労働委員会裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  名古屋地裁令和2年(行ウ)第93号
不当労働行為救済命令取消請求事件 
原告  X労働組合(「組合」) 
被告  愛知県(同代表者兼処分行政庁 愛知県労働委員会) 
被告補助参加人  Z会社(「会社」) 
判決年月日  令和3年8月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社の、平成30年3月21日から平成31年4月23日までに開催された計8回の団体交渉における運転業務に従事する運転手の特別作業手当についての議題に係る対応、平成30年4月1日以降に地域及び職種が限定された無期雇用契約を締結した従業員(「新限定社員」)と平成29年4月1日に地域が限定された無期雇用契約を締結した従業員(「旧限定社員」)との間の賞与の差異に合理性があるか否かについての議題に係る対応並びに従業員の共済会である「二葉会」及び「よつば会」(「両会」)の決算等についての議題に係る対応が、それぞれ労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、令和元年5月7日に組合によって申立てがされた事件である。
 愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として、名古屋地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。  
判決の要旨   会社の団交における以下の各争点に関する対応は、誠実な団交応諾義務に違反するところはない。これと同旨の本件命令は正当である。
1 争点① 特別作業手当の取扱いに関する議題について
 会社は、特別作業手当は危険作業に実際に従事した場合に支払われる手当であるから、有給休暇取得時に支払われる趣旨のものではない旨の説明を繰り返し、特別作業手当の取扱いについて組合とは異なる法的見解を有していたものの、特別作業手当の趣旨に照らせば、その内容が直ちに不合理であるとまではいえない。その交渉態度に照らすと、この点について自己の主張を組合が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たっていたと評価できる。そして、この判断は、会社が組合の主張を受け入れたのが江南労働基準監督署の是正勧告を受けてからであった事実により左右されるものではない。上記のとおり、会社が第1回団交から第4回団交まで、特別作業手当の取扱いについて不誠実な交渉をしていたとはいえない。
 会社は、第5回団交において、特別作業手当の取扱いについて社内で協議しており回答ができず、平成31年1月15日までに回答する旨を述べるにとどまっているが、第5回団交の3日前に江南労働基準監督署の是正勧告を受けたばかりであったことに照らすと、この時点で組合に対して具体的な内容を伴う説明ができなかったとしてもやむを得ない。したがって、会社が第5回団交において、特別作業手当の取扱いについて不誠実な交渉をしていたとはいえない。
 さらに、組合及び会社は、第6回団交において、特別作業手当の取扱いについて議論をしていないから、会社が不誠実な交渉をしていたとはいえない。
 よって、争点①について、会社には誠実な団交応諾義務に違反するところはなく、これと同旨の本件命令は正当である。
2 争点② 新旧限定社員の賞与の差異に関する議題について
 会社の説明は、口頭での議論の中でされたものであって体系性を欠く結果、組合の理解を十分に得られなかった憾みがあったことは否定できないものの、その説明が重要部分で矛盾を含み、あるいは事実に反する虚偽のものと認めるに足りる証拠はない。
 次に、会社は、第8回団交において、組合から求められた新旧限定社員の賞与の基準の差異に関する文書の提出に応じていない。しかし、会社は、この点についてそれまで曲がりなりにも一貫した説明をしていたことに加えて、組合と会社は、かねてより団交の内容を録音することについて相互に了解していたことを踏まえると、会社が説明のために文書を示すなどしなかったことが誠実な団交応諾義務違反になるとはいえない。
 よって、争点②について会社には誠実な団交応諾義務に違反するところはなく、これと同旨の本件命令は正当である。
3 争点③ 両会の決算等に関する議題について
 会社は、第7回団交において、両会の概要や前年度末の決算内容を説明し、第8回団交において、両会を解散することを決定した理由や、それに至る過去7年分の決算内容を、数字を挙げて具体的に説明したものであり、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たっていたと評価できる。組合と会社は、かねてより団交の内容を録音することについて相互に了解していたことを踏まえると、会社が説明のために文書を示すなどしなかったからといって、不誠実な交渉をしていたとはいえない。
 なお、両会の規約には総会の運営に関する規定が欠落しており、会長には会社の総務部長が当たるとされているなど、多数決の原理が行われていたとは認められず、両会を会社とは独立した権利能力なき社団とすることには疑問の余地があるといえる。しかし、両会が、その規約によれば、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、財産の管理が実際に行われていたなど、権利能力なき社団の要件の少なくとも一部を充足していたことに照らすと、会社が両会は会社から独立した組織であると主張したとしても、そのことから直ちに第7回団交及び第8回団交において不誠実な交渉をしていたことになるものではない。
 よって、争点③について会社には誠実な団交応諾義務に違反するところはなく、これと同旨の本件命令は正当である。 
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
愛知県労委令和元年(不)第3号 棄却 令和2年9月28日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約410KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。