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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和5年(行ウ)第426号・令和6年(行ウ)第96号
寝屋川コンクリート労働委員会救済命令取消請求事件(「第1事件」)・労働委員会救済命令取消請求事件(「第2事件」)
 
第1事件原告兼第2事件被告補助参加人  Y会社(「会社」)
 
第2事件原告兼第1事件被告補助参加人  X地本(「組合」)
 
両事件被告  国(処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」)) 
判決年月日  令和8年3月4日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社は、職業安定法(「職安法)」45条の許可を得て労働者供給事業を行う組合のA1事業所(「A1事業所」)から日々雇用労働者の供給を受けて生コンクリート(「生コン」)の製造等を行っていた。

 本件は、組合に組織加盟しているA2支部が、平成29年12月に「ゼネスト」と称する争議行為(「本件ゼネスト」)を行ったことを契機として、会社が、①平成30年3月分以降、労働者供給の依頼を打ち切ったこと(「本件供給依頼停止」)、②平成30年4月25日付けの本件供給依頼停止の経緯の説明等を求めての団体交渉の申入れ(「本件団交申入れ」)に応じなかったこと(「本件団交拒否」))が不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事案である。

2 初審大阪府労委は、上記1①及び②の行為はいずれも不当労働行為に当たる旨を判断し、会社に文書交付を命じ、組合のその他の申立てを棄却した(「初審命令」)。会社及び組合は、それぞれ再審査を申し立てた。

3 中労委は、上記1②の行為のみ労組法7条2号の不当労働行為に当たる旨を判断し、会社の再審査申立てに基づき初審命令を変更して、会社に文書交付を命じ、組合のその余の救済申立てを棄却するとともに、組合の再審査申立てを棄却した(「本件命令」)。

4 会社及び組合は、東京地裁に行政訴訟を提起した。第1事件は、会社が、第2事件は、組合が、本件命令の取消しを求めたものである。

5 同地裁は、両者の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告会社及び原告組合の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は、第1事件及び第2事件を通じ、参加によるものも含めてこれを2分し、その1を原告会社の負担とし、その余を原告組合の負担とする。
 
判決の要旨  1 争点1(会社が労組法上の使用者に当たるか否か)について
⑴ア 労組法7条における「使用者」について、使用者とは一般には労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると、労働契約上の雇用主以外の事業主であっても、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある者(最三小判平成7年2月28日民集49巻2号559頁)や当該労働者と近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在する者及び近い過去に労働契約関係が存在した者(当該労働契約関係の終了を争ったり、その清算を求めたりする場合に限られる。)も、同法7条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。

イ これを本件についてみるに、本件供給依頼停止以降、会社はA1事業所に対して労働者供給依頼をしておらず、組合の組合員の中に会社から日々雇用される者はいなくなったから、本件供給依頼停止以降、会社と労供組合員(※)との間に労働契約は存在せず、会社はいずれの労供組合員との間においても直接の労働契約上の雇用主とはいえない。
(※)組合の組合員であって、A1事業所から労働者供給により供給されていた日々雇用労働者のことをいう。

 しかし、会社は、平成3年3月以降、本件供給依頼停止に至るまでの26年以上にわたって、A1事業所を通じて組合に対してのみ、労働者供給を依頼し、組合はその依頼に応じて労働者供給を行ってきており、組合からの労働者供給は、本件ゼネストの際の会社等に対する労働者供給を停止(「平成29年12月供給停止」)以外の事情で停止されたことはなく、会社が依頼した人数の労供組合員がほぼ供給されていたこと、会社と組合との間で、労働者供給に関する契約書や労使協定書は作成されていないものの、労供組合員の供給が開始された頃以降、会社の労供組合員に対する賃金額その他労働条件に変更はなく、労働条件について協議がされたこともなく、会社とA1事業所及び労供組合員との間で、同賃金額その他労働条件は労働者供給を行うに当たっての当然の前提とされていたといえること、平成29年3月から平成30年2月までの間にA1事業所に所属していた労供組合員のうち、会社に供給された経験がある者は51名に上り、月の延べ供給人員の合計は平均110.6人であったことからすれば、会社と労供組合員(殊に上記51名の労供組合員)との間には、本件供給依頼停止がなければ、同年3月以降も、会社の依頼に応じて組合は労供組合員を供給し、会社と労供組合員との間で日々雇用の労働契約が締結されるという一定の関係が存在していたというべきであり、このことに鑑み、また、正常な労使関係の回復、確保を図るという不当労働行為制度の趣旨に照らせば、会社は、労供組合員との間で、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在する者というべきである。また、会社と労供組合員との間では、本件供給依頼停止に至るまで、日々雇用の労働契約が前記のような一定の関係を伴って存在していたといえるから、労働者供給依頼の再開を求める本件組合は、当該労働契約関係の終了を争っているというべきである。
 そうすると、会社は、労供組合員との間で、労組法7条の「使用者」に当たる。

ウ 以下、会社の主張について検討する。
(ア) 会社は、会社と組合との間で継続的な労働者供給契約が黙示的に成立したとはいえないし、将来にわたって労働者供給を継続する合意も法的拘束力もなかった、将来にわたって適用されるべき労働条件の取決めがされたこともなく、会社との間で個別に協議して定める可能性は排除されていないなどと主張する。

 この点、上記アのとおり、労組法7条の使用者に当たるといえるために、労働契約上の雇用主であることは必ずしも求められておらず、継続的な労働者供給契約が黙示的に成立していたとまではいえないとしても、上記イのとおり、会社は労組法上の使用者に当たるというべきである。賃金額その他の労働条件について、会社との間で個別に協議して定める可能性は排除されていないとしても、会社とA1事業所又は労供組合員との間で協議等がされたことはなかったことも考慮すれば、会社の労組法上の使用者性の判断に影響を与えるものではない。したがって、会社の上記主張を採用することはできない。

(イ) 会社は、本件供給依頼停止の合理性を認めながら、労供組合員集団との間で近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性があったとする本件命令には矛盾があるし、本件供給依頼停止から遡って概ね1年以内に具体的に供給実績のあった労供組合員51名を労供組合員集団とすることに理論的根拠はなく、具体的な労供組合員ではない労供組合員集団との間で、近い将来に労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性を検討し、個別の日々雇用の労働契約関係の終了に争いがあると評価することは誤りであるなどと主張する。

 この点、会社に労供組合員との間で近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在するか否かは、上記イのとおり、長期間にわたる会社とA1事業所及び労供組合員との間の労働者供給関係の実態から判断されるべきものであり、本件供給依頼停止が不当労働行為に当たるか否かにより左右されるものではないし、少なくとも平成29年3月から平成30年2月までの間に会社に供給された経験がある労供組合員51名のうち、同月28日までに組合を脱退した11名を除く40名については、本件供給依頼停止がなければ、会社との間で日々雇用の労働契約が締結されていた可能性が現実的かつ具体的に存在していたといえる上、脱退した11名についても、本件供給依頼停止がなければ組合を脱退せず、脱退しなかった者と同様に会社との間で日々雇用の労働契約が締結されていた可能性が現実的かつ具体的に存在していたといえるから、会社の上記主張を採用することはできない。

(ウ) 会社は、本件団交申入れ時には、会社の依頼した人数に対応できるだけの労供組合員集団がA1事業所に存在していなかったから、近い将来に労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性はなかった、本件団交申入れの要求事項である労働者供給依頼の再開に団体交渉応諾義務を認めることは、会社の採用の自由を不当に侵害するし、労働者供給事業の供給元という事業者である労働組合に労組法上の保護を与えるべき理由はないなどと主張する。

 この点、少なくとも平成29年3月から平成30年2月までの間に会社に供給された経験がある労供組合員51名のうち、同年4月25日までに組合を脱退した21名を除く30名については、本件団交申入れ時においても、本件供給依頼停止がなければ、会社との間で日々雇用の労働契約が締結されていた可能性が現実的かつ具体的に存在していたといえる上、脱退した21名についても、本件供給依頼停止がなければ組合を脱退せず、脱退しなかった者と同様に会社との間で日々雇用の労働契約が締結されていた可能性が現実的かつ具体的に存在していたといえるから、この点についての会社の上記主張を採用することはできない。

 また、本件団交申入れの要求事項は、本件供給依頼停止の経緯の説明及び労働者供給依頼の再開であるところ、いずれも、労供組合員の労働条件その他の待遇に関する事項であって、使用者である会社に処分や説明が可能なものであるから、義務的団体交渉事項に当たるし、団体交渉応諾義務は、使用者に対して誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索することを求めるものであり、労働組合の要求を容れ又はこれに譲歩することまでを求めるものではない。上記イのとおり、長期間にわたる会社とA1事業所及び労供組合員との間の労働者供給関係の実態から、会社が労供組合員の労組法上の使用者に当たると認められる以上、労働者供給依頼の再開について会社に団体交渉応諾義務を認めても、会社の採用の自由を不当に侵害するものではない。職安法45条が許可を受けた労働組合が労働者供給事業を行うことができるとした趣旨は、労働組合が労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織される団体であって、労働組合と労働者との間に身分的な支配関係や強制労働、中間搾取といった労働者保護の面からの弊害の発生する余地が少なく、弊害の発生のおそれがある雇用慣習の解消も期待されることにあるから、会社が労供組合員の労組法上の使用者に当たると認められる以上、労供組合員が所属する組合に会社に対する団体交渉権を認めることが不当であるとか認める理由がないとかいうことはできない。したがって、この点についても上記会社の主張を採用することはできない。

⑵ 小括
 以上によれば、会社が労供組合員との間で労組法7条の「使用者」に当たるとした本件命令の判断に誤りはない。

2 争点2(本件供給依頼停止が、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるか否か)について
⑴ア 労組法7条3号の不当労働行為該当性について
(ア) 本件供給依頼停止は、A1事業所の労供組合員の会社における日々雇用の可能性を消失させ、組合からの組合員の脱退につながるなど組合に不利益を生じさせるものであり、平成30年2月28日以降、組合を脱退する組合員が相次いだことが認められる。

(イ) もっとも、生コンは、製造後は短時間で固まる上、固まり始めると品質上の問題が生じることから、これを利用するゼネコンや工事業者等の需要者は、あらかじめ購入して在庫としておくことができず、各日の現場において必要となる数量を、不足なく、かつ、適時に仕入れなければならない。そうすると、一般に、生コン製造事業者にとって、需要者への各日の安定的な供給体制の確保は重要な課題であるといえる。この点、会社は、自社が製造した生コンを輸送するためにミキサー車を7台保有しているが、ミキサー車の運転手は雇用しておらず、業務量に応じ、ミキサー車の運転や現場における誘導等についてA1事業所の労供組合員を使用していたものであり、日々雇用労働者の供給が受けられなければ生コンの安定的な出荷は不可能となるため、安定的に労働者供給を受けられることは、会社が生コン輸送業務を営んでいく上で極めて重要であり、労働者供給事業所を選択するに当たって不可欠な要素であったといえる。

 現に、会社は、平成29年12月供給停止により、A1事業所から労供組合員の供給を受けることができず、平成29年12月12日及び同月13日の2日間、労働者供給を受ける場合に比して高額な傭車を用いて生コン輸送業務を行い、会社の生コンの出荷量は、必要な台数の傭車を確保することができた同月13日が390.25立方メートルであるのに対し、必要な台数の傭車を確保することができなかった同月12日が71.5立方メートルにとどまり、A1事業所から労供組合員の供給を受けられなかったことにより、生コンの安定的な出荷ができなくなったと認められる。

 また、本件ゼネストは組合ではなくA2支部が大阪、兵庫地区等の広範囲にわたる複数の生コン製造会社等に対して行ったもので、その一部には業務妨害罪の成立が認められるような不相当な態様で行われたものもあった。そして、A1事業所の労供組合員にはA2支部の組合員はおらず、A1事業所は、A2支部から平成29年12月12日以降の労働者供給の停止の要請を受け、A1事業所としては、取引先との信頼関係が失われてしまうおそれがあるとして、A1事業所には労働者供給の停止をさせないでほしい旨を訴えたものの、A2支部の要請に逆らうことはできず、平成29年12月供給停止を行うに至った。

 そして、労働組合が行う労働者供給事業を利用している企業は、当該労働組合による争議権の行使や上記労働争議に対する不介入について想定すべきものとはいい得るとしても、本件ゼネストの目的及び態様は、生コン等の輸送業務に従事するA2支部の組合員が同盟罷業等を行ったものであり(詳細略)、A1事業所の労供組合員はA2支部に加盟していないから、本件ゼネスト及び平成29年12月供給停止は組合又は組合員の争議権の行使に当たらないし、会社は同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所ではないから、平成29年12月供給停止を職安法46条の準用する同法20条の労働争議に対する不介入に当たると解することもできない。

 以上によれば、会社にとって、生コンの安定的な供給体制を確保するめに、安定的な労働者供給を確保することは経営上極めて重要であるところ、それまで会社への労働者供給を停止したことがなく、他に会社との間で特段の紛争があったこともうかがわれないA1事業所が、組合又は組合員の争議権の行使又は労働争議に対する不介入(職安法46条・同法20条)に該当しないにもかかわらず、第三者であるA2支部からの要請に逆らえずに本件ゼネストに合わせて労働者供給を停止したことによって、会社の生コン輪送業務に少なくない痛手が生じたものであって、本件ゼネストの態様等にも鑑みれば、これは、会社がA1事業所による労供組合員の安定的な供給に不安を覚え、A1事業所と会社との間の信頼関係を損なわせるのに十分なものである。さらに、会社は、ゼネストが再開される可能性があるというような噂を聞き、A1事業所に労働者供給の依頼を続けることへの不安が増したものである。そのような状況の下、会社は、A1事業所のA5元組合員が立ち上げた労働者供給事業所(C4)には、会社からの労働者供給の依頼に応じられるだけの人数の、会社への労働者供給の経験のある労供組合員が所属する旨を聞き、より安定的な労働者供給を見込むことができると判断したことから、C4に労働者供給の依頼先を変更することとし、A1事業所への労働者供給依頼を停止したものである。

 そうすると、本件供給依頼停止は、生コン製造事業者である会社が、生コンの安定的な供給確保のために安定的な労働者供給を確保するという経営判断として行ったものであると認めるのが相当であり、この経営判断には生コンという製品の特質等に鑑みて合理性が認められる。

 上記のとおり、本件供給依頼停止は、合理性の認められる経営判断によるものであって、これが客観的にみて組合に不利益を生じさせるものであることを考慮しても、会社において、本件供給依頼停止に当たり、組合弱体化ないし反組合的な結果を生じ又は生じるおそれがあることの認識、認容があったとはいえないと解するのが相当である。

 そうすると、本件供給依頼停止は、労組法7条3号の不当労働行為に当たらない。

イ 労組法7条1号の不当労働行為該当性について
 上記アのとおり、会社は、生コンの安定的な供給確保のために安定的な労働者供給を確保するという合理的な経営判断の下、本件供給依頼停止を行ったものであり、組合の弱体化を意図するなどして行われたものではないから、労供組合員が組合の組合員であることを理由として不利益な取扱いがされたものとは認められない。

 そうすると、本件供給依頼停止は、労組法7条1号の不当労働行為に当たらない。

ウ 以下、組合の主張について検討する。
(ア) 組合は、本件命令は、会社が、A2支部及びその組合員が争議権を行使しないこと、あるいは、A1事業所及びその組合員が労働組合の運営への外部からの支配干渉すなわち団結権の侵害に従うことを労働者供給依頼の継続の条件とすることが支配介入に該当しないと判断するに等しく、実質的に黄犬契約と異ならず、憲法28条に違反するなどと主張する。

 この点、上記アのとおり、会社は、生コンの安定的な供給確保のために安定的な労働者供給を確保するという合理的な経営判断の下、本件供給依頼停止を行ったものであり、A2支部及びその組合員が争議権を行使しないことや、A1事業所及びその組合員の労働組合への運営への外部からの支配干渉や団結権侵害に従うことを労働者供給依頼の継続の条件としたものではないし、本件供給依頼停止が不当労働行為として是正されなければA2支部及び組合の争議権や団結権が侵害されるという関係にあるものでもないから、組合の上記主張を採用することはできない。

(イ) 組合は、会社は、日々雇用労働者を必要とする場合には、A1事業所から供給を受ける等の義務を負い、労働者供給契約の解約、独自の日々雇用労働者の採用、各労働組合との合意内容を無視した特定の労働組合への労働者供給依頼は、支配介入の不当労働行為となるなどと主張する。

 この点、労働者供給を依頼するかどうか、どの労働者供給事業所に依頼するか等は、契約自由の原則により基本的には会社の判断に委ねられるものであって、組合の主張によっても、会社が組合に対してのみ労働者供給を依頼しなければならない義務を負うものとまではいえないから、組合の上記主張を採用することはできない。

(ウ) 組合は、仮に、支配介入の不当労働行為成立のために組合の弱体化の意図が必要であるとしても、会社は、C1協同組合(「C1協」)(※)の組合員企業であり、出荷割当を受けなければ事業を行えない立場にあるところ、本件供給依頼停止は、C1協の方針としてのA3系(※※)排除、組合嫌悪が原因であることは明白であると主張する。
※ C1協は、中小企業等協同組合法に基づいて設立された協同組合であり、大阪府及び兵庫県の生コン製造事業者を組合員企業とし、組合員企業が取り扱う生コンの共同受注・共同販売事業を行っている。また、会社は、令和2年2月18日時点において、C1協の組合員企業であり、会社の代表取締役はC1協の理事を務めていた。
※※ 組合は、A3の地方組織である。

 この点、C1協は、本件ゼネスト後、理事会決議を行い、複数の文書を発出している。これらは、C1協とA2支部との間での労使紛争が継続している状況の下、本件ゼネスト後2か月以内に、本件ゼネストの目的及び態様に鑑みて、A3(A2支部)系の業者の使用を控えること等を組合員企業に通知等したものと解される。しかし、会社は、生コンの安定的な供給確保のために安定的な労働者供給を確保するという合理的な経営判断から本件供給依頼停止を行ったものであることは上記アのとおりであり、また、A5元組合員はC1協の理事から紹介を受けて、生コン業界で労働者供給を行っている労働組合の連絡会であるC10協議会に参加したものの、A5元組合員外1名が組合を脱退して労働者供給事業所を立ち上げることは、A1事業所における会議で決定されたものであるから、本件供給依頼停止の原因が、C1協の方針としてのA3系排除、組合嫌悪にあると認めることはできない。
 したがって、組合の上記主張は採用することができない。

⑵ 小括
 以上によれば、本件供給依頼停止が労組法7条1号及び同法3号の不当労働行為に当たらないとした本件命令の判断に誤りはない。

3 争点3(本件団交拒否が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか否か)について
⑴ア 前記1のとおり、会社は、労供組合員との間で、労組法7条の「使用者」に当たる。また、労供組合員は組合の組合員であるから、組合は、本件団交申入れ時において同条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たる。

 本件団交申入れの要求事項は、①本件供給依頼停止の経緯の説明、②労働者供給依頼の再開であるところ、いずれも、労供組合員の労働条件その他の待遇に関する事項であって、使用者である会社に処分や説明が可能なものであるから、義務的団体交渉事項に当たる(前記1⑴ウ(ウ))。
そうすると、本件団交拒否は、正当な理由なく団体交渉を拒んだものといえるから、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。

イ これに対し、会社は、会社に労組法上の使用者性を認め、団体交渉応諾義務を認めると、会社の営業の自由や採用の自由を不当に侵害し、ひとたび労働者供給を依頼すれば団体交渉義務を負うことになりかねず、労働者供給制度の存在意義を没却し、職安法の予定するところに反するなどと主張する。

 しかし、前記1のとおり、会社に労供組合員との間で労組法上の使用者性が認められるのは、長期間にわたる会社とA1事業所及び労供組合員との間の労働者供給関係の実態等を理由とするものであり、会社に労働者供給依頼の再開について団体交渉応諾義務を認めても採用の自由を不当に侵害するものではないし(前記1⑴ウ(ウ))、同様に、企業の営業の自由を不当に侵害するものでもない。また、職安法45条が許可を受けた労働組合が労働者供給事業を行うことができるとする趣旨(前記1⑴ウ(ウ))からは、組合員との間で労組法上の使用者性が認められる企業が同組合員の所属する労働組合との間で団体交渉応諾義務を負う場合があることも予定されているものと解される。したがって、会社の上記主張を採用することはできない。

⑶ 小括
 以上によれば、本件団交拒否が労組法7条2号の不当労働行為に当たるとした本件命令の判断に誤りはない。

4 結論
 よって、会社及び組合の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成30年(不)第36号 一部救済 令和2年9月25日
中労委令和2年(不再)第43号・第44号 一部変更 令和5年7月19日
 
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