概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
東京地裁令和7年(行ウ)第359号
飛島交通第六取消請求事件 |
| 原告 |
X会社(「会社」) |
| 被告 |
東京都(処分行政庁 東京都労働委員会(「都労委」)) |
| 被告補助参加人 |
Z組合(「組合」) |
| 判決年月日 |
令和8年6月29日 |
| 判決区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、2回の団体交渉における会社の対応が不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
2 都労委は、会社が、令和5年3月20日の第1回団体交渉で約束した文書回答をその後行わず、同年5月17日の第2回団体交渉でその理由について合理的な説明をしなかったこと等について、労働組合法(「労組法」)7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、(i)組合が令和5年3月20日付けの要求書に係る団体交渉を申し入れたときは、文書による回答を提示して誠実に応じなければならないこと、(ⅱ)文書の交付及び掲示等を命じた(「本件救済命令」)。
3 会社はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は会社の請求を棄却した。
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| 判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。
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| 判決の要旨 |
1 判断
⑴ 労組法7条2号は、使用者がその雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことを不当労働行為として禁止するところ、使用者は、必要に応じてその主張の論拠を説明し、その裏付けとなる資料を提示するなどして、誠実に団体交渉に応ずべき義務(「誠実交渉義務」)を負い、この義務に違反することは、同号の不当労働行為に該当するものと解される(最高裁令和3年(行ヒ)第171号同4年3月18日第2小法廷判決・民集76巻3号283頁参照)。
そして、使用者が誠実に団体交渉にあたったかどうか(誠実交渉義務を果たしたかどうか)は、他方当事者である労働組合の合意を求める努力の有無・程度、要求の具体性や追求の程度、これに応じた使用者側の回答又は反論の提示の有無・程度、その回答又は反論の具体的根拠についての説明の有無・程度、必要な資料の提示の有無・程度等を考慮して、使用者において労働組合との合意達成の可能性を模索したといえるかどうかにより決せられるものというべきであり、使用者の負う誠実交渉義務の具体的内容も、これらの具体的事情により定まるというべきである。
⑵ これを本件についてみると、第1回団体交渉において、B2部長は、営業車の譲渡に関し組合の承諾書作成を求めた際、A1委員長からの本件要求事項に関する文書での回答をもらえるのであれば作成に応じることができる旨の申出を受けて、「お約束させて頂きます」と述べたこと、そこで、組合は、第1回団体交渉終了後、その場で承諾書への押印をしたこと、第2回団体交渉において、A3書記次長が、会社から文書回答をいただけることを信頼し承諾書に押印したのに裏切られたという感覚であると述べたのに対して、会社側からそのような約束はなかったとの発言はされていないことが認められ、このような経過からすれば、会社は、第1回団体交渉において、組合に対して本件要求事項について文書で回答することを約束したものというべきである。
そして、組合は、文書での回答を求める理由について、持ち帰って執行部と相談して検討するためには文書での回答が必要である、文書回答でないと担当者同士のやり取りにとどまりそれが会社の公式の回答か明らかでない、後から団体交渉出席者より役職が上の者により結論を覆されるおそれがある、A2地連では同業他社との交渉で文書回答をもらっているなどと相応の事情を説明しており、現に会社が第1回団体交渉において口頭で約束した文書での回答を第2回団体交渉で反故にしたことを踏まえれば、組合が会社に対し文書での回答を求めることには合理的な理由があったといえる。
さらに、組合は、第2回団体交渉において、文書での回答に代わる回答の提示方法として、録音の文字起こしに出席者全員が署名したものを議事録として残す方法を提案しており、これに対し、B2部長は「検討させていただきます」と述べている。
以上によれば、会社は、本来、第1回団体交渉における約束に従って文書で回答をすべきであり、仮にこの約束を反故にして文書での回答を行わないのであれば、そのような対応を取らざるを得ない合理的な理由を説明し、また、文書での回答に代わる、団体交渉における回答の提示の在り方を模索し、組合との間で合意を得る努力をすることが求められていたといえる。
しかし、会社は、第1回団体交渉後、文書での回答をする約束を反故にし、本件要求事項について文書による回答をしていない。また、会社は、第2回団体交渉において、文書での回答を行わない理由として、会社本社から指示があったとの会社側の都合を説明するにとどまり、文書での回答をしないことを正当化し得る合理的な理由を説明したとはいえない。さらに、会社は、第2回団体交渉後、組合に対し、組合の提案した議事録の作成という方法に対する回答も、また、それ以外の方法による、文書での回答に代わる回答の提示方法も示していない。このような会社の対応は、団体交渉における回答の提示の在り方を模索し、組合との合意を得る努力をしたものとは到底評価することができない。
⑶ これに対し、会社は、第2回団体交渉において、組合は、文書での回答を求めることに固執し、本件要求事項の内容に入ることなく団体交渉を終了させたといえ、次回以降の団体交渉でも同様の対応をすることを示唆する発言をしたのであるから、組合が団体交渉を打ち切ったことは明らかである旨主張する。しかし、組合は、第2回団体交渉において、会社が第1回団体交渉で文書での回答を約束したにもかかわらずこれを反故にしたことに対し、文書での回答が必要な理由を述べるとともに、文書での回答に代わる回答の提示の在り方を提案し、第2回団体交渉後も団体交渉回答確認書を会社に交付して会社の回答を求めているのであるから、組合は会社との合意達成の可能性を模索しようとしていたというべきである。そうすると、団体交渉を打ち切ったのは、第2回団体交渉後に組合に対して何らの回答もしなかった会社であるというべきであり、会社の前記主張は採用することができない。
⑷ 以上によれば、会社が、第1回団体交渉で文書での回答を約束したにもかかわらず、これを反故にして文書での回答を行わず、第2回団体交渉において文書での回答ができない合理的な理由を説明することもなく、第2回団体交渉で検討するとした組合の代替提案についての回答も行わなかったことは、誠実交渉義務に反した不誠実な団体交渉として、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
そして、会社の不誠実な団体交渉の内容を踏まえれば、会社に対し、文書による回答を行ったうえで誠実に団体交渉に応ずるよう命ずることが適当であるといえる。
したがって、本件救済命令の判断は正当であり、本件救済命令に違法な点はない。
2 結論
よって、会社の請求には理由がないから、これを棄却する。
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| その他 |
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