概要情報
事件名 |
東京・中部日本新聞社 |
事件番号 |
東京地労委昭和41年(不)第40号
東京地労委昭和43年(不)第58号
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申立人 |
東京新聞労働組合 |
申立人 |
X1 外 5 名 |
被申立人 |
株式会社 東京新聞社 |
被申立人 |
株式会社 中部日本新聞社 |
命令年月日 |
昭和46年 2月16日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
営業譲渡前の会社が組合幹部を懲戒処分に付し、譲渡を受けた会社も解雇者から採用希望をとらなかった事件で、懲戒処分の撤回、バックペイ、退職金の支払、被解雇者が入社申込をした場合の遡及採用、バックペイ、争議中の負傷事件について会社、組合双方からの陳謝文のとりかわしを命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社東京新聞社は、申立人X1、同X2、同X3、同X4に対する昭和40年7年30日付懲戒解雇を撤回し、解雇の日から昭和42年9月30日までの間に同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払うほか同日付で計算した所定の退職金を支払うなど一般の退職者に対すると同様の取扱をしなければならない。 2 被申立人株式会社東京新聞社は、申立人X5、同X6に対する昭和40年7月30日付懲戒休職3カ月の処分を撤回し、同人らがこの処分によって失なった賃金相当額を支払わなければならない。 3(1) 被申立人株式会社中部日本新聞社は、申立人X1、同X2、同X3、同X4に対して、同社への入社申込の機会を与えなければならず、この入社申込の手続は、同社が昭和42年10月1日被申立人株式会社東京新聞社から営業譲渡を受けた際、被申立人株式会社東京新聞社の従業員を採用するに当ってとったと同様の手続でなければならない。 (2) 被申立人株式会社中部日本新聞社は、同人らが3(1)の手続きによって入社の申込をしたときは、同人らを昭和42年10月1日に遡って採用しなければならない。 (3) 被申立人株式会社中部日本新聞社は、同人らに対して昭和42年10月1日から同人らが就労するまでの間に受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。 (4) 被申立人株式会社中部日本新聞社は、同人らが被申立人株式会社東京新聞社において有していた原職に同人らを復帰せしめることを本旨とし、かつ、同人らが解雇されずに引き続き就労していたとすれば通常処遇されたであろう地位および給与を与えなければならない。 4 被申立人株式会社東京新聞社は、申立人組合から後記(甲)の文書の交付を受けると引き換えに後記(乙)の文書を同組合に交付しなければならない。 (甲) 昭和39年12月31日および昭和40年5月19日、20日の争議に際して、貴会社の側に立つ職員のうち負傷された各位に陳謝の意を表します。 昭和 年 月 日 東京新聞労働組合 株式会社東京新聞社 御中 (乙) 昭和39年12月31日および昭和40年5月19日、20日の争議に際して、貴組合の組合員のうち負傷された各位に陳謝の意を表します。 昭和 年 月 日 株式会社 東京新聞社 東京新聞労働組合 御中 (甲)(乙)ともに日付は発信の日を記入すること。 5 昭和43年不第58号事件の申立ては却下する。 |
判定の要旨 |
0203 職場闘争と業務妨害
闘争委員がプラカードを掲げ、携帯マイクを用いて職場をまわり組合の指令を伝達したことは、職場の部屋が大きいこと、騒音の多い職場もあることなどから従来会社でも黙認しており、このときに限ってとくに会社業務の妨害になったとは認められないから、正当な組合活動を逸脱したものとはいえない。
0203 職場闘争と業務妨害
編集局社会部における職場集会は、当時社会部所属の者はほとんど全員が組合員でこの集会に参加したこと、マイクの使用も注意されると間もなくやめたこと、集会自体は20分位で終ったこと、夕刊の発行予定がなかったことなどからみて不法な組合活動であるとは認められない。
0414 ピケッティング
ピケラインにおいて会社職制や販売店関係者を社内に入れるかどうか紛争があった際、組合は話し合いの末、販売店関係者数名を社内に入れており、関係者の通行を全面的に阻止したものでないから正当な組合活動の枠を越えたものではない。
0414 ピケッティング
ピケラインにおいて職制と組合員がもみ合い負傷者がでたことについては組合にも責任があるから、組合活動としては行過ぎである。
0413 ストライキ(含部分・指名スト)
会社は、無許可で職場放棄して職場懇談会を開いたことを処分理由としているが、一斉休憩時間又は時限ストによる職場放棄であり、しかも同人は当時指名ストに入っていたから結局、組合活動を理由とする処分となる。
0200 宣伝活動
会社の正面玄関のドアなどにビラをはったことは、その内容、はり方もとくにひどいといえず、会社の施設管理上重大な侵害になったとは認められないから正当な組合活動の範囲を逸脱したとはいえない。
0203 職場闘争と業務妨害
組合員がローリング機周辺に滞留した時間が新聞製作の時間にまたがっていたこと、会社の業務を妨害し阻止しようとしたこと、何回かの小ぜり合いで双方に負傷者が出たことなどを総合すれば組合の行動は、機械の使用を阻止する意図のもとに行なったと認められ正当とはいい難い。
1900 営業譲渡・合併
本件営業譲渡は、包括承継ではないが、被譲渡人たるC社はT社の従業員中入社を希望する者全員を採用しており、かつ、営業譲渡を受ける際に本件処分の経緯を十分知っていたものであるから、本件処分が不当労働行為である以上、C社には、他の従業員と同様被解雇者らに採用の手続をとる機会を与え、採用する際は譲渡の日に遡及してバックペイの責任を負わしめるのが相当である。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合活動に行き過ぎのあったことを機として正当な組合活動とあわせ処分の対象としたことは行過ぎの原因が組合側のみの責任とは認められないことなどからみて、申立人らを企業から排除し、組合活動に打撃を与えて組合の弱体化を意図してなされたものと認められる。
5147 その他
先の事件に関してC社を被申立人として追加の決定をしたうえで審査を進めたから、C社に対する後の申立ては先の事件の救済内容と全く一致することになり、同一の救済内容を二重に請求していることとなるから後になされた重複的な申立ては容認できない。
4617 その他
争議中に発生した障害事件につき、労、使双方に陳謝文の交換を命じた例。
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集44集99頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1971年4月15日 121号 62頁 
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