事件名 |
東日本旅客鉄道・ジェイアールバス関東 |
事件番号 |
東京地裁平成11年(行ウ)第91号
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原告 |
ジェイアールバス関東株式会社 |
原告 |
東日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
国鉄労働組合東日本本部 外3名 |
判決年月日 |
平成14年 6月19日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
(1)JR東日本が経営していた長野原自動車営業所の営業所長が、
組合員8名に対し、組合からの脱退を勧奨したこと、(2)JR東日本が組合員2名について、高崎運行部への転勤命令を行い、
かつ、長野原自動車営業所の社員をジェイアールバス関東に出向させながら、前記組合員2名についてはジェイアールバス関東に
出向させなかったことが不当労働行為にあたるという申立てにより発せられた群馬地労委の救済命令に対し、会社らはこれを不服
として再審査を申し立てたが、中労委は命令を一部変更したほかは再審査申立を棄却した。このため、会社らは、東京地裁に行政
訴訟を申し立てたところ、同地裁は、中労委命令を一部取消し、その余の申立てについては、却下、棄却した。 |
判決主文 |
1 本件訴えのうち、被告が中労委平成2年(不再)第55号事件に
ついて平成11年3月3日付けで発した命令中、被告に対して次の部分の取消しを求める訴えを却下する。
(1) 同命令の主文第I項のうち、X1に関する部分
(2) 同命令の主文第II項のうち、その初審である群馬地労委昭和62年(不)第9号、昭和62年(不)第I号事件につい
ての命令主文第2項中X1について原告ジェイアールバス関東株式会社への出向発令を命じた部分の再審査申立てを棄却した部分
2 前記1の命令のうち、次の部分を取り消す。
(1) 同命令の主文第I項のうち、X2に関する部分
(2) 同命令の主文第II項のうち、その初審である群馬地労委昭和62年(不)第9号、昭和63年(不)第1号事件につい
ての命令主文第2項中、X2について原告ジェイアールバス関東株式会社への出向発令を命じた部分の再審査申立てを棄却した部
分
3 原告らのその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用(参加によって生じた部分を除く。)は、これを3分し、その1を被告のその余を原告らの負担とし、参加によって
生じた費用はこれを3分し、その1を参加人らの、その余を原告らの負担とする。 |
判決の要旨 |
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1所長の言動は、会社の意を体して、組合所属の各組合員に対し、組合からの脱退を慫慂する趣旨のものであったと認めるのが
相当である。
1300 転勤・配転
3608 動機の競合
本件転勤命令は、業務上の必要性は認められるものの、その転勤対象者の人選には合理性に疑問が残ること、またJR東日本が、
所長を通じて、組合差別的意図の下に本件転勤命令を行ったと認められること、これらを併せ考えれば、本件転勤命令は、この組
合差別的意図が業務上の必要ないし人選の合理性よりも優越し、その決定的動機であったと認めるのが相当である。本件転勤命令
は、JR東日本が、組合の役員に就いて活動を続けるS及びYを嫌悪し、同人らをJRバス会社への出向対象者から排除すること
によって組合の運営に支配介入したものであって、労組法七条一号及び三号の不当労働行為にあたるとした本件命令は正当であ
る。
1300 転勤・配転
6140 訴の利益
X1は、満57才となった後、高鉄開発へ出向となったところ、この出向はJR東日本における制度に基づくものである。そうす
ると、仮に本件命令のX1に対するJR東日本からジェイアールバス関東への出向命令発令とジェイアールバス関東による出向受
け入れ義務が肯定されるとしても、命令の履行は客観的に不可能となり、もはや履行する余地はなくなったというべきである。し
たがって、本件命令中、X1の出向に関する部分はその基礎を失い、原告らは同命令に従う義務を負わなくなったものというべき
である。よって、本件訴え中、X1についてジェイアールバス関東への出向命令を命じた部分の再審査申立てを棄却した部分の取
消を求める訴えは訴えの利益を欠くことになるから、却下を免れない。
4916 企業に影響力を持つ者
組合は、ジェイアールバス関東の発足後には同社の社員で組織されているが、同社の社員は、その全員が、JR東日本からの出向
者であり、JR東日本と組合員の労使関係は存続しているものと認められる。JR東日本はジェイアールバス関東の社員の労働条
件について現実かつ具体的な支配力を有している事実があり、組合がJR東日本を相手方として、労働関係上の諸利益について交
渉する事態が生ずることも考えられることからすれば、組合員に対する関係でなお労組法上の使用者の地位にあるものと認めるの
が相当である。よってJR東日本に対して組合に対する支配介入を禁じた本件命令主文第1項が違法であるということはできない
と解するのが相当である。
4909 事業分離後の新企業体
5006 採用の請求
6355 その他
JR東日本の社員であるX2は、ジェイアールバス関東への出向とはならず、同会社は、X2に対し、その具体的労働条件等に関
し何らかの現実的かつ具体的な支配、決定をすることができる地位にあったということはできない。したがって、ジェイアールバ
ス関東は、X2との関係で労組法上の使用者ということはできない。JR東日本のジェイアールバス関東に対する支配力を考慮し
ても、ジェイアールバス関東がJR東日本とは別個の法人であり、JR東日本がX2らの組合活動を嫌悪して同人らを自動車事業
部門から排除するため自動車事業部門を分離独立させてジェイアールバス関東を設立したなどの特段の事情がうかがえない本件に
おいては、ジェイアールバス関東に対し出向の受け入れを命じた本件命令は、労働委員会の裁量権を逸脱する違法なものであると
いわざるを得ない。また、ジェイアールバス関東に対して出向を命ずることが許されない以上、JR東日本がX2に対してJRバ
ス関東への出向命令を命ずることも許されないというべきであり、労働委員会の裁量を逸脱する違法なものといわざるを得ない。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集501頁 |
評釈等情報 |
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