概要情報
事件名 |
モービル石油(懲戒処分等) |
事件番号 |
東京高裁平成20(行コ)第402号 |
控訴人 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
エクソンモービル有限会社 |
判決年月日 |
平成21年3月25日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、組合支部の組合員X2に対し、①配転を命じたこと、②X2がコンピューター端末機の操作業務及び配転命令を拒否したこと並びに業務を妨害したこと等を理由に出勤停止15日の懲戒処分としたこと、③Xが申請した年休を認めず、欠勤扱いとして賃金カットを行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
初審大阪府労委は、配転命令に係る申立てについては申立期間徒過を理由に却下し、その余の申立てを棄却し、中労委は、初審命令を維持し組合からの再審査申立てを棄却した。
組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却したため、東京高裁に控訴提起をしたところ、同裁判所は組合の控訴を棄却した。
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判決主文 |
本件控訴を棄却する。 |
判決要旨 |
1 当裁判所も、本件配転命令に係る救済申立てを却下し、その余の救済申立てを棄却した本件命令は適法であり、その取消を求めた控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決を次のとおり訂正し、事項において控訴人の主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3の1ないし4に説示されたとおりであるので、これを引用する。
(原判決の訂正)
(1)30頁23行目の「的棚態度」を「的態度」に改める。
(2)31頁8行目の「原告」を「ス労支部」に改める。
2 控訴人の主張に対する判断
(1) 控訴人は、昭和57年9月に結成され、会社に対し結成通告、団体交渉要求及び控訴人の支部組合員の組合費の控訴人指定口座への振り込み要求並びにストライキ通告を行い、実際にストライキを実行したにもかかわらず、会社は控訴人を労働組合として扱わず、昭和58年4月まで組合結成無視の状態を継続させ、また、控訴人の組合員に対する会社職制による様々な暴力行為あるいは脅迫行為がなされているところ、組合員X2への配転命令がなされたものであるから、本件における不当労働行為ないしは不当労働行為意思の認定については、このような会社による控訴人の組合結成無視の事情、会社職制による控訴人の組合員に対する暴力行為、脅迫行為等の背景事情も総合的に考慮して判断すべきである(最高裁(行ツ)第40号昭和60年4月23日第三小法廷判決民集39巻3号730頁参照)と主張する。
しかし、会社は、昭和57年10月の上記要求並びに通告を受け、実際に同月15日にストライキが実行されたものの、同月15日には、別組合から会社に対し、別組合組合員で脱退届を出した者は一人もおらず、控訴人は別組合から独立していないため、組合内部の問題に会社として介入しないようにとの要求がなされ、会社が控訴人の中央執行委員長であるというX1に対し、別組合から脱退したかどうかを問い合わせたところ、X1からは、控訴人宛に照会すべきであるとの返答しかこず、同年11月にはX1ら36名から別組合の組合費の引き去り依頼書が会社に提出されたものの、会社が36名全員に対し、別組合を脱退しているか否かにつき回答を求めたのに対し、同年12月、これらの書類が会社に一括返却され、その回答がなかったため、会社が組合費を補完したこと、控訴人を組合と認めない状態が昭和58年4月まで継続したことが認められる。
(2)控訴人は、組合員X2は、支部の組合員として、控訴人から本件配転命令拒否指令を受けており、この指示に従わなければ統制違反となって控訴人から処分を受ける立場にあり、組合員である以上、この指令に従う必要があったのであり、指令を出した組合役員を処分せずに、組合の指令に従い争議行為をした組合員を懲戒することは、その合理性に重大な疑いがあり、裁量権の行使を誤った重大明白な瑕疵があり、無効というべきである(東京高判平成16年6月30日)と主張する。
しかし、X2個人が行った秩序違反行為の態様に応じて懲戒処分がされたものである以上、これが控訴人のX2に対する指名スト指令によるものであったとしても、X2に対する本件懲戒処分の不当労働行為性の判断について影響するものではないというべきであり、本件懲戒処分の理由の一つとすることが不当であるとはいえない。
(3)控訴人は、ストライキを「労務の停止という消極的なもの」にとどまる限り許されるとするのは労働関係調整法7条の趣旨を矮小化するものであり、X2の指名ストライキは、本件配転命令の拒否及びその撤回を求めるために行ったものであり、会社が様々な手段で控訴人の活動を押さえつけようとしたため、1年半の期間、ある程度強硬な手段で対抗せざるを得なかったものであるから、その手段、態様に照らし、正当な争議行為であると主張する。
これについては、労働関係調整法7条は争議行為の定義を掲げただけであって、争議行為又はそれに伴う諸々の行為がすべて適法又は正当であるといっているのではないこと(最高裁昭和23年(れ)第1049号同25年11月15日大法廷判決刑集4巻11号2257頁)、及び、具体的な争議行為の正当性については、争議の目的及び争議手段としての各個の行為の両面にわたって、現行法秩序全体との関連において判断されるべきであり、争議行為の態様が暴力の行使などのより侵害的な要素を含む場合や、使用者の財産権を争議の目的を超えて過度に侵害する争議手段も正当性を否定されるというべきである。本件におけるX2の指名ストは、その手段、態様及び1年半という継続期間からしても、正当な争議行為といえないことは明らかである。
3 以上によれば控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却する。
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