概要情報
事件名 |
立正運送 |
事件番号 |
大阪高裁平成22年(行コ)第69号
|
控訴人 |
全日本建設交運一般労働組合関西支部 |
被控訴人 |
大阪府(処分行政庁:大阪府労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
立正運送株式会社 |
判決年月日 |
平成23年 1月21日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 | 1 Y会社が、①X組合員であることを理由として、給与計算の根拠となるポイントが低くなるような配車差別を行ったこと、②二人乗務の際に、X組合員とそれ以外の従業員を配送車に同乗させないことが、不当労働行為に当たるとして大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、X組合の請求を棄却をした。
これに対し、X組合はこれを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁はX組合の請求を棄却をした。
本件は、同地裁判決を不服として、X組合が大阪高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
|
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 争点1:Y会社は、X組合員運転手に対し配車差別をしたか
(1) ポイント制度の合理性等について
ア ①賃金算出の基礎となるポイントは、運行距離、荷下ろし回数等の客観的な事実を基準に決められていること、②ポイント制によって算出した賃金が、労働基準法に基づいて計算される賃金額を下回る場合はその差額が支給されることのほか、③Y会社の業務内容及び業務形態、特にタンクローリー車の運送労務という性質上、個々の従業員の裁量に任されている部分が大きく、労働時間のみを賃金算出の基準とすることは、従業員間の実質的な平等を図るものとはいえないことがそれぞれ認められる。
ポイント制は、いわば固定給と歩合給を組み合わせたものということができ、労働の内容を賃金額に反映させることによって従業員間の実質的平等を図るという積極的側面があり、一定の合理性のある制度であるということができる。
イ しかしながら、他方、①ポイント数が使用者が指定した配送コースによって自動的に定まるため、一般的に歩合給を取り入れることの利点とされている業績向上に対する労働者の動機付けに結びつかない。また、②ポイント数が労働者の創意工夫や努力によって決まるのではなく、使用者による配送コースの指定によって決まるため、指定に当たっては、労働者各自の健康状態、休日出勤や時間外労働及び配送コースについての労働者の姿勢や希望、配送先による運転者の指定等の様々な条件があり、労働者毎のポイント数を平準化することは容易なことではないし、単純に平準化することが必ずしも「公平」であるとも言い難い側面がある。
この懸念を進めると、ポイント制は、使用者が、公平な指定の困難さに名を借りて、一部の労働者に対して不利益な取扱いをすることも運用上可能な制度であることは否めない。
(2) X組合員運転手に対する配車差別の有無
ア Y会社がX組合員運転手に対して配車差別を行っているか否かを判断するためにX組合員運転手とその他の運転手のポイントの差を比較検討するに当たり、Y会社が主張する以下の各データを除外することは相応の理由があり、合理性に欠けることはない。
①休日出勤及び休日にまたがる二暦運行のデータ
②炭酸車に関するデータ
③長期出張パージ作業に関するデータ
④当日追加配送に関するデータ
⑤4名以上の定時依頼のあった日のデータ
⑥X1組合員ら3名のデータ
⑥については、X1は腰部捻挫に罹患し、月1回はアトピー性アレルギーの治療のため有給休暇をとり通院する等、X2は配送先とのいざこざで下車勤となる等、X3は心臓疾患の罹患経験、痛風の持病等、X1ら3名は、他の運転手に比べ、個人的な事情から配車についての制約が多く、これに伴ってポイントが低くならざるを得ない個別の特殊な事情が存在するため、上記3名のデータを除外することには相応の理由がある。
イ そして、それらのデータを除外した上でY会社において運転手1人1日当たりの平均ポイントを算出した別表1が不正確であることを認めるに足りる証拠はないから、これに従って比較検討すると、X組合員運転手(ただし、X1組合員ら3名を除く。)と全運転手(ただし、X1組合員ら3名を除く。)との間1人1日平均ポイントの差は、平成16年度においては0.04、平成17年度においては0.06であって、全運転手とX組合員運転手との平均ポイントの差は僅かであり、Y会社が配車差別を行ったとまで認められない。
そうすると、ポイント制が(1)で記載したような問題点を孕む制度であることを考慮しても、配車差別の事実が認められないとした本件命令における大阪府労委の判断に違法があるということはできない。
2 争点2:Y会社がX組合員運転手とその他の運転手の二人乗務をさせないことが支配介入に当たるか
二人乗務をさせる必要がある場合に、誰と誰を組ませるかは、Y会社において、使用者としてできる限り新入社員教育に資するよう、各人の経歴、個性等を総合しながら、適切に定めるべき事柄であって、これがX組合員運転手に対する不利益取扱いに当たるのでない限り、支配介入には当たらないというべきであるし、これがX組合員運転手に対する不利益取扱いに当たると認めるべき事情はない。
就業時間中の組合運動は原則として許されていない上、Y会社には、業務態勢を定めるに当たって、組合活動に便宜を図る義務がないことは明らかであるし、上記取扱いは、就業時間外の組合活動を何ら制限するものではないから、上記取扱いが支配介入に当たるということはできない。
よって、Y会社がX組合員運転手とそれ以外の運転手の二人乗務をさせていないことが不当労働行為に当たらないとした本件命令における大阪府労委の判断に違法があるということはできない。
3 以上によれば、その余の争点3(Y会社の不当労働行為意思の有無)について検討するまでもなく、X組合に不当労働行為の事実を認めることはできないとした大阪府労委の判断に違法があるとはいえない。
|
その他 |
|