事件名 |
京都計算センター |
事件番号 |
京都地労委昭和48年(不)第8号
|
申立人 |
日本繊維産業労働組合連合会京都織物卸商業組合労働組
合 |
被申立人 |
株式会社 京都計算センター |
命令年月日 |
昭和49年 3月25日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
|
事件概要 |
職制による組合をけんせいする発言、組合活動として着用している
ワッペンの取りはずし命令、誓約書の提出を求められた者の入社辞退等をめぐる事件で、支配介入の禁止、ポスト・ノーティスを
命じ、他は棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合の組合員に対し、労働組合を組織するこ
とをけんせいしたり、組合活動として着用しているワッペンの取りはずしを命じたりして組合の運営に支配介入してはならない。
2 被申立人は、縦1メートル、横
1.5メートルの模造紙に下記の文章を墨書し、被申立人会社内の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
記
会社は、貴組合の組合員に対し、労働組合を組織することをけんせいしたり、組合活動として着用しているワッペンの取りはず
しを命じたりしたことは、貴組合の運営に対する支配介入であったことを認め、今後一切このような行為をいたしません。
以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約します。
昭和 年 月 日
日本繊維産業労働組合連合会
京都織物卸商業組合労働組合
執行委員長 X4 殿
株式会社 京都計算センター
代表取締役 Y3
3 申立人のその余の請求を棄却する。 |
判定の要旨 |
0210 リボン・ワッペン等の着用
3020 組合活動への制約
闘争中組合員にワッペンやリボンを着用させる行為は、団結の示威の一方法として一般に行なわれており、この程度の闘争戦術は
使用者において受忍すべき限度内であるというべきであって、X1が外出する際これを呼びとめワッぺンを取らせたY1部長付の
行為は、組合員の組合活動に対する抑制で支配介入である。
1501 黄犬契約
誓約書の文言は必ずしも組合否認的なものではなく、また、X2が誓約書の提出を求められた翌日会社に入社辞退の手紙を出して
いることからすれば、誓約書の提出について、あるいは不愉快の念を抱いたかも知れないが、手紙の文書に徴すれば、従前アルバ
イトで勤務していた時と比べ著しく変化した会社の仕事に対する自信を失い、自ら入社を断念したものとみるのが相当であって、
本件誓約書の提出要求は、X2の入社後の組合活動を規制しようとしたものとも認められない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
社長の発言は、組合幹部であるX3の団交態度に関して、組合大会直前に組合員を呼びとめてなされたもので、組合を刺激する軽
卒な言動とはいえるが、その発言内容自体はX3の過激な態度に対して会社の困惑と願望を述べたにとどまるものとみられ、組合
幹部を中傷、誹謗したものとは認められない
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
団交席上での社長の発言の中には、組合組織のあり方ないしその変更について触れた内容のものを含み、不穏当な言辞がみられる
が、前後の事情からみて、組合からの唯一交渉団体に関する要求に対し単に会社の見解を述べたに過ぎず、組合の組織変更を積極
的に要求したものとは認められず、また次回の団交において賃上げ交渉が妥結していることからみても、組合の組織変更を賃上げ
の条件とするほどの強い意図のものであったとは認め難い。
0110 結成行為の範囲とされた例
2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
Y2部長付が忘年会で「組合をつくることはやめてほしい」旨の発言をしたことは明らかで、単なる酒席の雑談とは認められず、
織商からの身分移籍を前にした組合員に対し、会社に組合の組織を持ち込むことをけんせいしたものとみられる。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1部長付のX2に対する発言内容は、組合主張とは異なり、「会社の赤字が黒字に転換するまで仕事一途に励んでほしい」との
趣旨のもので、遠回しにでも組合加入を妨害する発言とはうけ取り難い。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3103 労働協約締結をめぐる行為
Y2部長付がX1に対して、仕事の多い時には少しぐらい残業せざるを得ないではないかと述べたことは、当時組合が要求した新
しい三六協定をめぐって会社と対立関係にあり、組合として残業拒否の態勢にあったとはいえ、この組合の残業拒否を非難し、そ
の方針に反して残業を強要したものとは受けとれない。
3410 職制上の地位にある者の言動
部長付は、まだ課制のない部において社長の直属下にあり、各班の責任者として部員の監督的業務を行なっていたことからみて会
社の利益代表者とみなされ、その行為は会社に帰責するといわなければならない。
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
係長の発言は、使用者の立場に立つ者がするような内容のものであることからすると、組合活動阻止の意味をもったものではある
が、係長は会社の利益代表者の地位にあるものでなく、また会社の意を受けての言動とも考えられず、結局同人の個人的な組合嫌
いの考え方から出たものというほかない。
|
業種・規模 |
繊維工業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集53集203頁 |
評釈等情報 |
労働判例 昭和49年7月1日 200号 70頁
|