労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  三菱重工業 
事件番号  長崎地労委昭和48年(不)第7号 
申立人  全日本造船機械労働組合三菱重工支部長崎造船分会 
被申立人  三菱重工業 株式会社 
命令年月日  昭和50年 8月30日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  申立人組合に復帰したことを理由に給与に関する成績査定を低くし、作業配置替えしたこと、これらに対する団交を拒否したこと、組合復帰者に対する係長の言動をめぐる事件で、組合復帰者6名の成績査定取消し、組合復帰前の系数への復元、その差額の支払(年5分の利息付加)およびポスト・ノーティスを命じ、係長の言動についての団交拒否については棄却した。 
命令主文  主     文
1 被申立人は、昭和47年8月に行った申立人組合所属の組合員X1・X2・X3・X4・X 5・X6に対する勤務給及び職能給の成績査定を取り消し、同年9月から各人の成績系数が 組合復帰前の系数に復元されるまでの間の成績系数を、X2については1.03、X1・X6・ X3については1.00、X4・X5については0.97に、それぞれ是正しなければならない。
2 被申立人は、上記6名に対し、昭和47年9月から各人の成績系数が組合復帰前の系数に復 元されるまでの間の賃金差額を再計算の上、これに年5分の利息を付けて支払わなければな らない。
3 被申立人は、下記内容の陳謝文を縦1m×横1.5mの大きさの白紙に楷書で墨書し、長崎造船 所の各出入門の掲示板に一週間掲示しなければならない。
                   記
                              昭和 年 月 日
  全日本造船機械労働組合
   三菱重工支部長崎造船分会
    執行委員長 X7 殿
                            三菱重工業株式会社
                             代表取締役 Y1
                 陳  謝  文
  当社が、貴組合の組合員X1・X2・X3・X4・X5・X6が貴組合に復帰したことを 理由に成績査定を下げたこと、更に上記X2・X5・X6及びX4が貴組合に復帰したこと を理由に作業配置替えしたこと、これらのことについて貴組合から申入れのあった団体交渉 を拒否したことは、いずれも労働組合法第7条に該当する不当労働行為であることを認め、 ここに陳謝すると共に、今後、このようなことは一切しないことを誓約します。
  この旨、長崎県地方労働委員会の命令によって表明します。
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
X5ら6名の旧労復帰前のS課における申立人組合員の成績系数は全て平均以上であったこと、同人らの旧労復帰後申立人組合員の大部分の者の成績系数が下がっていること、同人らの→査定者はいずれも別組合員であること、その他会社職制の支配介入の言動等からみて、同人らの勤務給・職能給の成績査定が下がったのは、S課から集中的に組合復帰者が出たことに驚いた会社職制が、報復的に低く査定したとしか考えられず、組合へ復帰したことを理由とする不利益扱いである。

1300 転勤・配転
3900 「不利益の範囲」
旧労復帰者4名を従前の共同作業遂行責任者又は一人作業から二人作業の補助者へそれぞれ配置替えしたことは、現実的にはある程度の熟練度と統率力のある者が同責任者になっており、現場労働者はそれになることを望んでいること、配置替えによって、その後の成績査定にも影響することが推認されること等から精神的な不利益にも該当し、結局、組合へ復帰したことを理由に不利益に取り扱ったものである。

2301 人事事項
一般に成績査定等の個別的、具体的な人事の最終的な決定は使用者の専権に属するが、これらの人事の基準あるいは個別人事が組合に対する支配介入の一方法と判断されるような場合には、団交の対象となりうることは当然であり、成績査定及び作業配置換えを会社の専権事項であるとして団交を拒否したことは不当である。

2231 組合の不誠実
会社が係長の発言に関する組合からの団交申入れを頭から拒否したのならばともかく、当事者を入れず第三者だけで冷静に話し合いたいと主張しているのであり、組合の方がむしろ団交という名称にこだわり、出席者についても固執したのであるから、団交が開催されなかったことについて会社に正当な理由が認められる。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y2係長が新労から旧労に復帰した部下を呼び出しての新労再加入勧奨等の一連の言動は、係長の地位を利用し、しかも就業時間中になしたもので会社職制の組合に対する支配介入といわざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y2係長が旧労復帰者X5に対し3回面接しているなかでの両者の問答を振り返ってみると、大筋において、職制としての地位に基づく労務管理上の善意からの発言と認定できるので、組合へ復帰したことを嫌悪してなした暴言であるとの組合主張は採用できない。

4415 賃金是正を命じた例
旧労復帰者の成績査定を低く査定したことの救済として同人らに対する勤務給及び職能給の成績査定の取り消し、各人の成績系数を旧労復帰前の系数に復元せしめ、併せてポスト・ノーティスを命ずるのを相当と認める。

業種・規模  輸送用機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集56集273頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和50年(不再)第65号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和51年11月17日 決定 
中労委昭和50年(不再)第60号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和51年11月17日 決定