概要情報
事件名 |
日本工業出版 |
事件番号 |
大阪地裁平成22年(行ウ)第61号 |
原告 |
管理職ユニオン・関西 |
被告 |
大阪府(処分行政庁:大阪府労働委員会) |
被告補助参加人 |
日本工業出版株式会社 |
判決年月日 |
平成23年11月30日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 会社が、①平成18年度及び19年度における賞与の支給に当たり、組合員を差別的に取り扱ったこと、②18年度及び19年度における諸手当の支給に当たり、組合員を差別的に取り扱ったこと、③組合員の賞与等を議題とする団体交渉に誠実に対応しなかったことが、不当労働行為に当たるとして大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 大阪府労委は、平成18年度における夏期賞与及び年末賞与に係る申立ては、却下し、その他の申立ては、いずれも棄却した。
本件は、これを不服として、組合が大阪地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は組合の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
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判決の要旨 |
1 平成18年度の夏期賞与及び年末賞与に係る本件申立ての適法性(争点1)
(1) 「継続する行為」(労組法27条2項)
労組法27条2項は、労働委員会は、申立てが、行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件にかかるものであるときは、これを受けることができない旨を定め、同項の「継続する行為」とは、一個の行為自体が現に継続して実行されてきた場合をいうのであって、不当労働行為意思が継続している場合を指すのではないと解するのが相当である。
(2) 本件申立てのうち、平成18年度の賞与に係る本件申立て部分の適法性
会社における夏期及び年末賞与の評価は、各賞与毎に一定の評価期間を設けて独立して行われ、その査定に基づく賞与の支払もそれ自体で完結する一回限りの行為である。したがって、各賞与の支給について「継続する行為」ということはできない。
①X1組合員に係る平成18年度夏期賞与の支給日は平成18年7月10日であり、同年度年末賞与の支給日は平成18年12月8日であり、②平成18年度におけるX1組合員の賞与に係る申立ては、賞与の支払日から1年以上を経過した平成20年4月23日にされた事実を踏まえると、本件申立てのうち、平成18年度の賞与に係る本件申立て部分は、申立期間を徒過したものといわざるを得ない。
(3) 小括
したがって、本件申立てのうち、平成18年度におけるX1組合員の賞与に係る申立ては、申立期間を徒過したから、同申立て部分を却下した本件処分は適法である。
2 平成18年度及び19年度の各夏期賞与及び年末賞与について、会社がX1組合員に対し、平均点を下回る評価を行い、平均支給額を下回る額を支給したことが、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか(争点2)
(1) X1組合員は、業務実績が高かったとは認め難く、評価項目及び評価方法等に照らしても、平成19年度におけるX1組合員に対する会社の賞与査定が不合理不適正であるとまでは認められない。
(2) 会社が、組合を嫌悪した結果(不当労働行為意思に基づいて)、X1組合員に対し、恣意的に低い賞与評価を行ったと認めることはできず、その他、これを認めるに足りる的確な証拠はない。平成19年度における同人の夏期賞与及び年末賞与について、組合員であるが故の不利益取扱いがあったとは認められない。
3 平成18年度及び19年度の会社の就業規則にない「諸手当」について、会社がX1組合員に対し、他の従業員と比較して低い金額を支給したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか(争点3)
組合は、「諸手当」の支給額の相違について、X1組合員以外の2名の従業員が管理業務を担当していたとの会社の主張は、不自然である旨主張する。
しかし、X1組合員とZ1主任への「諸手当」の支給額について、違いがあるのは、Z1主任が、営業所の責任者の代理として、管理業務を行っている一方で、X1組合員は、管理業務を行っていないことに起因する「管理業務手当」の支給の有無による。
なお、管理業務を誰に担当させるかは会社の裁量に委ねられるのであって、2人の従業員が分担して行うことが不自然とまではいえず、会社がX1組合員を意図的に管理業務から排除したと認めることはできない。
そして、X1組合員の営業実績は、決して高い数字とはいえず、平成19年度の夏期賞与及び年末賞与に係る賞与評価が、いずれも30名の従業員中28番目であることも併せ考慮すると、会社が、各従業員の責任感や業務実績等を総合的に勘案した結果、管理業務担当者として適任なのはX1組合員以外の従業員であると判断したこと自体、不自然不合理な点があるとまでは認められない。
したがって、X1組合員の毎月の「諸手当」の支給額は、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえない。
4 X1組合員の賞与の評価及び支給額並びに諸手当の支給額についての団体交渉に、会社は誠実に応じなかったといえるか(争点4)
組合は、会社と組合との団体交渉について、実質的に金額の決定に参加していないY1取締役が単独で出席し、不十分な回答に終始しており、不誠実団体交渉と評価せざるを得ない旨主張する。
確かに、会社は、団体交渉にあたり、代表取締役Y2ではなく、Y1取締役が出席し対応した。しかし、①Y1取締役は、取締役兼副社長であって、団体交渉に会社を代表して出席し、応答等していること、②同人は、社員の賞与額の決定等にも関与していることを踏まえると、同人の出席それ自体をもって直ちに不誠実な対応であったということはできない。また、③組合と会社は、X1組合員の賞与の評価及び支給額並びに諸手当の支給額等についての団体交渉を行い、その際、会社が団体交渉の席上で即答できなかった事項はあったものの、会社は、その後、組合からの質問書や要求書に対し、その都度、期限を守った上で、3回にわたり書面で回答し、すべての質問項目について、具体的に説明している。
以上の事実を踏まえると、会社と組合との団体交渉に当たっての態度・対応が、不誠実であると評価することはできず、その他、不誠実であったと認めるに足りる的確な証拠はない。
5 結論
以上のとおり、組合が主張する会社の組合に対する不当労働行為はいずれも認められないから、その余について判断するまでもなく、本件命令は適法である。
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その他 |
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