労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ホンヤク出版 
事件番号  東京地労委昭和44年(不)第13号 
東京地労委昭和44年(不)第24号 
申立人  東京出版印刷製本産業労働組合 
被申立人  株式会社 ホンヤク出版社 
命令年月日  昭和47年 8月15日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、従業員との個人面接、集会、保証人等への書簡等を通じて、組合加入阻止、脱退勧奨をし、また、ビラ配布を契機に組合員を解雇、けん責等の処分に付した事件で、処分の取消し、バックペイ、支配介入行為の禁止、ポスト・ノーティスを命じ、他は棄却した。 
命令主文  1. 被申立人株式会社ホンヤク出版社は、 (ア)従業員に対する個人面接により、 (イ)従業員大会、業務説明会等における発言を通じ、 (ウ)従業員の父兄および保証人への書簡の送付によって、従業員が申立人東京出版印刷製本産業労働組合へ加入することを阻止したり、申立人組合から脱退することを勧誘してはならない。
2. 被申立人会社は、申立人組合の組合員X1、同X2、同X3、同X4に対して、次の措置を講じなければならない。
(1) 昭和44年4月7日付および同月16日付のそれぞれ3日間の出勤停止処分並びに始末書提出命令を取り消し、この間に同人らが受けるはずであった給与相当額を支払うこと。
(2) 原職または原職相当職に復帰させ、昭和44年4月23日以降原職または原職相当職に復帰するまでの間に同人らが受けるはずであった給与相当額を支払うこと。
3. 被申立人会社は、申立人組合の組合員X5に対する昭和44年4月7日付および同月16日付のそれぞれ3日間の出勤停止処分並びに始末書提出命令を取り消し、この間に同人が受けるはずであった給与相当額を支払うとともに、同月23日付けん責処分並びに始末書提出命令を取り消さねばならない。
4. 被申立人会社は、申立人組合の組合員X6に対する昭和44年4月23日付けん責処分並びに始末書提出命令を取り消さねばならない。
5. 被申立人会社は、申立人組合に対して、本命令を受けた後3日以内に下記の文書を手交するとともに、同文のものを縦90センチメートル、横150センチメートルの木板に見易く墨書し、会社正面入口に1週間掲出しなければならない。
             記
 当社が、貴組合のホンヤク出版分会結成通告以来、個人面接などを通じて分会員に脱退を勧誘したり、分会員X1らにけん責、出勤停止、懲戒解雇などをしたことは、東京都地方労働委員会において、いずれも不当労働行為であると認定されました。今後このようなことのないよう留意します。
   昭和 年 月 日
               株式会社  ホンヤク出版社
               代表取締役 Y1
 東京出版印刷製本産業労働組合
     執行委員長 X7 殿
 (注 年月日は文書を手交、提出した日を記載すること。)
6. その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
分会の中心的活動家を嫌悪してなした第一次処分に対し、分会が抗議集会を開き、会社に団交を求めたが、分会代表の入室が阻止されたため、入口附近でもみ合う事態が生じたとしても行き過ぎた組合活動とはいえず、これらの行為を理由とした出勤停止処分、始末書提出命令は不当労働行為である。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
組合配布のビラの内容・方法等は別組合と比較して問題とする程のものではなく、ビラ回収に対する組合の抗議行為が就業時間に及んだのは、職制の行為に誘発されたことによるものであり、その抗議も正当性の範囲を逸脱していないから、抗議行為者に対するけん責等の処分は不当労働行為である。

1300 転勤・配転
X3の勤務場所の業務は、秘密保全のため業務取扱者名につき相手会社の承認が必要であり、会社がX3についてはその承諾が得られないと判断して勤務場所を移動したのであるから不当労働行為に基づくものとはいえない。

1300 転勤・配転
組織変更に伴う配転については、これにより特に分会員を差別したとか組合分断を図ったとかの十分な疎明がなく、むしろ、配転が経営上の都合によるもので、しかも会社は業務態勢について予め各部毎に説明していることが認められるので、不当労働行為ではない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
従業員に対する個人面接が業務上必要であったとしても、職制らは、その機会に分会問題にふれたり、分会脱退を勧誘したり、これに批判的な意見を述べたことは、不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
会社が、労働組合について無知であったとしても、組合への加入阻止や脱退勧誘は許されず、また、職制の発言は、会社が組合を嫌っていたこと、その発言が会社の意に沿うものであったことからみて、会社の意を体してなされたものと認められるから、不当労働行為である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
会社が、従業員の父兄および保証人に送付した文書の文言は、組合への不信感を煽り、組合を誹謗・中傷したもので、父兄および保証人を通じて間接に、従業員本人に組合加入阻止、組合脱退を決意させようと策した支配介入と認められる。

3700 使用者の認識・嫌悪
組合幹部4名の懲戒解雇の理由とされた組合活動中には行過ぎたものもあるが、他面、会社が不当労働行為に当るけん責処分・出勤停止処分・始末書提出命令を行ない、更に支配介入に当る言動等を行なってきたことを総合すれば、分会を嫌悪した会社が、同人らを排除して分会勢力の一掃を図った不当労働行為と認められる。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集47集217頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和47年(不再)第76号 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和49年 7月 3日 決定