労働委員会関係裁判例データベース

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  岡山電気軌道 
事件番号  岡山地裁平成 7年(行ウ)第14号 
原告  岡山電気軌道株式会社 
被告  岡山県地方労働委員会 
被告参加人  私鉄中国地方労働組合岡山電軌支部 
判決年月日  平成10年 2月25日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、平成元年、2年、3年、4年、5年の各春闘期間中等に組合の実施したストライキによる不就労を理由に、ストを実施した各月の給与から精勤手当、住宅手当及び各年夏季臨時給並びに精勤手当夏季分を控除したことが争われた事件で、岡山地労委は、精勤手当等控除額全額の支払い(年5分加算)を命じた。会社はこれを不服として、岡山地裁に行政訴訟を提起していたが、同地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の要旨  1204 スト・カット
ストライキによる賃金カットの問題は、ストライキにより欠勤しても差し引かない賃金部分が設けられているかどうかという労働契約解釈の問題であり、賃金算定方式を定めた労働協約又は就業規則の条項の解釈、労使慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当として、ストライキによる不就労は欠勤と同一扱いにすべきとの会社主張は失当であるとされた例。

1204 スト・カット
「争議行為に参加した組合員に対しては・・・・一切の賃金は、これを支払わない。」との本件労働協約九五条にいう「一切の賃金」とは、基本給以外の手当等はストカットしない取扱いが長期間反復継続されていること等より、事実上の制度、労使慣行といて確立していたことを前提として考えると、基本給のみを意味し、それ以外の精勤手当、住宅手当、臨時給与及び精励手当等は含まれないと解するのが相当であるとされた例。

1204 スト・カット
基本給以外の賃金についてストカットしないとの確立した労使慣行は労働契約の内容に転化したというべきで、これを破棄することは組合員の賃金請求権の内容を変更するものにほかならず、会社は合理的理由及び必要のあることを要すると解されること等から、会社の主張する確立した右労使慣行破棄の効果を生じていないといわざるを得ないとされた例。

3700 使用者の認識・嫌悪
本件ストカットは、会社が一方的に実施通告し、組合に合理的な理由を説明せずに誠実に協議する姿勢も窺えず、当年の春闘状況が激烈で会社配布文書中にストに対する強い拒絶反応が表れている等の事実に加え、前年のスト及びストカットの経緯等から、組合の団結の弱体化を図る目的で行った組合運営への支配介入で、労組法七条一・三号の不当労働行為に該当するとされた例。

3608 動機の競合
本件ストカットは、経営状態急激悪化による経営合理化の必要性から実施したもので合理的理由がある旨の会社主張が、業界全体の業績不振、人件費比率の増加は認められるが、会社が如何なる経営改善努力をしたのか判然とせず、組合に説明して合意を形成すべく交渉・説得の手続を踏んでいないから、これをもって右(2)の労使慣行が破棄されたものとは到底いえないとされた例。

4418 継続する行為を認めた例
本件ストカットは、組合の弱体化及びスト抑止の方策として、同一の不当労働行為意思のもとに毎年次に反復・継続的に実施されたもので一体のものとしてとらえるべきであり、労組法二七条二項の継続する行為に該当するとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(バス専業) 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集33集87頁 
評釈等情報  中央労働時報 1999年9月 957号 72頁 

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
岡山地労委平成 5年(不)第1号/他 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 7年 6月23日 判決