労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第36号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年9月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①組合に対し、組合の運営する労働者供給事業を通じて 日々雇用労働者の供給依頼を行っていた会社が、平成30年3月1日分以降、日々雇用労働者の供給の依頼を打ち切ったこと、② 組合が、日々雇用労働者の雇入れ再開等について団体交渉を申し入れたところ、会社がこれに応じなかったことが、それぞれ不当 労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、①の一部について労組法第7条第3号、②について同条第2号にそれぞれ該当する不当労働 行為であるとして、文書の交付を命じ、その他の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
会社        
代表取締役 B
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合のC1事業所に対し、平成30年3月1日分以降の日々雇用労働者の供給を依頼しなかったこと(3号該当)。
(2)貴組合が平成30年4月25日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと(2号該当)。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(会社は、労働者供給事業を行っている組合のC1事業所 に所属する組合員らの労働組合法上の使用者に当たるか)について
ア 本件において、平成30年2月まで、労供組合員(労働者供給事業により供給される組合員)は、労働者供給事業により会社 で日々雇用として就労することがあった者がいたものの、本件申立て時において、会社と直接の雇用契約を締結している労供組合 員が1人もいないことに争いはない。
 しかし、労働組合法第7条は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために、労働者が自主的に労 働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団交をすること、その他の団体行動を行うことを助 成しようとする労働組合法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものであるから、同条にいう「使用者」は、同法が上記 のように助成しようとする団交を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的 にこれに該当するものの、必ずしも同雇用主に限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、例えば、当該労働者の基本 的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者や、当該 労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が存する者等もまた雇用主と同視できる者であり、労働組合法第7 条の「使用者」と解すべきである。
 このような観点から、本件における労働組合法上の使用者性について、以下、具体的に検討する。
イ まず、労働者供給事業が労働組合に認められている点に着目して検討するに、そもそも、職業安定法において、労働者供給事 業は原則禁止されているが、厚生労働大臣の許可を受けた労働組合、職員団体等については、無料の労働者供給事業を行うことが 認められている。
 これにより、労働組合が、使用者と労働者供給契約を締結し、一般的には不安定な立場で就労する日々雇用労働者を、通常の 日々雇用とは異なり労供組合員として当該使用者のもとで労働に従事させることは、生活の糧である賃金を比較的安定して得させ る道を確保するという側面があり、組合員の相互扶助を図る上で重要な意義を有するとともに、組合員の経済的地位の向上に資す る活動であるといえる。
 そして、本件においては、会社が、組合のC1事業所に対し、労供組合員の供給依頼を行っていないことが問題となっていると ころ、組合の行っている労働者供給事業は、上記のとおり、組合員の経済的地位の向上に資する活動といえ、組合の運営に含まれ ると解すべきであるし、労供組合員の供給依頼は、組合員の就労の端緒となるものであり、労働者の基本的な労働条件等に係る事 項である。
ウ 次に、上記を踏まえ、労働者供給事業に関する組合と会社とのこれまでの経緯についてみる。①平成3年3月7日頃から同 30年2月末日まで、組合は、会社に対し、約27年間にわたり、1か月当たり平均で延べ110名程度の労供組合員を供給して いたこと、②平成30年2月までは、会社は、組合のみから、C1事業所を通じて、労働者供給を受けていたことが認められ、こ れらのことから、組合と会社の間では、契約書は締結されていないものの、組合と会社との間において労働者供給契約が成立して いるといえる。
 そして、上述のとおり、労働者供給契約が労働組合と切り離せないものである以上、上記のとおり長期間にわたり、組合と会社 との関係における、労使関係の存続のほか、組合の構成員である労供組合員にとっても組合員である限り、会社が労働者供給契約 により供給依頼を行うことについて、また、それによって会社での就労の機会を得ることについて、いずれの組合員であるかは特 定できないものの集団として労働者供給契約に基づく就労への期待権が発生しているといえる。
エ また、B社長は、平成30年2月の段階で、C1事業所で配車等を担当していたA2元組合員との間で、C1事業所からの労 働者供給と同程度の経験者・人数を確保できるよう調整しており、C1事業所からの供給と実質的な変更のない労働者供給体制の 継続を図っていたといえる。
オ 以上のことからすると、労供組合員の供給依頼は、組合員の基本的な労働条件等に係る事項であり、組合と会社との間では、 契約書は締結されていないものの実質的に労働者供給契約が成立し、約27年間にわたり継続し恒常化した労働者供給の実態があ る中で、労供組合員にとっても、近い将来において会社での就労の機会を得ることについて、いずれの組合員であるかは特定でき ないものの、集団として労働者供給契約に基づく就労への期待権が発生していたといえる。そして、会社が、実質的な労働力の確 保には従前と変更がない状況において、組合に対して、労供組合員の供給の申込みをしなくなったことにより、組合は、自らが運 営する労働者供給事業に影響を受け、そのことについて団交も申し入れているのであるから、職業安定法により、労働組合、職員 団体等に限り労働者供給事業が認められているという法の趣旨も踏まえると、本件の状況下においては、前記アで述べた趣旨に照 らして、組合及び組合の構成員である労供組合員らと会社との間に、労働者供給事業の実施に関わる限りにおいて、労使関係が成 立しているといえ、その範囲内において、会社は、労供組合員らの労働組合法上の使用者に当たるといえる。
2 争点2(会社が、組合のC1事業所に対し、平成30年3月1日分以降の日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことは、労 働組合法第7条第1号及び同条第3号の不当労働行為に当たるか。)について
ア まず、会社が組合のC1事業所に対し、平成30年3月1日分以降の日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことが、労働組 合法第7条第1号の不当労働行為に当たるかについてみる。
 個々の労供組合員に、会社に対して将来にわたり雇用継続を期待できる特段の事情があったとはいえず、また、労働者供給事業 による就労は、会社のみに限定されたものではないことも踏まえると、会社が組合に対し、平成30年3月1日分以降の労供組合 員の供給を依頼しなかったことにより、労供組合員が不利益を被ったとはいえない。
 したがって、その余を判断するまでもなく、会社が組合に対し、平成30年3月1日分以降の労供組合員の供給を依頼しなかっ たことは、組合員に対する不利益取扱いには当たらず、この点に関する申立てを棄却する。
イ 次に、会社が、平成30年3月1日分以降の日々雇用労働者の供給を依頼しなかったことが、労働組合法第7条第3号の不当 労働行為に当たるかについてみる。
(ア)会社と組合との間では、契約書は締結されていないものの実質的に労働者供給契約が成立し、恒常化した労働者供給の実態 があったといえる。かかる状況において、会社は、突然に、同年3月1日分以降の労働者供給を依頼しなくなったのであるから、 その理由や組合活動に与える影響によっては、支配介入に当たるというべきである。
(イ)そこで、会社が、労働者供給の依頼先を変更した理由についてみる。
 広域協が、C2支部(組合の構成員)の組合活動について、対立する姿勢であることが窺え、このことについて、会社が、組合 及びC2支部を「連帯系」として同一視していたといえることを併せ考えると、(広域協の理事である)B社長は、 30.1.23広域協理事会におけるC2支部との接触及び面談の禁止の決議に同調し、日々雇用労働者の供給依頼先を変更した ものといえる。
(ウ)次に、会社は、①組合に対し、労働者供給を依頼する法的義務を何ら負っていない旨、②C1事業所は、A2元組合員を通 じて自ら依頼先変更を申し入れているのであるから今後の労働者供給継続の期待も存在し得ない旨を主張する。
 上記主張①については、前記1オ判断のとおり、組合と会社との間では、実質的に労働者供給契約が成立し、恒常化した労働者 供給の実態があったといえ、このような実態からすると、会社は、合理的理由なく一方的に組合との間の労働者供給契約を破棄し 得るとまではいえない。
 また、上記主張②については、C3事業所(労働者供給事業を行っているC4労働組合の事業所)とC1事業所が併存する中 で、組合が、会社に対し、30.3.31通知書により労供組合員の供給依頼を行っていないことについて抗議し、 30.4.25団交申入書により、平成30年3月1日分からの労供組合員の供給依頼停止の解除を求めているのであるから、仮 に会社の主張のとおり、C1事業所自ら依頼先変更を申し入れたとしても、団交申入れの趣旨を確認することなく、組合に対する 労働者供給依頼を再開しなかったのであるから、会社の対応は一方的であるとの評価を免れず、上記主張②も採用できない。
(エ)以上のとおりであるから、会社は、合理的理由なく労供組合員の供給を依頼しなかったことにより、組合の運営である労働 者供給事業に影響を与え、組合を弱体化させているといえ、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行 為である。
3 争点3(30.4.25団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
ア 組合が、30.4.25団交申入書において、①労働者供給関係の打切りについての経緯説明、②平成30年3月1日分から の労供組合員の供給依頼停止の解除、を要求事項として30.4.25団交申入れを行ったのに対し、会社は応じていない。
イ 会社は、平成30年3月1日分以降、C1事業所に対し、それまで行っていた労働者供給依頼を一切していないことが認めら れるところ、組合と会社との間で、労働者供給事業に関する範囲内で労使関係が成立していることは前記1オ判断のとおりである から、30.4.25団交申入れにおいて組合が申し入れた要求事項は、集団的労使関係の運営に関するもので、義務的団交事項 であると認められる。
ウ 以上のとおりであるから、会社は、正当な理由なく、30.4.25団交申入れに応じておらず、かかる会社の対応は、正当 な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

[先頭に戻る]