事件名 |
ネスレ日本(賞与) |
事件番号 |
東京地裁平成10年(行ウ)第221号
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原告 |
ネスレ日本株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合 |
判決年月日 |
平成12年12月20日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、ネッスル日本労働組合(以下「組合」)と、組合と同名の訴
外別組合とが併存していた状況下で、組合の存在を否定する会社が、組合の組合員は別組合の組合員であるとして、昭和62年夏
季賞与及び冬季賞与並びに同63年夏季賞与(以下一括して「本件各賞与」)の支給に当たって別組合と新たに締結した各賞与協
定(以下一括して「本件各賞与協定」)の新控除基準を適用することにより、組合の組合員の本件各賞与を大幅に減額して支給し
たことが争われた事件である。
初審兵庫地労委(平3・3・14命令)は、右の会社の行為は不当労働行為に当たるとして、(1)本件各賞与の年間支給月数
を本件各賞与協定の6・2か月とし、これから本件各賞与協定締結前の控除基準(以下「旧控除基準」)に準じて控除した場合の
額と既支給済額との差額を支給すること及び(2)誓約書の交付を命じた。会社の再審査申立に対し中労委(平10・10・14
命令)は、初審判断を相当であるとして再審査の申立を棄却した。会社はこれを不服として本件命令の取消を求めていたものであ
る。
東京地裁は会社の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
2900 非組合員の優遇
本件各賞与協定による新控除基準を、申立人組合との団体交渉を経ることなく、申立人組合の組合員に一方的に適用することは、
申立人組合の組合員を訴外組合の組合員に比し不利益に取り扱ったものというべきであり、この取扱いは、労働組合法第七条第一
号の不利益取扱いに該当すると同時に、会社は、新控除基準により申立人組合員の賞与からの減額額が大きくなることを予測して
いたにもかかわらず、同組合員に新控除基準を適用しているのであるから、会社のかかる行為は、申立人組合に打撃を与えるもの
として、労働組合法第七条第三号の支配介入にあたるとされた例。
5008 その他
本件命令が、会社が無断職場離脱、無断欠勤とした取扱いを一応是認した形で旧控除基準に準じて算定した差額支払いを命じ、支
給月数を6・2ヶ月としたことは、組合の被った不利益の実質的な救済を図る方法として必ずしも原状回復の範囲を超えるまでは
いえないとされた例。
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
支給月数を6・2ヶ月分として算定すべきであるとした結果、本件各賞与規定の支給月数と新控除基準とが、分断された形になる
が、このような結果をもたらしたのは、本件各賞与に関し、会社が申立人組合との団体交渉を行わないまま、一方的に申立人組合
の組合員に不利益となる新控除基準を適用したことによるものであるから、やむを得ないというべきであり、中労委のとった救済
方法が、不老労働行為是正のために労委に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法なものであるとまではいえないとさ
れた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
事業場において従業員総数の4分の1未満の者が別に自ら労働組合を結成していた場合には、その少数組合の団結権・団体交渉権
を保障する必要があるから、労働協約についての事業場単位の拘束力は、少数組合には及ばないと解するのが相当である。
0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
組合活動であっても、それが正当性を有するものでなければ、労働組合法一条二項、八条の趣旨に照らし法的保護を受けることは
できないところ、労働者は、労働者の基本的な義務として就業時間中は職務に専念しなければならないから、正当な組合活動であ
るというためには、目的において正当であるだけでなく、就業規則、労働協約上許容されている場合、慣行上許されている場合、
使用者の承諾がある場合などを除き、就業時間外に行われるものでなければならず、就業時間中に組合活動を行うことは許されな
い。
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業種・規模 |
食料品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集35集886頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2001年5月10日 983号 42頁
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