概要情報
事件名 |
昭和シェル石油(大阪) |
事件番号 |
東京高裁平成19年(行コ)第206号
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控訴人 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
控訴人補助参加人 |
全石油昭和シェル労働組合大阪支部
個人7名(うち2名は訴訟承継人)
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被控訴人 |
昭和シェル石油株式会社 |
判決年月日 |
平成22年5月13日 |
判決区分 |
一部取消、棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 Y会社が、X組合のX1外5名について、①職能資格等級を低位に格付けたこと、②賃金・賞与について差別支給をしたことが、不当労働行為に当たるとして大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、人事考課差別及び昇格差別があったとして、①組合員5名の職能資格等級の是正、②組合員6名の賃金額の是正、③①及び②の是正をもとに行った賃金及び賞与に係る査定のやり直しとバックペイ及び文書手交を命じ、救済申立期間を徒過した賃金及び賞与の格差是正についての申立ては却下した。
X組合ら及びY会社はこれを不服として、再審査を申立てをしたところ、中労委は、初審命令主文第2項の「平均賃金額」を「平均賃金額(該当する本人を除いて算定した額)」に改め、その余の申立てを棄却した。
これに対し、X組合ら及びY会社は、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、Y会社の請求に係る中労委命令を取り消し、X組合らの請求について棄却した。
本件は、同地裁判決を不服として、中労委が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、中労委の不当労働行為救済命令の一部を取り消した原判決を取り消し、Y会社の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原判決の主文第1項(中労委の不当労働行為救済命令のうちX組合らの申立てを棄却した部分を除いたその余の部分を取り消したもの)を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 原審において甲事件(Y会社による中労委命令の一部取消請求)について生じた訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は被控訴人(Y会社)の負担とし、原審において乙事件(X組合らによる中労委命令の一部取消請求)について生じた訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は控訴人補助参加人ら(X組合ら)の負担とし、当審で生じた訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は被控訴人(Y会社)の負担とする。
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判決の要旨 |
1 組合員であること等のゆえをもってなされた不利益取扱いの存否
(1) 「現在の職能資格等級と賃金は過去の考課結果の累積であるので、同期入社者の中で著しく低い職能資格等級と賃金である場合には、特段の事情から考課結果が著しく低位であることが必要であり、特段の事情がなく考課結果、職能資格等級、賃金が著しく低位にあれば、その合理性を会社が疎明しなければならないところ、これを行っていない場合には、人事考課が公正に行われていなかったと推認されてもやむを得ない」とする中労委における判断枠組みは正当なものとして是認できる。
(2) 労組法7条1号によって禁止されている「X1ら6名が労働組合の組合員であること若しくは労働組合の正当な行為をしたことのゆえをもって不利益な取扱いをしたこと」の立証責任はX組合らが負担するものであるが、活発な組合活動を行っていたX1ら6名が同期・同性・同学歴者の中で著しく低い職能資格等級と賃金に置かれている場合には、経験則上、組合活動を行っているがゆえに不合理な人事考課がなされたのではないかとの推認(事実上の推定)が働き、Y会社としては、この推認を揺るがす立証が必要となる。その立証の程度はいわゆる反証で足りるものの、その反証が成功しない場合には、上記の推認の結果として、X1ら6名は本件組合の組合員であること若しくは本件組合の方針に従って組合活動を行っていたことのゆえに不合理な人事考課を受けたとの事実が認定される。
(3) X1ら6名の勤務成績や能力に特に劣っていたというべき特段の事情すなわち合理的な理由がないとはいえないということはできないというべきである以上、Y会社による本件考課のうちの総合評価のC評価はX1ら6名が組合活動を行っていたがゆえになされたものと推認される。
2 救済方法
(1) 裁判所は、労働委員会の救済命令の内容の適法性が争われている場合には、労働委員会の裁量権を尊重し、その行使が不当労働行為の趣旨、目的に照らして是認される範囲を超え又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り、当該命令を違法とすべきではない。
(2) 本件命令は、是認される範囲を超え又は著しく不合理であって濫用にわたるとは認めることができないから、本件命令を違法とすることはできない。
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業種・規模 |
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掲載文献 |
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評釈等情報 |
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