概要情報
事件名 |
圓井製作所 |
事件番号 |
中労委昭和46年(不再)第69号
中労委昭和48年(不再)第53号
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再審査申立人 |
株式会社 圓井製作所 |
再審査被申立人 |
全大阪金属産業労働組合 |
命令年月日 |
昭和49年 7月 3日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
寮を閉鎖して分会員を退寮させ、昇給、一時金をめぐり誠意ある団交を行なわず分会員を低く査定し、労委へ出頭する組合側証人に対し、賃金カット、考課で不利益に評価し、および会社職制が分会のビラ配布等を非難したことが争われた事件で、入寮、誠意ある団交、人事考課による査定ランクを非組合員の平均評価ランクに是正、組合側証人を会社側証人と同一に取扱うこと、賃金相当額の支給、ポスト・ノーティス等を命じた初審命令のうち、査定ランク是正の方法を具体的に明示し、退寮後退職した者に関する部分は取消し、その余の再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
I 中労委昭和46年(不再)第69号事件初審命令主文第1項中、長友義孝に関する部分を取り消し、同人に関する救済申立てを棄却する。 II 中労委昭和46年(不再)第69号事件初審命令主文第3項、第4項および同昭和48年(不再)第53号事件初審命令主文第1項、第2項を次のとおり変更する。 1. 被申立人は、分会員に対し、昭和45年および昭和46年の賃上げ額を下記(1)および(2)により是正し、すでに支給した額との差額を支払わなければならない。 記 (1) 被申立人は、分会員の人事考課による査定ランクを、昭和45年については、3級に属する分会員はその級のBランク、2級に属する分会員はその級のBAランクとし、昭和46年については、3級に属する分会員はその級のBAランク、2級に属する分会員はその級のABランクにそれぞれ是正し、昇給額を引き上げること。 (2) 被申立人は、分会員に対し、特別考課金額として、昭和45年については、3級に属する分会員は 1,227円、2級に属する分会員は 350円とし、昭和46年については、3級に属する分会員は 916円、2級に属する分会員は 619円にそれぞれ是正すること。 2.被申立人は、分会員に対し、昭和45年夏期、年末および昭和46年夏期、年末のそれぞれの各一時金について、分会員の人事考課による査定ランクを分会員が属する級の非分会員平均評価ランクとして、分会員の人事考課にかかる得点を是正し、すでに支給した額との差額を支払わなければならない。 3.被申立人は、分会員に対し、昭和45年夏期、年末および昭和46年夏期、年末のそれぞれの各一時金について、分会員の特別考課金額を下表により
年別 45年 46年
区分 夏期 年末 夏期 年末
3級に 14,400円 42,900円 7,600円 33,000円 属する者
2級に 7,700 14,900 3,600 3,600 属する者
是正し、すでに支給した額との差額を支払わなければならない。 III 再審査申立人のその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
0200 宣伝活動
会社構内でのビラ配布などの行為が就業規則において許可制となっている場合に組合が許可なくビラ配布を行なったときでも、その配布行為が休憩時間中になされ、かつその内容にもなんら不当の点がない以上、同配布行為は正当な組合活動と認めざるをえず、会社が合理的理由なくしてこれを阻止することは許されない。
1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
証人の待遇については、なんの定めもなく、慣行の存在を認めるべき資料がないから、どのように定めるかは会社の自由と言えるが、会社申請の証人は有給、分会申請の証人は無給の取扱いをしているのは、分会公然化前後の労使事情を併せ考えると、分会員を嫌悪した差別的取扱いと認めざるをえない。
1202 考課査定による差別
昭和45年、46年昇給および一時金の個人別決定に際し、申立組合員らの昇給額、支給額がいずれも非分会員の平均額をはるかに下まわっており、これについて会社は、これらの額の決定は、考課査定により公平に行なったものであると主張するが、会社の考課査定制度には査定者の主観的な判断に左右される要素が大きく、分会員を低く査定したとする理由も納得できず、査定者が分会員の組合活動を嫌悪している職制らであること等の諸事情を併せ考えると、本件賃金・一時金の低額査定は、分会員を不当に差別することにより、分会員の動揺を図り、分会の弱体化を意図したものと認めざるをえない。
1601 福利厚生上の差別
3020 組合活動への制約
会社が寮閉鎖をした真の意図は、分会の存在を察知し、寮生が寮内で組合活動をひそかに行なっていることを知り、分会員である寮生を退寮させるために、カタログ置場が不足したことなどに藉口して寮を閉鎖し同人らを退寮させたと認めざるをえない。
2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
会社は、分会の要求事項に対して、簡単なまたは一方的な回答を行ったり、賃上げ回答額等の算出基礎を示さなかったり、分会の文書による団交申入れに対して、メモ用紙に一方的に交渉日時、場所、人員のみ記載し協議内容は記載せずに渡すなど、会社の団交に臨む態度は分会を軽視し、誠意をもって団交に応じたものとは認められない。
2610 職制上の地位にある者の言動
3020 組合活動への制約
3410 職制上の地位にある者の言動
分会のビラ配布行為に対し、再三にわたってY1ら職制が行なった妨害行為は、これらの行為を放任していた会社の態度と、Y1が部長直属の地位にあったこと、分会公然化前後の分会に対する会社の態度、措置などを併せ考えると、Y1ら職制の本件言動は会社の分会に対する支配介入行為と認めざるをえない。
4413 給与上の不利益の場合
初審判断は相当であり、再審査申立には理由がないが、賃上げ、一時金差別に対する救済方法として、分会員の人事考課査定を非組合員の平均評価に是正するように命じた初審命令の主文内容を具体化するのを相当と認める。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集54集651頁 |
評釈等情報 |
労働経済判例速報 昭和49年9月30日 858号 (25巻25号) 14頁 
中央労働時報 昭和49年10月10日 563号 16頁 
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