概要情報
事件名 |
神谷商事 |
事件番号 |
東京地裁平成19年(行ウ)第698号 |
原告 |
神谷商事株式会社 |
被告 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
労働組合東京ユニオン |
判決年月日 |
平成20年7月3日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
X組合は、平成17年度の昇給及び一時金等に関する団体交渉において、X組合が財務資料等を提示しての説明及び常務取締役の出席を要求したことに対し、Y会社がこれを拒否したことが不誠実な団体交渉であるとして、東京都労委に救済申立てを行った。 東京都労委は、Y会社の対応を不当労働行為であると認め、団体交渉において財務資料を提示して説明をするなど誠実に対応すること等を命じる救済命令を発した(以下「初審命令」という。)。 X組合及びY会社の双方は、初審命令を不服として、中労委に再審査申立てをしたところ、中労委は、初審命令を一部変更し、①常務取締役等を出席させること、②文書手交及び掲示を命じ、Y会社の再審査申立ては棄却した(以下「本件命令」という。)。 本件は、Y会社が本件命令を不服として、取消しを求めた事案である。
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判決主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用(補助参加費用を含む。)は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
① 前提事実によれば、Y会社は、X組合からの団体交渉申入れには応じているが、具体的な説明をしようとはせず、また、団体交渉の出席者であるY会社の部長及び課長の対応からすると、これらの者は実質的な交渉権限を有しておらず、単なる伝達機関でしかないというべきである。Y会社の一連の対応は、誠実に団体交渉に臨んだとは認めがたく、実質的に団体交渉を正当な理由なく拒んだと認められるから、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 ② Y会社は、本件命令は、30年前の立ち会い団交の事実を持ち出し、常勤取締役の出席が必要であると理由付けとしており、これは事実上の不意打ちであり、訴訟上の信義則違反であって、手続上違法である旨主張するが、上記の立ち会い団交が行われ、Y会社の常勤取締役がこの立ち会い団交に出席したことは、審査手続きにおいて取り上げられていたことは明らかであり、Y会社が反証や反論する機会はあったというべきである。 そうすると、本件命令が、上記の立ち会い団交及び常勤取締役の出席を認定し、これを判断の根拠としたとしても不意打ちではなく、信義則に反するとは認められない。 ③ 本件命令が発出された後に、Y会社が、本件命令に従って履行をしたのであれば、本件命令を取り消す利益は失われ、本件命令の取消しを求める訴えは却下すべきことになる。本件命令の発出後に命令の履行がされたとしても、救済の利益が問題になるものでもない。 Y会社は、本件命令発出後、それまでも団体交渉の出席者であった部長を取締役に就任させ、同人を出席させた上で団体交渉が行われたが、同人は、組合に対する説明については、賃貸対照表や損益計算書の数字を口頭で読み上げただけであり、また、団体交渉の場における同人の発言は、要するに「会社が独自に決めている」ということに尽きるものであると認められる。 X組合からの質問等の本件命令が財務資料の提示又は具体的な数値を示すことを求めているのは、あくまでも誠実な団体交渉の例として挙げたのであって、誠実といえるか否かは、回答にどのような根拠があるかについて納得が得られるような説明がされたか否かによって決せられるべきところ、Y会社の対応は、従前の対応と変わらないといわざるを得ない。 したがって、Y会社が本件命令を履行したとはいえない。 ④ 以上によれば、本件におけるY会社の一連の対応が不当労働行為であるとして初審命令を一部変更して救済命令を発した本件命令は適法である。
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