事件名 |
日本ケミファ |
事件番号 |
東京地裁平成15年(行ウ)第680号
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原告 |
全労連・全国一般労働組合埼玉地方本部 |
原告 |
全労連全国一般日本ケミファ労働組合 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
日本ケミファ株式会社 |
判決年月日 |
平成16年10月28日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合執行委員長を埼玉県にある研究開発部門から茨
城県にある工場に配置転換したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件で、初審埼玉地労委は、会社に対し、組合
執行委員長に対する配置転換の撤回及び原職復帰並びに文書手交を命じ、その余の申立てを棄却したが、中労委は、初審命令を取
り消し、組合らの救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として行政訴訟を提起した。東京地裁は、組合らの請求を棄
却した。 |
判決主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、参加によって生じたものを含め、原告らの負担とする。 |
判決の要旨 |
1300 転勤・配転
平成12年3月初めの時点では、会社、特に本件検査薬の開発・販売の担当部署である臨床検査事業部においては、1年後に販売
が予定されている本件検査薬の生産体制を茨城工場において構築することが急務になっていたところ、同工場では、人員不足や製
造上の困難を訴えて今一つ積極的な姿勢がみられなかったことから、アレルギー検査薬に詳しい者を同事業部から同工場に異動さ
せ、同事業部との密接な連絡・協力体制の下で生産体制構築の作業に従事させる業務上の必要があった。本件検査薬開発・販売責
任者であるY1取締役が人事担当のY2取締役に本件配転を具申し、この具申に基づき本件配転が決定されたのも、この業務上の
必要性によるものであると認められる。これら事情に照らせば、特定の臨床検査薬製造のため同事業部から同工場へ異動した前例
がないという事実は、本件配転が業務上の必要性に基づくものであることを否定するものではないとされた例。
1300 転勤・配転
1603 組合活動上の不利益
組合地本の執行委員長、所属組合の特別中央執行委員を務め主に埼玉県内と東京都内を組合活動の場とするX1は、本件配転によ
り勤務地が茨城工場に変わったため、これらX1が行っていた組合の役員としての活動や、個人としての組合活動に少なからぬ支
障が生じることになった。このことは、組合から毎年11月ころ新年度の役員を文書で通知されていて、会社としてもある程度予
測し得たはずであるが、本件配転における会社の業務上の必要性が肯認され、また人選においても合理性が認められる以上、会社
が組合及びX1の組合活動に支障が生じることを予想しつつ本件配転を行ったとしても、そのことから直ちに、本件配転が不当労
働行為に基づくものということはできないとされた例。
1300 転勤・配転
3410 職制上の地位にある者の言動
3700 使用者の認識・嫌悪
会社と組合との間の労使事情は、一時的には労使歩み寄りの時期もあったものの全体として見れば、組合設立以降ほぼ一貫して対
立関係が継続していたといってよく、本件配転当時には、複数の原告らによる不当労働行為救済申立事件が労働委員会に係属して
いた上、その数ヶ月前には、会社の大規模な希望退職募集に対し、組合が会社の経営責任を問題としてこれを批判する組合活動を
展開し、一貫して非協力的態度を取ったという事情がある一方、平成11年12月15日付けの社長からのメッセージは、本件希
望退職募集の結果を報告する中で、あえて応募者の所属組合を公表している。これは、本件希望退職募集に対する組合の非協力態
度に対する会社の不快感の現れともみられるが、検査薬開発・製造についての会社の業務上の必要性に照らし勘案すれば、会社の
組合に対する態度・対応から直ちに本件配転が不当労働行為意思に基づいてされたものということはできず、これは上記の事情を
併せ考慮しても同様であるとされた例。
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業種・規模 |
化学工業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年 5月10日 1043号 59頁
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