概要情報
事件名 |
サミット樹脂工業 |
事件番号 |
東京高裁平成24年(行コ)第349号 |
控訴人 |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 |
被控訴人 |
国 |
被控訴人補助参加人 |
サミット樹脂工業株式会社 |
判決年月日 |
平成25年2月7日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 組合は、会社の次の行為が不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てた。
① 組合の組合員X1を、雇用契約期間の満了日である平成20年5月5日をもって雇止め(本件雇止め)とし、同年4月28日から同年5月2日までの間の自宅待機を同組合員に命令したこと
② 同年4月23日に行われた会社と組合の面談(4.23面談)においていったん回答した内容をその直後に電話(4.23電話)で撤回したこと
③ 4.23電話において同組合員が出勤したら困ると述べ(本件就労拒否発言)、同月24日及び25日に出勤した同組合員の就労を拒否(本件就労拒否)したこと
④ 組合との間で団交を行う前に、同組合員に対して同月28日付け雇止め通知書(4.28雇止め通知書)を送付したこと
2 大阪府労委は、いずれも不当労働行為に該当しないとして、組合の救済申立てを棄却した。組合は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は再審査申立てを棄却した。組合は、東京地裁に取消訴訟を提起したが、同地裁は組合の請求を棄却した。
3 組合は、一審判決を不服として、原判決及び中労委命令の取消しを求め控訴を提起した。東京高裁は、組合の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
当裁判所も、本件命令は適法であり、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、大要原判決の理由のとおりであるから、これを引用する。
一審判決の概要は次のとおり
1 本件雇止め及び4.17出入禁止発言〔平成20年4月17日に社長がX1に配置転換に応じるよう促すなどし、最後には「お前は今後会社出入禁止だ」と述べた発言〕は、不当労働行為(不利益取扱い、支配介入)に該当するか
(1) 本件雇止めについて
本件雇止めはX1が配置転換に応ぜず、また自主退職もしないことに起因して行われたものであって、殊更にX1の組合加入を嫌悪して行ったものと推認することはできず、会社の不当労働行為に当たるとはいえない。
(2) 4.17出入禁止発言について
4.17出入禁止発言は、X1に対して配置転換に応じるよう促しているにもかかわらず、これに応じる意思を示さないため、もはや同人との間で信頼関係をもって労務の提供を受けることが困難であると考えての発言であると理解でき、上記発言には相応の理由があり、殊更にX1の組合加入を嫌悪して行ったものとはいえない。そして、4.17出入禁止発言及び上記(1)で判断した本件雇止めの関係をみると、これらはいずれも、X1が配置転換に応じることがないという状況を受けて、信頼関係をもって労務の提供を受けることは困難であるという同じ理由からくる対応であったといえ、4.17出入禁止発言は本件雇止めの前置措置として位置づけられるというべきであり、これをもって不当労働行為に当たるということはできない。
2 4.23面談において、会社と組合間で、X1が従来通りの就労に復帰するとの合意が成立したといえるか、合意が成立したといえる場合、4.23電話において同合意を撤回したことが不当労働行為(不利益取扱い、支配介入)に該当するか
(1) 4.23面談の状況について
4.23面談は、X1の処遇に関する話合いや交渉の場ではなく、今後の交渉を前提とした組合側の要求事項等を伝達するものであったと認められ、同日の団交あるいは何らかの話合いが行われたものと認めることはできない。
(2) 就労に復帰する旨の合意の成否について
組合は、執行委員長が「明日からX1に仕事に戻ってもらっていいですか」と聞いたのに対し、部長補佐が「はい」と応答し、したがってX1が従来どおり就労することについて会社との間で合意が成立したと主張する。しかし、①上記(1)の4.23面談の客観的状況に加え、部長補佐の上記「はい」との発言は面談終了間際になされたやりとりであったこと、②この発言後も、なお執行委員長が、早い段階で交渉の日時を決めて欲しい旨発言しており、最後まで話合いという形ではなかったと認められることや、③4.23面談直後に部長補佐が上記やりとりを撤回したこと等を総合すると、上記発言から、組合と会社との間で何らかの合意が成立したということは困難である。
3 会社が、4.23電話において本件就労拒否発言を行い、4月24日及び同月25日に本件就労拒否をしたことは、不当労働行為(不利益取扱い、支配介入)に該当するか
(1) 本件就労拒否発言について
4.23電話での本件就労拒否発言は、その直前の4.23面談で何らかの合意が成立したとは認められない以上、4.17出入禁止発言によって表明された、もはやX1は出社には及ばないとの会社の意思を改めて確認する趣旨であったと考えるほかない。そして、4.17出入禁止発言については、既に判断したとおり、殊更に組合加入を嫌悪してされたものとはいえないから、これを改めて確認する趣旨である本件就労拒否発言も、4.17出入禁止発言と同様に相応の理由が認められ、殊更に組合加入を嫌悪してされたものとも、また不誠実なものともいえない。
(2) 本件就労拒否について
4月24日及び25日の本件就労拒否は、本件就労拒否発言の延長の対応として理解できるから、本件就労拒否発言と同じく相応の理由があるといえ、殊更に組合加入を嫌悪してされたものとはいえない。
4 会社が、組合から4月23日に団交申入れを受けたにもかかわらず、団交前にX1に対して4.28雇止め通知書を送付したことは、不当労働行為(支配介入)に該当するか
(1) 本件雇止めは、会社が4月11日から一貫して有していた、配置転換に応じないのであれば雇用契約を継続しないという意思の現れとして理解できるところ、かかる意思は、既に4.17出入禁止発言という形で雇止めの前提措置という形で現れていたといえる。そして、4月23日の組合加入通知によって、配置転換に応じないX1の意思が一層明らかになったことで、会社は、当初の意思に基づき4.28雇止め通知書の送付に至ったものといえ、同通知書の送付には相応の理由があり、殊更にX1の組合への加入を嫌悪してされたものとはいえず、組合に対する支配介入であったということはできない。また、会社は、4月28日に、X1の処遇に関する組合の団交申入れに対して、団交に応じる旨の回答と開催日時等の提案を行い、実際に5月14日に団交を行っているから、この点からも、4.28雇止め通知書の送付が、組合に対する支配介入であったとは認められない。
(2) 組合はX1の身分等に関する問題について組合と協議すべき義務があるとも主張するが、組合が同主張の根拠とする4.23面談は、何らかの話し合いが行われたものとはいえないから、組合の主張は前提において失当である。 |
その他 |
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