉体的苦痛に相当する解決金支払を請求しているが労働委員会の判断すべき事柄ではない。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集56集348頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和50年(不再)第72号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和52年 6月15日 決定