労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  山口地裁平成29年(行ウ)第1号
明石被服工業不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  X株式会社(「会社」) 
被告  山口県(代表者兼処分行政庁・山口県) 
被告補助参加人  Z1(「組合」) 
判決年月日  平成30年5月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合員A1に対し、①平成27年5月31日でA1との契約(「本件契約」)を終了させたこと、また、②同年8月1日以降の就労について改めて採用しなかったことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件で、山口県労働委員会は、会社に対して、契約終了の取消しとバックペイを命じ、その余の申立てを棄却した。
 会社は、これを不服として山口地裁に訴訟を提起したところ、同地裁はこれを棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 不当労働行為の成否について
 処分行政庁が、会社がA1が組合に加入したことの故をもってA1に対して不利益な取り扱いをした(労働組合法7条1号)と判断したことについての誤りの有無を検討する。
(1) 不利益性
 会社は,平成27年5月27日付け書面により,組合及びA1に対して,同月31日におけるA1との間の本件契約の終了を通知し,同人の宇部工場への立入りを拒絶する旨を通知している。これにより,会社とA1との間の契約の法的性質,あるいは当該通知の法的効力にかかわらず,A1は,同年6月以降,宇部工場において従前どおりに業務を行うことが事実上不可能となっているのであるから,上記通知により,会社は,A1に対して不利益な取扱いをしたと評価すべきであり,これと同旨の処分行政庁の判断に誤りはない。
 これに対して,会社は,組合が同月31日における契約の終了を主張し,請負契約を前提とした同年7月31日までの勤務を拒絶したと主張し,証拠によれば,組合は,会社とA1との間の本件契約の法的性質を争っており,請負契約ではなく,定年が定められている雇用契約を主張している。
 しかし,組合は,本件契約が請負契約ではなく雇用契約に当たることに加え,再雇用が認められる内容の契約であることも主張し,一貫して,A1の宇部工場における就労の継続を求めていたものであり,A1について再雇用制度の適用がないことや同年5月31日までに当該契約が終了することを了解していたとはいえない。
 また,A1自身も,組合に加入し,組合を通じて,会社に対してA1の宇部工場における就労の継続等を要求しており,A1としては,会社が当該契約の性質についてどのように評価するかにかかわらず,少なくとも平成27年7月31日までは宇部工場において就労することを希望していたと認められ,同年6月1日以降に当該契約に基づく業務を拒絶する意思を有していなかったことは明らかである。
  よって,会社の上記主張は採用できない。
(2) 不当労働行為意思
 会社は、組合からの同年4月21日付け書面によりA1が組合に加入した旨の通知を受けた後、4月24日付け解雇告知書面により、組合に対し、本件契約について、雇用契約である旨の主張を維持するのであれば予定を前倒しして同年5月31日に契約が終了するのを受け入れるか、又は請負契約であることを了承して現状のまま同年7月31日まで業務を継続することを受け入れるかという選択を迫っているが、この選択はいずれも組合にとって受け入れ難いものであることは明白であったと解されることも踏まえると,会社は,組合に対して肯定的な感情を有していなかったと推認することができる。会社が、その後、組合との団体交渉が奏効せず、その実施がないまま同年5月27日付け書面により、同年5月31日をもって本件契約を終了させる旨の通知をしたのは,A1が組合に加入し,組合が当該契約の性質について会社と異なる見解を示した上,団体交渉の実施を要求したことを契機として生じた,当該見解に関連する会社と組合との間の紛争を解消するためであったと認められる。そして,会社において,予定を前倒しして当該契約を終了させてまで,当該紛争を直ちに解消しなければならない合理的な理由があったとは認められないことからすれば,会社は,A1が組合に加入した故をもって,A1に対して不利益な取扱いをしたものと評価するのが相当であり,これと同旨の処分行政庁の判断に誤りはない。
 これに対し,会社は,本件契約を平成27年5月31日限りで終了させたことについて,意思の不一致に基づき生じる法的混乱を回避する必要があったと主張するが、会社としては,自らの認識に基づく法的見解に従って行動すれば足りるものであり,請負契約であるとして,同年7月31日まで就労させることに問題はない。また、会社は,当該契約を6月1日以降も継続した場合,組合及びA1が就労の継続を再雇用契約の合意であると主張することが想定されると主張するが,組合及びA1の主張によってただちに法律関係に変動が生じるものではない以上,あえて当初の予定を変更して,当該契約を同年5月31日に終了させる合理的な必要性があるとは認められず,会社の上記主張を採用することはできない。
 また、会社は,本件申立事件の争点については,平成27年6月1日以降に会社がA1との間で再雇用契約を締結しなかったことが不当労働行為に該当するか否かに整理されるべきであり,本件命令において会社とA1との間の同年5月31日までの契約の性質が請負であるか雇用であるかの判断をしなかったことは違法であり、判断の遺脱があると主張する。
 しかし,不当労働行為救済命令が,その発令の前提として,当事者間における私法上の争いの全てについて判断する必要があるとは認められず、そして,前記の通り、会社について不当労働行為の成立が認められる以上,その成否を決する前提として,処分行政庁が会社とA1との間の本件契約の法的性質を判断する必要がないことは明らかである。
したがって,会社の上記主張を採用することはできない。
(3) 以上によれば,会社がA1との間の本件契約を平成27年5月31日をもって終了させる旨通知した行為について,労働組合法7条1号所定の不当労働行為が成立すると認められるから,これと同旨の処分行政庁の判断に誤りはない。
2 本件命令の内容について
 本件命令において,会社に対し,A1との間の本件契約を終了させた措置を取り消すこと,平成27年7月31日までは同人が宇部工場に就労していたものと取り扱うこと及び同人に対して2か月分の報酬相当額を支払うことを命じた点について,裁量権の逸脱又は濫用と認められるかを検討する。
 会社がA1に対してした不利益な取扱いが,少なくとも平成27年7月31日までは継続することが予定されていた両者間の本件契約を,2か月前倒しにして,同年5月31日をもって終了させる旨の通知をしたことであることからすれば,本件命令が不当労働行為による被害を救済する性質を有することは明らかであり、本件命令の内容が,不当労働行為によって発生した侵害状態を除去,是正し,正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復,確保を図るという救済命令制度の本来の趣旨,目的に由来する限度を逸脱するものではなく、労働委員会の裁量を逸脱し,又は濫用したものとはいえない。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山労委平成28年(不)第1号 一部救済 平成28年12月8日
 
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