通知

中労委一文発第526号
昭和24年8月26日
各地方労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

労働委員会の事務処理について(解釈指示第一号)

労組法解釈例規第一号並びに労組法に適合しない労働者の団体に関するあつ旋、調停、仲裁については、別添の通り八月八日付労発第三一七号並びに 八月十日付労発第三二二号をもつて労政局長から通牒されたが、右は労働委員会における事務処理に対し密接な関連もあり、中労委においては、 第八十二回(八月十七日)、第八十三回(八月二十二日)の総会において慎重協議の結果、事案処理に関する過渡的措置について、左記の通り決定したから、 地労委においてもこれに準拠せられたい。

なお、本件は労組法施行後間もない今日急に解釈例規の趣旨をそのまま厳格に励行すると労働委員会の事務が著しく停頓することをおそれてとられた 臨機の措置であるから、これによつて解釈例規そのものに直接何等変更が加えられたのではなく、この点については労政局長からも都道府県知事宛に 通牒される筈につき併せて御覧下され、取扱上万遺憾なきを期せられたい(今後もし法の解釈上疑義を生じ、解釈例規に何等かの変更を加える必要があると 考えられるような事態が起れば、改めて根本方針の二に従い協議決定の上直接当方から通牒するから予め左様御承知置きありたい。)

ついては、この通牒の取扱上特に左の点に充分留意ありたい。

  1. (1)すべての労働組合をして一日も早く法律所定の要件を備えしめる根本方針には何等変りはないから、労働委員会はあらゆる機会を利用し 勧告その他あらゆる方法によつてその方針の徹底につとめること。
  2. (2)根本方針の一により考慮すべき(イ)及び(ロ)の事情は、同時に併せ考慮せられるべきであつて、過渡的措置が認められるのは、 組合そのものには充分誠意が認められるにも拘らず、法施行後時間が足りないため直に合法化し得ないと認められる場合にのみ限られるのであるから、 例えば組合が正面から合法化を否定する等非合法方針を堅持して譲らないこと明かな事情があれば、たとえ(ロ)の事情があつても、調整を行わないこと。

追って本件については労働省労政局とも打合せ完全に了解済であるほか、総司令部労働課においても公式に承認せられたものであるから、左様御承知ありたい。

根本方針
一、労働委員会は、組合の資格審査に関し、法規の励行につとめ、これによりすべての組合が一日も速かに合法組合になることに協力すべきは 勿論であるが、新法施行後まもない今日何等のゆとりをつけずに法規を励行すると、無用の混乱をきたすおそれがあるから当分の間、 左記(イ)、(ロ)の事情を考慮して実情に即した過渡的措置をとりうることとする。
  • (イ)全国的連合団体その他、大規模な組合につき、組合の内部機構の関係上、又は使用者との関係から速急に法定要件を完備することが 困難であると認められる事情があり、且つ組合自らが合法化のために誠意をもつて最大の努力をしていると認められる場合にはそれらの事情
  • (ロ)争議の性質上、資格審査に手間取り、そのため調整に関して機宜の措置を怠ると公益上却つて不都合を生ずると認められ、 又は当事者に対し不当に著しい不利益を与えると認められる場合にはそれらの事情
二、法規の解釈に関し、労政当局と中央労働委員会との間に意見の相違を生ずることは最も望ましくないから、今後公式に解釈例規を作る場合には、 両者間において予め充分協議を遂げることとする。
なお、法規中、労働委員会の権限に関するもの(例えば組合の資格審査、不当労働行為、労働争議の調整に関するもの等)については 、それらの法規の運用者たる中央労働委員会が主体となり、自らその責任においてその解釈を統一していくのが新法の立前上当然と考えられるが、 これについても中央労働委員会が公式に解釈例規を作る場合には予め労政当局に協議することとする。
事務処理の具体的方法
中労委及び地労委で現在問題となつているのは、主に次の三点であると考えられるが、それについては、左のように取扱う。 なお将来他の問題が生じたときには右の方針に従いその都度、これを決める。
一、労働組合の法人登記に関する資格審査について
(1)改正労組法施行当時既に法人として登記されていた組合が、労組法附則第二項によつて証明を求めた場合
  • (イ)労組法施行後六十日を経過した後に証明を求めてきた場合でも、委員会はこれを受理して、審査を行なうこと。
  • (ロ)審査の一般方針としては、労組法附則第二項との関係上、できるだけ速かに証明を与えるようにつとめること。 従つて、審査の結果、資格要件を欠くものにあつては、規則第二十四条を活用して、その補正を勧告し、又例えば労組法第二条第一号、 第二号に関する場合の如く、労使間の協議によつて決まるべき性質のものについては、必要に応じ、委員会が自らあつ旋する等の協力を与え、 補正を確認−あるいは確約−すれば、直ちに証明書を交付する等の措置を講ずること。
  • (ハ)労働組合の連合体又は全国的組合のときは、連合体そのものは勿論、これを構成する組合のすべてが、 法の規定に適合するかどうかを審査すべきであるほか、右の一般方針によつて審査する。ただ、その場合に、構成組合数が多く、 審査に長時日を要し、組合に不当な不利益を与えるおそれがあるようなときには(ロ)で述べたような適宜の処置をとること。
(2)新たに法人登記のための証明を求めた場合 一般方針としては、(1)の(ロ)(ハ)と同様であるが、この場合には、特に次の二点に留意すること。
  • (イ)この場合には、既に法人として登記されていたものに対するよりは、審査は厳重にされるべきこと。
  • (ロ)誠意をもつて法の規定に適合しようとしている組合に対しては、特に親切且つ迅速に取扱い、(1)の(ロ)及び(ハ) に述べたような方法を活用して、できるだけ組合の便宜を図ること。この場合の処理については、中労委における炭労の取扱事例を参照すること が望ましい。
二、調整手続における資格審査について
(1)労調法によつてあつ旋、調停、仲裁を行う場合には、委員会は、それが調整をなすべき段階にあると認められる限り、一方労調法第五条の 趣旨に従つて速かに調整手続を開始するとともに、他方では公益委員会議において組合の資格審査を行うこと。
(2)資格審査の過程においては、法人登記に関する資格審査の項において述べた方針に従い、組合が法の規定に適合するものとなるようにつとめること。
(3)資格審査の手続が完了しない以前においても、調整が争議解決のための適当な段階に達したときには、時機を失せず具体的措置 (例えば、調停案を提示して当事者の受諾を勧告する等)をとり、争議の迅速解決という労調法本来の目的に副うよう留意すること。
三、個々の労働者が申立てた不当労働行為事件について
労組法第七条第一号によつて個々の労働者が保護を受けようとする場合には、第五条第一項但書との関係上、仮りにその所属する労働組合が 資格要件を具えない場合であつても、第七条の救済について審査することができる。

以上

トップへ