概要情報
事件名 |
近畿生コン |
事件番号 |
東京地裁平成20年(行ウ)第331号 |
原告 |
近畿生コン株式会社 |
被告 |
国(処分行政庁 中央労働委員会 ) |
被告補助参加人 |
全日本建設交運一般労働組合関西支部 |
判決年月日 |
平成21年9月14日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、Y会社がX組合に対し、職業安定法第45条の労働者供給事業によるX組合所属の労働者の供給依頼を停止し続けていることが、不当労働行為であるとして争われた事件である。 初審京都府労委は、Y会社が供給依頼を停止し続けていることは、同条第3号の支配介入に該当するとして、Y会社に対し文書手交を命じた。 Y会社はこれを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却した(以下「本件命令」という)。 本件は、Y会社が本件命令を不服として、その取消しを東京地裁に求めた事案である。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告の負 担とする。 |
判決の要旨 |
1 Y会社の使用者該当性(争点(1)) 認定事実によれば、Y会社は、正規従業員としてX組合の組合員であるX1、X2を雇用してX組合との間で団体交渉をしていたこと、Y会社がX組合から労働者供給を受けていた際には、平成7年協定書及び平成9年確認書を作成する等して、労働者供給契約によって労使関係が生じ得る日々雇用労働者の賃金や雇用機会について交渉を行っていることからすれば、Y会社がX組合との間で、労組法7条の使用者に該当することは明らかであるといわなければならない。 2 労働者供給事業に関する取扱いの労働組合法7条3号該当性(争点(2)) (1)労働者供給事業が、労組法7条3号の組合に運営に該当す るか。 労働組合法7条3号は、文言上、保護を受けるべき組合活動の種類を限定していない上、労働組合の行う労働者供給事業は、職業安定法45条の許可を得た労働組合が使用者との間で労働者供給契約を締結し、組合員に対し、生活の糧である賃金を得させる道を確保するという側面があり、組合員の相互扶助を図る上で重要な意義を有し、労働組合の経済基盤の形成に寄与し、組合員の経済的地位の向上に資する活動である。してみれば、X組合の行う労働者供給事業は、同号の労働組合の運営として、支配介入から保護される活動に当たると解するのが相当である。 (2)Y会社による複数組合間の労働者供給事業についての差別 的取扱いが、労組法7条3号に該当するか否かについて Y会社は、①X組合が昭和58年にX組合から分裂してできた別組合と対立している中で、別組合を旧X組合を継承する組合と認め、従来の労働協約を適用する等していたこと、②昭和59年1月以降、X組合との間で多数の救済申立てにより紛争が係属する中で、救済命令を受けたり、和解をしてきたこと、③平成7年協定書及び平成9年確認書の締結によって、労働者供給事業における平等取扱に対するX組合の強い要請を十分に認識していたこと、④平成9年確認書が存在するにもかかわらず、平成15年9月以降、X組合に対する日雇労働者の供給依頼を停止しながら、別組合との間では、日雇労働者の雇用を再開したこと、⑤過去にX1の組合用務による定時上がりを理由に挙げて供給依頼を停止したことがあり、今般の労働者供給依頼停止も同じ理由を挙げていたこと、⑥X組合から日雇労働者の雇用再開を度々要求されたのに、再開する理由を明らかにすることなく、団体交渉を拒否する態度をとり続けたこと、⑦Y会社代表は、労働委員会の審問、当裁判所の当事者尋問において、X組合に属するY会社の正規従業員が、組合活動優先の姿勢であることを縷々批判していることという各事情を考慮すれば、Y会社はX組合の弱体化の意思をもって、X組合と別組合との間で、労働者供給事業における差別的な取扱いを行ったことが強く推認される。 (3) 以上によれば、Y会社は、労働者供給事業の場面において、X組合の弱体化の意思をもって、X組合を差別的に取り扱ったもの認めることができ、その行為は、労働組合法7条3号の支配介入に該当するということができる。 3 救済方法について 不当労働行為にどのような救済方法を命じるかは、労働委員会に裁量権があり、その逸脱、濫用が認められない限り、違法の問題は生じない。文書交付を命じた本件命令には、裁量権の逸脱、濫用は認めらず、違法性はない。 4 以上によれば、Y会社の請求には理由がないことになるから、 これを棄却する。 |