労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁令和6年(行ウ)第128号
不当労働行為救済命令取消請求事件 
原告  X組合(「組合」)
 
被告  大阪府(処分行政庁 大阪府労働委員会(「府労委」)
 
被告補助参加人  Z会社(「会社」) 
判決年月日  令和8年6月4日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、生コンクリート(「生コン」)の製造販売等を業とする会社が、①組合に対し、これまでの労働協約全てを解約する旨を通知したこと、②令和4年6月21日付けで会社の本店所在地の土地及び同土地上のプラント等(「本件土地等」)を売却したこと(「本件売却」)、③同年7月29日付けで希望退職者を募集したこと(「本件募集」)、④組合が会社の代表取締役を正当な代表取締役と認めていないこと等を理由として、組合の団体交渉申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。

2 府労委は、上記①について労働組合法(「労組法」)7条3号、④について同条2号に該当する不当労働行為であると判断し、(ⅰ)労働協約の解約に係る通知がなかったものとしての取扱い、(ⅱ)団体交渉応諾、(ⅲ)文書交付を命じ、その他の申立てを棄却した(「本件棄却命令」)。

3 組合は、これを不服として大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。
 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 本件売却が組合に対する支配介入に当たるか
⑴ 会社は、令和4年6月21日に本件土地等を売却し、令和5年9月30日をもって解散していることからすると、本件売却は事業廃止を前提として行われたものということができる。そして、事業を廃止するかどうかは原則として使用者の営業の自由の範囲内であること、保有する資産をどのように処分するかは、企業の経営判断に属する事項であって、基本的に会社の裁量に委ねられるべき事項であることからすると、本件売却が不当労働行為に当たるというには、専ら労働組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってなされたものであるなどの特段の事情が必要であると解するのが相当である。

⑵ 組合及び組合の組合員である会社の従業員らは、遅くとも令和3年7月には、会社の代表取締役であったB1と対立し、生コンを製造していた高槻工場を、B1の関与なしに、組合及びその組合関係者のみで管理運営した。組合は、同年10月10日、自らが補助参加人の株式すべてを有する株主であるとして、会社の臨時株主総会を開催し、B1及びB2を取締役から解任して組合の元副執行委員長であるA2及び会社の従業員で組合の組合員であるA3を取締役に選任する決議をし、会社の取締役であったB4、A2及びA3は、同日に取締役会を開催し、A2を補助参加人の代表取締役に選定する決議をした(「本件各決議」)。さらに、A2は、同月11日、大阪法務局北大阪支局に対し、B1及びB2を取締役から解任して新たにA2及びA3を取締役に選任し、A2を代表取締役に選定したとの内容の変更登記の申請(「本件登記申請」)をして、B1及びB2を会社の経営から排除しようとしている。これに対し、B1は、同月1日、組合と協調路線を歩んできたことは誤りであり、深く反省している旨記載されたお願い書を生コンの共同販売等を行うC1協同組合(「C1協」)に提出し、同月19日には、B1及びB3がC1協の理事会に出席して、これまでのA4との付き合いやC1協との関係について謝罪を述べるとともに、本件各決議及び本件登記申請を受けて、会社に原材料を供給していたC4会社及びC5会社に働きかけて、会社への原材料の供給を停止している。これらの事実からすると、B1は、会社の経営権を巡って組合と激しく対立しており、B1とともにC1協に出席したB1の妻であるB3が、同月8日、組合のA1分会の分会員A5との電話で「主人頭変えて、結局、社長をB4さんにして、ほんでA4でやっていこうという感じやったんで、もうそんな会社いらんやん」などと述べていることにも併せ鑑みれば、B1が組合の活動を嫌悪していたことを推認することができる。

⑶ もっとも、上記のとおり、高槻工場は組合及びその組合関係者が独自に管理運営をしていた上、組合は本件各決議及び本件登記申請により代表取締役であったB1を会社の経営から排除しようとしていたため、正常な経営ができない状況にあったのであるから、B1が会社への原材料の供給を停止するよう働きかけたことが、専ら組合排除を目的とした不必要な対応であるとも、経営判断として不合理であるともいうことはできない。そして、会社においては、組合が代表取締役であるB1を排除しようとしていたため、正常な経営ができない状況にあったところ、組合はその後もB1が会社の代表者であることを認めず、令和4年2月4日に、B1の代表取締役としての職務執行停止等を求める仮処分命令の申立てが却下され、A2が会社の代表取締役の地位にないことを仮に定める旨の決定が出た後も、訴訟において争い、この問題は、A2が会社の代表取締役の地位にないことを確認するとともに、組合が会社の株主であることの確認請求等を棄却する旨の大阪高裁判決が、令和7年12月17日に確定するまで決着しなかったことからすれば、本件売却の時点においても、正常な経営ができない状況が続いていたというべきである。また、本件売却の時点で、本件各決議及び本件登記申請を契機として会社の事業は約8か月にわたり停止した状態であり、その時点で事態が改善する見込みも立っていなかった。
 以上によれば、会社が、正常な形で経営することは困難であるとして、その事業を廃止することを前提に、高槻工場の敷地やプラントを含む本件土地等を売却すると判断したことは、経営判断として不合理であるということはできないから、本件売却が、専ら労働組合を嫌悪し、その活動に打撃を与える目的をもってなされたものであるということはできず、本件に現れた他の事情を考慮しても、上記特段の事情は認められない。

⑷ 組合は、①組合とC1協は対立関係にあったところ、本件売却の相手方がC1協の副理事であったC3が代表取締役を務めるC2会社であったこと、②本件売却に係る売買価格が1000万円と極めて低額であること、③本件売却には、会社及びB1が、今後、C2会社の事業地域内及び大阪府内において生コン事業を行わないことなど特殊な競業禁止を定めた規定があること、④会社は経済的にひっ迫していなかったので、本件土地等を売却する必要性はなかったこと、⑤C2会社も本件土地等を購入する必要性がなかったこと、⑥本件売却に当たり組合との交渉を一切行っていないことなどから、本件売却は、組合を弱体化させるために行われた旨を主張している。
 しかしながら、①及び②については、本件土地等は高槻工場の敷地やプラント等であるところ、これらは組合及びその組合関係者が管理している状態であり、このような不動産を購入する相手は限定されてくるとともに、大きな減価要因であると考えられるから、ただちに会社の意図を推認させる事情であるとはいえない。③については、事業廃止を予定しての売却の場合、売却後の競業禁止条項は売主にとって重要な事項ではないから、当該条項から会社の意図を推認することはできない。④については、上記⑶で述べたとおり、本件売却の時点で会社の事業は約8か月にわたり停止した状態であり、事態が改善する見込みも立っていなかったのであるから、事業を廃止するとの判断が経営判断として不合理であるということはできず、したがって、清算のために本件土地等を売却することが不必要な行為であったということはできない。⑤については、C2会社がどのような目的で本件土地等を購入したかは、会社が本件土地等を売却する必要性や合理性を左右する事情とはいい難い。⑥については、本件土地等を売却するに当たり、組合と交渉することが義務であったということはできない。
 以上によれば、組合が指摘する事情は、いずれも本件売却が専ら組合の弱体化を目的とするものであるなとの特段の事情があることを基礎付ける事情とはいえない。

2 本件募集が組合に対する支配介入に当たるか
 本件募集も事業廃止を前提として行われたものであるから、これが支配介入に当たるというためには、専ら労働組合を嫌悪し、その活動に打撃を当たる目的をもってなされたものであるなどの特段の事情が必要であると解される。そして、希望退職者の募集は、応じるか否かの判断が個々の労働者の自由な意思に委ねられている上、本件募集を行った令和4年7月29日の時点で、会社の事業が止まってから約9か月が経過しており、既に本件土地等は売却され、高槻工場の解体が開始されていたのであるから、会社が事業廃止と会社の清算を見越して、希望退職者を募ることは経営判断として合理的である。そうすると、組合が、会社の代表者をB1として団交を申し込んだにもかかわらず、会社がこれを拒否したとの事情を考慮しても、上記特段の事情を認めることはできない。
 以上によれば、本件募集が組合に対する支配介入に当たるということはできない。

3 結論
以上によれば、組合の請求は理由がないから棄却する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和4年(不)第41号・46号 一部救済 令和6年5月31日
 
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