労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  社会福祉法人福島県福祉事業協会 
事件番号  福島地裁平成21年(行ウ)第5号 
原告  社会福祉法人福島県福祉事業協会 
被告  福島県(処分行政庁:福島県労働委員会) 
被告補助参加人  全労連・全国一般労働組合福島一般労働組合
福島県労働組合総連合 
判決年月日  平成22年6月29日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 社会福祉法人が、①組合の組合員4名の解雇撤回及び組合員X1の賞与査定に関する団体交渉申入れに対し、現在裁判で係争中であること及びX1が管理職であることを理由に団体交渉を拒否したこと、②組合支部の存在を否定し、又は組合支部に加入することを牽制し、若しくは組合支部からの脱退を慫慂したこと、 ③X1の平成19年度12月賞与の支給額を、組合活動を理由に引き下げたことが、不当労働行為に当たるとして、福島県労委に救済申立てがあった事件である。
2 福島県労委は、①団体交渉応諾、②支配介入の禁止、③組合員X1の平成19年度12月賞与額決定に当たっての人事考課をBランクとして扱い、Bラ ンクであれば支給されたであろう額と既に支払われた額との差額を支払うこと、④文書手交、⑤上記①、③及び④の文書による履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、社会福祉法人が福島地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は社会福祉法人の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求をいずれも棄却する。(福島県労委の命令を支持。)
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の要旨  1 争点(1):原告が本件団体交渉を正当な理由なく拒否したといえるか(労組法7条2号該当性)
 福島地裁相馬支部において、本件解雇が無効であるとして本件仮処分決定が出されたことは、初めての司法判断が示されるという重要な事情の変化であり、本件解雇の当否を巡って団体交渉の必要性が生じたといえる。そして団体交渉における本件組合らの要求事項に対する原告の説明は、いずれも具体性を欠き、必要な資料も提示しない不十分なものであり、誠実に団体交渉に応じていたとは認め難いことをも併せ考えれば、原告は本件組合らとの団体交渉に応じる義務を負っていたものと認められる。
 なお、X1は管理職の地位にあるものの、人事に関する権限は、主任・係長以下の一次考課をする等の程度であり、解雇・昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にあるわけではない。また、X1は、労働関係についての計画と方針に関する機密事項に接しているとは認められない。したがって、X1が労組法2条ただし書1号にいう利益代表者に該当するということはできないから、X1が本件組合支部に参加していることは、本件団体交渉拒否の正当理由とはならない。
 そうすると、本件団体交渉拒否は、正当な理由なくされたものであって、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
2 争点(2):原告に本件組合らに対する支配介入があったか否か(労組法7条3号該当性)
 原告の行為のうち、①X1の正当な組合活動を問題視する記載内容により、しかも、就業規則に違反し、犯罪行為にもなる旨指摘している点は、威嚇との評価を免れないものである本件警告書をX1に手交したこと、②Y1がX1に対し「福祉に組合は相容れないものがある」との趣旨の発言をしたことは、いずれも組合活動に対し不当な圧力を加えるものであり、組合らに対する不当な介入であると認められ、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
3 争点(3):本件評価の引下げは、不利益取扱いに当たるか(労組法7条1号該当性)
 X1の本件賞与に係る評価ランクが下がった原因が、Y2の人事考課における評価が甘かったとか、人事異動が原因であったと認めることはできず、それ以外に、本件賞与に係る評価ランクが下がる原因ないし合理的な理由があったとはうかがわれない。
 一方、X1は、原告から組合活動をしていることについて本件警告書の手交を受けたり、Y1から組合活動をしていることを問題視する発言を受けたりしていたことからすると、X1がCランクとして評価されたことについては、X1が組合活動をしていたことが主たる理由であると推認することができる。
 そうすると、原告が、本件賞与に係る評価ランクを、従前の賞与に係る評価ランクであるBランクからCランクへと引き下げた行為は、X1が本件組合支部の組合員であることを理由とする不利益な取扱いであると認められ、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。
4 結論
 以上のとおり、原告には、労組法7条1号ないし3号に該当する不当労働行為があったと認められ、これに対する本件命令による救済方法の内容も相当であるから、本件命令はいずれも適法である。
業種・規模   
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福島県労委平成20年(不)第1号・第2号 一部救済 平成21年2月18日
 
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