労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 塩釜交通(塩釜交通労組)
事件番号 仙台地裁平成19年(行ウ)第25号
原告 有限会社塩釜交通
被告 宮城県(代表者兼処分行政庁 宮城県労働委員会)
被告補助参加人 塩釜交通労働組合
判決年月日 平成21年3月24日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  X組合が行った組合員X1及びX2の定年後の再雇用の申入れに対し、Y会社が再雇用を拒否したこと、また、X組合が行った団体交渉の申入れに対して、Y会社が団体交渉に応じなかったこと及び誠実に団体交渉を行わなかったことが、不当労働行為であるとして争われた事件である。
 宮城県労委は、Y会社がX1及びX2を再雇用しなかったこと及び団交拒否等が不当労働行為にあたるとして、X1及びX2を嘱託職員として雇用したものとしての取扱い及び誠実団交応諾等を命じた(以下「本件命令」という。)。
 Y会社は、本件命令を不服として、仙台地裁に行政訴訟を提起したところ、同裁判所は、訴えを棄却した。
判決主文 Y会社の請求を棄却する。(宮城県労委命令を支持)
判決要旨 1 争点1(X1の救済申立期間の経過)
  X1は、本件救済申立ての前の平成16年3月28日に定年退職し、定年退職から平成17年12月21日の本件救済申立てがなされるまでに1年以上経過しているが、X1の退職前の平成16年2月20日付けの要求書を契機としたX1の再雇用に関するX組合の継続した要求に対し、Y会社は、「上の方に話す。」と回答したのみであったなど、いずれの時点においても明確な回答をしないまま、問題を先送りにしているのであるから、申立期間との関係においては、Y会社による再雇用拒否はこの間継続していたものとみるべきである。したがって、X1の本件救済命令申立てについては申立期間は経過していないものと認められる。
2 争点2・3(Y会社がX1、X2を再雇用しなかったことは、「不利益な取扱い」にあたるか。)
  企業者は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるものであるし、他方、企業者は、いったん労働者を雇い入れ、その者に雇用関係上の一定の地位を与えた後においては、その地位を一方的に奪うことにつき、雇入れの場合のような広い範囲の自由を有するものではない(最高裁48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁参照)、そして、労働組合法7条1号本文は、「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」又は「労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」を不当労働行為として禁止するが、雇入れにおける差別的取扱いが前者の類型に含まれる旨を明示的に規定しておらず、同号は雇入れの段階と雇入れ後の段階とに区別を設けたものと解される。そうすると、雇入れの拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り、労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いには当たらないと解するのが相当である(最高裁平成15年12月22日第一小法廷判決・民集57巻11号2335頁)。
  そこで検討するに、定年退職後も労供契約に基づいて再雇用されることが慣行となっていたものと認められ、人員不足であるにもかかわらず、X1及びX2を再雇用しなかったことに合理性がないこと等からして、X1及びX2の再雇用拒否は、X1及びX2がY会社の従業員であった時の定年退職後の再雇用に対する法的保護に値する期待・信頼を侵害するものであり、X組合の組合員であることを嫌悪してなされたものと認められるから、従前の雇用契約関係における不利益な取扱いとして、労組法7条1号の不当労働行為に該当すると判断する。
3 争点4(X組合が申し入れた各団体交渉について、Y会社は誠実に交渉を行ったか。)
  Y会社は、X組合からの平成17年3月1日付けを始めとする5回の団交申入れに対し、それぞれ、
 ア 忙しい旨を回答し、団体交渉に応じなかった事実が認められること、
 イ 予定が立たない旨を回答し、団体交渉に応じなかった事実が認められること、
 ウ X1、X2の再雇用の問題について、「上の方に話す。」と回答したに過ぎず、具体的な説明を行ったとは認められないこと、
 エ 交渉時に65才定年延長について「拒否する」旨を回答するなどが認められ、さらに具体的な説明を行ったとは認められないこと、
 オ 年末年始の休日の議題の交渉時には、「会社のやりくりが大変だ」「全自交で決まったことに従え。おまえ達は認めない。」など回答し、それ以上にX組合を説得するために資料を提示する等の努力をした事実は認められないこと
  以上のことから、誠実な交渉を行ったとは認められず、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
4 以上のとおりであるから、Y会社の行為が労働組合法7条1号及び2号の不当労働行為に該当するとした本件命令は適法であり、Y会社の請求に理由がないから棄却する。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
宮城県労委平成17年(不)第2号 一部救済 平成19年10月5日
 
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