事件名 |
九州旅客鉄道(JR総連支配介入) |
事件番号 |
福岡地裁平成 7年(行ウ)第16号
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原告 |
九州旅客鉄道株式会社 |
被告 |
福岡県地方労働委員会 |
被告参加人 |
ジェーアール九州労働組合 |
被告参加人 |
全日本鉄道労働組合総連合会 |
判決年月日 |
平成10年 1月21日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が(1)他のJR会社と通じ、JR九州労組Aグループ
や助役らをしてJR九州労組を混乱させたり、臨時大会に関与させてJR九州労組のJR総連脱退及びX1委員長解任を決議させ
る等したこと、(2)Bグループ支持の九州労組員に対し、助役の言動或いは本社係長が組合員宅訪問する等によりJR総連を非
難し、その関係を維持するJR九州労への加入を抑止したこと、(3)JR九州労結成活動としてのビラ配布を妨害し、ビラ回
収、状差しへの移し替え及び配布者等の個人名を挙げて組合活動非難の掲示を行ったこと等が支配介入に当るとして争われた事件
で、福岡地労委は、(1)本社係長による、JR総連の組織運営に対する支配介入の禁止、JR九州労の組織運営に対する支配介
入の禁止、(2)文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。会社はこれを不服として、福岡地裁に行政訴訟を提起していた
が、同地裁は、救済命令を一部取り消した。 |
判決主文 |
1 被告が福岡地労委平成3年(不)第10号、第11号不当労働行
為救済申立併合事件について、平成7年7月28日付けでした命令のうち別紙1記載の主文中、次の部分を取り消す。
1 主文第2項のうち、乗務員更衣室のロッカーに配布されたビラを回収したりして被告補助参加人ジェーアール九州労働組合
の組織運営に支配介入することを禁止した部分
2 主文第3項(2)のうち、手交を命じた文書の内容のうち1の部分
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加によりて生じた費用も含む)は4分し、その2を原告、その1を被告、その余を被告補助参加人ジェー
アール九州労働組合の負担とする。 |
判決の要旨 |
2501 親睦団体の利用
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
2つのグループ対立が激化し、九州労組の分裂が予測された場合には、会社は中立を守り、厳正な立場に立って一方のグループに
肩入れしているような行動をしてはならないものであり、この観点から、非組合員で会社側団交メンバーである管理課社員係長の
X2組合員宅訪問と「小さい会社だから組合は分裂せんほうがいい。出ていかないでくれ。若者を引っぱって行かんでくれ」等の
言動は、分裂して結成されたJR九州労への支配介入行為であるとともに、後に上部団体となったJR総連の組織運営に対する支
配介入となるとされた例。
0200 宣伝活動
2501 親睦団体の利用
3020 組合活動への制約
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
会社職制による乗務員更衣室ロッカーに配布したビラの回収、移し替えは、当時九州労組から分裂してJR九州労を結成しようと
するグループと阻止しようとするグループの対立が険悪な状況となっており、会社が傍観すれば対立が更にエスカレートして職場
秩序や業務に深刻な影響を与える危険があったのであり、本件JR九州労加入呼びかけビラ配布には特別事情は認められないので
正当な組合活動とはいえず、ビラ回収の態様も、会社の立場を説明し注意したのに従わないので実力行使したもので、回収ビラも
組合員に返すか個人別状差しに移し替ており、組合活動の情報伝達に対する影響も小さかったので行き過ぎは認められず相当であ
り、JR九州労結成妨害の支配介入とはいえないとされた例。
2620 反組合的言動
会社職制によるビラ配布者個人名を挙げての掲示は、本件ビラ配布等が右(2)のとおり正当な組合活動とは認められないのでこ
れを非難することは原則的に許されるとしても非難の態様が相当性を逸脱する場合には許されず、本件掲示文書は個人名を挙げて
非難しており、その影響は口頭で注意したことに比べるとはるかに大きく、組合員のビラ配布等に対比して均衡を失し相当性を逸
脱するのでJR九州労結成妨害の支配介入にあたるとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集33集52頁 |
評釈等情報 |
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