通知

中労委文発第562号
昭和37年11月8日
各地方労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

中央労働委員会規則の改正ならびに
行政事件訴訟法および行政不服審査法等の施行に伴う事務処理について

中央労働委員会規則の一部を改正する規則(昭和三十七年中央労働委員会規則第一号)は、昭和三十七年十一月八日公布、 即日施行された。また、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第一三九号。以下「行訴法」という。)および行政不服審査法(昭和三十七年法律第一六〇号。 以下「審査法」という。)ならびに行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和三十七年法律第一四〇号)および行政不服審査法の 施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和三十七年法律第一六一号)により労働組合法の一部が改正され、いずれも昭和三十七年十月一日より 施行された。

規則改正およびこれら諸法律の施行に伴い、労働委員会の事務処理等についても、従来と異なつた取扱いを要する点が生ずることとなる ので、下記に御留意の上円滑な運営につき格段の御配慮を願いたい。

第一、中央労働委員会規則の一部改正について
今回の中央労働委員会規則の一部改正は、行訴法、審査法等の施行に伴い、必要な措置を講ずるとともに、従来不備とされていた点を 改め、労働委員会業務のより効率的な運営をはかるという観点から行われたものである。その内容においては、委員会の行なう諸手続について多くの点に わたり改正を加え、また条文の体裁、用語等をできるだけ統一、整理したほか、中央、地方の労働委員会を通ずる統一規則であることを明確にするため、 題名を「労働委員会規則」と改めた。
主要な改正点は、以下のとおりである。
一、審査関係
(一)資格審査
イ 資格審査の終了
資格審査を開始した後において、第二十二条各号に規定する事由が消滅したときは、審査手続は終了するものとした(第二十三条第三項)。
第二十二条各号に規定する事由が消滅したときは、審査を継続し、決定をする必要がなくなるのでこのような場合は、申請の取下げ等の手続がなくとも、審査手続は終了したものとして取扱いうる趣旨であり、従来慣行的に行われていた資格審査打切りの措置を明文化したものである。
ロ 補正勧告の取扱い
要件の補正について、委員会が勧告を行なう場合は、公益委員会議の決定を必要とすることを明らかにした(第二十四条)。
ハ 再審査申立ての教示
労働組合が労働組合法の規定に適合しない旨の決定書の写しを交付するときは、中労委に再審査申立てができる旨及び申立ての期間を教示しなければならないこととした(第二十五条第三項)。審査法に教示の制度が設けられたことに伴うものである(第二、四参照)。
ニ 再審査申立期間
不当労働行為についての再審査申立期間に関する労働組合法の規定が改正されたので、資格審査についてもこれと同様の規定に改めた(第二十七条第一項)。
(二)不当労働行為関係
イ 審査の促進
不当労働行為事件については、とくに迅速な処理をはかることが必要であり、従来とも各労働委員会において、このための申合せ等が行なわれていたところであるが、その趣旨を徹底させるため、規則に次のような諸規定を新設した。
  1. (イ)被申立人は、申立書の写しが送付された日から原則として十日以内に答弁書を提出しなければならないこと(第三十七条第二項)。
  2. (ロ)委員会は、申立てのあつた日から原則として三十日以内に審問を開始するものとすること(第三十九条第一項)。
  3. (ハ)審問はできるだけ継続して行なうものとすること(第四十条第五項)。
  4. (ニ)審問期日の変更は、相当の理由のない限り認めないものとすること(第四十条第六項)。
  5. (ホ)審問終結の日を当事者に予告して最後陳述の機会を与えるものとすること(第四十条第十一項)。 なお、(ホ)については、あらかじめ結審の日を予告することにより(一回の審問のみで終結する場合は、審問開始通知書に結審の日の予告を付記することとなる。)、最後陳述の機会を与えるものであり、結審の日においては、たとえ最後陳述することがなくとも結審することとして、審査促進をはかる趣旨である。
ロ 当事者の追加
当事者その他の関係者から申立てがあつたとき、又は会長が必要と認めたときは、当事者の追加ができること、およびその手続についての規定を新設した。(第三十二条の二)。
事案の内容又は当事者の事情変更等に即して、命令の実効を確保する趣旨である。
当事者の追加にあたつては、参与委員、当事者および追加しようとするものの意見をきかなければならないこととして、慎重な手続を設けているが、とくに、会長が必要と認めて当事者を追加しようとする場合については、当事者その他の関係者からの申立てがなく、かつ、事件処理上真にやむをえないときに限るものとされたい。
なお、「関係者」とは申立書に記載された当事者以外のものであつて、事件につき自ら当事者となることができるものと解されたい。
ハ 申立ての却下事由の追加
申立人の居所不明、死亡、消滅又は申立てを維持する意思を放棄したものと認められるときを申立ての却下事由として追加した(第三十四条第一項第七号)。
審査の遅延を防ぎ、業務の円滑な運営をはかるための規定であるが、事実の確認はとくに慎重に行なわれたい。
ニ 命令書の写しの交付
  1. (イ)地労委が命令書の写しを交付するときは、当事者に中労委に再審査の申立てができる旨およびその期間を 教示しなければならないこととした(第四十四条第一項)。 審査法における教示の規定は、労働委員会のした処分についても適用されるので、その趣旨に従つて「教示」 という用語を用いたものであるが、取扱いについては改正前ととくに異なるものではない。なお、第二、四参照。
  2. (ロ)命令書の写しを交付することができない場合は、公示送達の方法によることができることとした(第四十四条第四項)。 当事者の所在不明等の場合の困難を解決しようとする趣旨であるが、交付不能の認定については適正に行なわれたい。
  3. (ハ)命令書の写しである旨の証明について、必要があるときは、事務局長の権限でこれを行なうことができるものとした(第四十四条第三項)。
ホ 取消判決の確定による審査再開
行訴法第三十三条第二項および第三項の規定により、改めて命令を発しなければならない場合(第二、三参照)の審査再開の手続について、新たに規定を設けた(第四十八条)。
審査の範囲および手続は、事件の性質と判決理由により、公益委員会議において決定するものであり、また、再開後の手続については審査手続に関する規定が適用される。
なお、地労委が審査を再開したときは、中労委会長に通知しなければならないこととした(第五十条第一項)。
(三)諸手続の明確化等
以上のほか、事務処理手続を明確にするため、次の諸点について改正を行なつた。
イ 公営委員会議決定事項の明確化
不当労働行為の審査手続において、公益委員会議の決定によつて行なうべき事項については、 その旨をそれぞれの条項に明記することとした(第三十二条第四項、第三十七条の二、第五十条第二項)。
したがつて、公益委員会議の決定により行なうことを規定していない第三十七条、第三十九条等については 会長(又は審査委員)の決定で行なうことができるものと解されたい。
ロ 代理人の申請手続
審査において、当事者が他人をして代理させようとする際の手続として、申請書および委任状を 提出しなければならないことを明確にした(第三十三条第二項)
ハ 職権証拠調べ
調査および審問を通ずる証拠調べの総則的規定を設けた(第三十三条第四項)。審問段階においても、職権による証拠調べ ができるものであることを明確にした趣旨である。
ニ 審問の再開
結審後、合議が行われるまでの間の審問再開について規定を設けた(第四十条第十二項)。合議の結果をまたず再開の 必要が認められる場合を予想したものである。
ホ 緊急命令の申立てに関する指定代理人
緊急命令の申立てについても、行政訴訟の場合と同じく、指定代理人により手続を行なわせることができる旨を明らかにした(第四十七条第二項)。
ヘ 通知および報告に関する規定の整備
地労委会長が行なう通知について、中労委に対する通知および裁判所等に対する通知とに区分して規定し、使用者に対する 通知を関係各条に移して(移送第三十条第二項、申立ての取下げ第三十五条第三項)、条文整理を行なつた(第五十条)。 従前と異なる点は、第一項第一号から第三号までについては地方裁判所に通知を要しないこととしたこと、確定判決により 支持された命令の不履行について検察官に通知するものとし、従前の第五号の場合とあわせて、公益委員会議の決定によるべき こととしたことなどである。
なお、再審査における中労委会長の通知についても、第五十条の規定に準じて条文を整理した。
ト 再審査申立書の記載事項
初審の命令書又は決定書の写しの交付の日を再審査申立書に記載すべきこととした(第五十一条第二項)。
チ 再審査申立ての却下
再審査申立ての却下に関する規定を設けた(第五十一条第五項)。従来明文の規定が欠けていたので、整備したものである。
リ 命令書等の作成
命令書等の作成について、従来、署名捺印しなければならないとされていたところを、署名又は記名押印とすることに 改めた(第二十五条第一項、第三十二条第三項、第三十五条第二項、第三十七条第四項、第四十条第十三項、第四十三条第二項)。
二、調整関係
(一)仲裁委員会の会議における議事運営
仲裁委員会の議事運営について、労調法第三十二条および同法施行令第十条の二は当然適用されるものであるのでこれを補つた(第十一条第五項)。
(二)管轄関係
  1. イ 二以上の都道府県にわたる事件の管轄が問題となるのは、申請または請求にかかる場合のみでなく、職権による場合も あるので、管轄に関する報告中に職権による場合を含ませるとともに、必要な処理手続を設けることとした(第十八条、第十九条、第二十条)。
  2. ロ 事件取扱いの特例に関する規定中「管轄の有無についてにわかに判断しがたい場合」を削つた(第二十条第一項)。 同条による取扱いをこのような場合に限定しなければならない理由はなく、規定の内容を実際の運用上の必要に合致させたものである。
(三)注意事項の徹底
改正前の規則第七十二条第一項は、調停の場合における注意事項の徹底に関する規定であるが、あつせん、仲裁についても この趣旨を取り入れることとし、条文の整理を行なつた(第六十六条第一項、第七十二条第四項、第八十一条)。
第二、行政事件訴訟法、行政不服審査法等の施行に伴う事務処理について
行訴法、審査法およびこれらの法律の施行に伴う労働組合法等の改正の概要については、昭和三十七年九月二十四日労働省発総第一三号をもつて 労働大臣官房長より、九月二十八日労発第一五六号をもつて労働省労政局長より、それぞれ各都道府県知事あて通知されているところであるが、 労働委員会として留意すべき主要な点は次のとおりである。
なお、これら諸法律の施行に伴つて必要とされる規則の改正について、やむをえない事情によりその施行の時期が延期されたが、その間の措置に ついては、九月二十七日中労委文発第四七八号「行政事件訴訟法、行政不服審査法および労組法の一部改正法の施行に伴う措置について」によつて 行なわれたい。
一、労働者側の行政訴訟提起等
  1. イ 改正後の労働組合法第二十七条第十一項の規定により、労働委員会の処分に対しては労働者側も行政訴訟を提起しうることが明らかにされた。
  2. ロ 行訴法第八条の規定により訴願前置が廃止された結果、労働委員会の棄却ないし却下の処分につき、労働者側は中労委の 再審査を経ることなく、直接初審地労委を被告として行政訴訟を提起しうることとなつた。この出訴期間については労働組合法に特別の 規定がなく、行訴法第十四条の規定により処分のあつたことを知つた日から三ヶ月以内であり、この期間は不変期間である。 なお、使用者については従前のとおりである。
  3. ハ 初審命令ないし決定に対する労働者側からの行政訴訟の提起については、労組法第二十七条第六項が 準用されていないので、中労委に再審査申立てをした場合においてもすることができることとなるが、この場合は行訴法第八条第三項の 規定により、裁判所は、再審査命令が発せられるまで(再審査申立てがあつた日から三ヶ月を経過しても命令が発せられないときは、 その期間が経過するまで)、訴訟手続を中止することができることとなつている。
  4. ニ 初審の一部救済命令について、労使それぞれからの再審査申立てと行政訴訟提起とが競合することは、 従来ともみられたところであり、今後は上記ハのごとき場合も生じうることとなるが、行政訴訟と再審査が競合する場合については、 中、地労委および裁判所間の連絡を密にするようとくに配慮されたい。
二、再審査を経た場合の行政訴訟
行訴訟の原処分主義(同法第十条第二項)および専属管轄の廃止(同法第十二条第三項)にかかわらず、労働組合法第二十七条第七項 および第十一項の規定により、初審命令につき再審査の申立てをした当事者はその申立てに対する中労委の処分に対してのみ訴えを提起しうる こととなり、したがつて、その管轄は東京地裁となる。この点は従来の取扱いと異ならない。
三、取消判決の確定による審査再開
労働委員会の命令ないし決定を取消す旨の判決が確定したときは、行訴法第三十三条第二項および第三項の規定により、委員会は改めて 命令を発しなければならないこととなつた。
地労委にあつては、棄却命令もしくは却下決定が取り消されたとき、又は救済命令が手続の違法を理由として取り消された とき(一部救済命令については、救済、棄却のそれぞれの部分について同様である。)がこれに該当する。
なお、この場合における審査再開の手続について、規則第四十八条に所要の規定を設けた。
四、教示
  1. (一)審査法第五十七条の規定により、地労委が命令書又は決定書の写しを交付するときは、中労委に再審査申立てができる旨 およびその申立て期間について、当事者に教示しなければならないこととなつた。 なお、これに伴つて規則第二十五条第三項および第四十四条第一項を改正した。
  2. (二)地労委が教示をしなかつたときは、同法第五十八条の規定により、当該命令又は決定に不服のある当事者は不服申立書を 当該地労委に提出することができる。この場合において、地労委は不服申立書の正本を中労委に送付しなければならず、不服申立書の 正本が送付されたときは、はじめから再審査申立てがあつたものとみなされる。 ただし、不服申立期間については労働組合法第二十七条第五項および第十一項の規定が適用される。
五、不作為
行政庁が相当の期間内になんらかの処分をしない場合には、行訴法第三条第五項、第三十七条および第三十八条の規定により不作為の 違法確認の訴えが、また、審査法第四十九条又は第五十二条の規定により不作為についての不服申立てをすることができることとなつた。
労働委員会がした処分については、審査法による不服申立てはできないこととなつている(労働組合法第二十七条の三)が、不作為に ついては、上記審査法の規定が適用されるので、委員会が資格審査の申請又は不当労働行為の申立てを受けたにもかかわらず、相当の期間内に 決定又は命令をしないときは、当事者は当該委員会に異議申立てをすることができるので留意されたい。
六、労働者側の再審査申立期間
不当労働行為に関しての地労委の処分に対する労働者側の再審査申立期間について労働組合法第二十七条第五項および第十一項に 規定されることとなつた。また、再審査申立期間について、天災その他十五日以内に再審査申立てをしなかつたことについてやむをえない 理由があるときは、その理由がやんだ翌日から起算して一週間以内はなお申立てができる旨の規定が設けられた。

以上

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