通知

中労委文発第500号
昭和24年8月9日
各地方労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

中労委規則の施行について

標記中労委規則は、八月四日付官報で公布せられたが、これが施行に当つては左記事項御留意の上処理せられたく、通知します。

一、第一章(総則)関係事項
(一)第一条関係  この規則は、行政規則であると同時に、一面司法規則たる性格を有する部分を含むものであるが、事案によつては、 司法関係諸機関と直接連繋する関係もあり、その手続が規則に適合しない場合はその事案の継続処理にそごを来たすことがあるから 十分留意せられたきこと。
二、第二章(会議)関係事項
(一)第六条関係  総会の定足数については、「原則として各側の過半数」が定められた趣旨は、合議体たる委員会における総会の重要性と その民主性を考慮したものである。勿論、総会の成立には、労組法第二十一条第三項に規定された定足数をもつてして何ら差支えはないが、 如上の趣旨から、議事の開始に当つては議案内容等を勘案の上出席各員に諮つて開会の当否を決める等しかるべき方法により慎重に運営せられたきこと。
(二)第七条関係  総会の議決については、会長に対しては、委員としての議決権が与えられており、可否同数という特殊の場合において 会長としての裁決権が発動せられるものであることに留意せられたきこと。
(三)第九条関係  本条第一項第一号により、労働組合の資格に関する事項は公益委員会議の付議事項として取扱うこととなつているが、 規則第二十二条第四号に定めるところにより、特に資格審査取上の可否を審議する必要がある場合は総会において討議しなければならないので、 かかる事案の生じたときは、規則第五条第八号によつて処置せられたきこと。
(四)第十条関係  本条第二項は、会長代理たる委員の権限と義務を排除する趣旨ではなく、会長在席の場合であつても、事案の円滑処理のため、 それに関連する専門的知識を必要とする等の理由によつて、会長が指名するのである。 しかし一時的たりとも会長の議事統裁権を委譲する結果となるので、この点において特に総会の承認を求めるべきであること。
三、第四章(労働組合の資格)関係事項
(一)総括的事項
  • (イ)労働組合の資格審査については、未だ一部に旧労組法の趣旨による一般的な資格審査を必要とするような観念が残存しているやに 見受けられるが、改正法の趣旨たる労働組合の自由設立主義により、必要ある場合に労働組合がその資格を立証することによつて委員会は 受動的に資格審査を行なうのみであることを徹底せしめられたきこと。
  • (ロ)労組法第二条および第五条第二項の規定に適合するための労働組合に関する諸指導は、労働省がこれを担当するものであつて、 労働委員会としては、具体的な個々の資格審査につき、これを担当するものであり、そのための資格審査判定基準については、 委員会相互の連絡によつて遺漏なきを期せられたきこと。
  • (ハ)従来裁判所においては民訴第四十六条の疎明資料として労働組合資格認定書を必要としたときもあつたが、今次改正法によりかかる場合、 一般的な資格審査決定書写乃至は資格証明書を交付発給することがない建前になつたことに留意せられたきこと。
  • (ニ)本章の規定中、例えば第二十三条、第二十七条、第二十八条等に、単に「審査」あるいは「再審査」とあるのは、 不当労働行為事件における審査と異なり、おおむね規則第二十三条第二項の手続をいい、審問を含まないものと解釈せられたきこと。
(二)第二十二条関係  本条第一号における争議調整事案と資格審査の関係については、追つて別途連絡の予定である。 また、本条第四号については、労働者委員の推薦(労組法施行令第二十条第一項)における労働組合の資格につき行政庁において疑義ある場合等を 考慮して設けられた規定であるから、極めて狭義に解釈されたきこと。
(三)第二十三条関係  本条第二項における資格審査に当つて「労働組合が提出する証拠」には、おおむね次のものを含ましめるよう 指導せられたきこと。 [1]規約 [2]協約 [3]議事運営規程 [4]組合専従者取扱規程(会社側のものも含む。)[5]非組合員の範囲 [6]組合会計関係書類(予算書、決算書等)  [7]役員名簿および執行委員名簿(連合体のときは更に次のものを加う。) [8]組合組織形態
(四)第二十六条関係  交付すべき証明書は原本とし、この場合は、規則第二十五条第二項による決定書写は、必ずしも交付する要なきこと。
(五)第二十七条関係  本条第一項によれば再審査申立期間は「十五日以内」とあるが、この規定が訓示規定であることおよびこれを職権でも 取り上げ得ることの二つの理由によつて、十五日を経過した後でもこれを処理し得るものと解せらるべきこと。
(六)第二十八条関係  記録の整理についての会長の確認は最終的にこれをする意味であつて、会長以前の公益委員または公益委員会議から 確認の求めがあつたとき、これを拒否する理由はないこと。なお、右は規則第五章第五十七条についても同様につき念のため。
四、第五章(不当労働行為)関係事項
(一)第三十二条関係  申立をするものが労働組合である場合には、その資格の立証資料を必ず申立書に添付するよう指導せられたきこと。 また、代理申立について規定がないのは、不許可の趣旨であることに注意せられたきこと。
(二)第三十三条関係  本条第四項における審査開始に際しての地裁に対する連絡は、行政事件訴訟特例法第十条による執行停止命令に対する 対抗策として意味があるものであるから励行せられたきこと。
(三)第四十条関係  本条第一項より第三項にいたる審問に際しての当事者に関する規定は、当事者に対し審問に立ち会う機会を与える趣旨に解せられたきこと。 また、第十二項によつて調書を閲覧すべき「関係人」は、できるだけ厳格に限定して解釈せられたきこと。
(四)第四十七条関係  緊急命令申立書については、民事訴訟印紙法第三条および第十条の規定により七円の収入印紙を貼付せられたきこと。
(五)第五十一条関係  本条第三項における労働者または労働組合からの再審査申立期間が「十五日以内」と定められた趣旨は、 労組法第二十七条第三項による使用者からの再審査申立期間との対等関係において規定せられたものであり十五日経過後の措置については、 前掲三の(五)におけると全く同様に取扱われたきこと。
五、第六章(労調法第四十二条の請求)関係事項
(一)第六十二条関係  本章における審査手続については、本条において規則第三十三条を準用しているが、 その取扱の性質上「審問」手続は含まれないものと解せられたきこと。
六、第八章(労働争議の調停)関係事項
(一)第七十条関係  本条第二項による勧告が応諾せられず、従つて調停申請が取下げられないときは、公益事業においては調停申請の日から 労調法第三十七条における「三十日」が算えられるべきこと。
(二)第七十六条関係  調停案の疑義に関する申請についての労調法第二十六条第二項の規定による申請の手続は、書面(申請書)または 口頭によつて、当該労働委員会の会長を経由して、その調停案を提示した調停委員会に対し申請するよう、かつ、申請書には、 次の事項を含ましめるよう指導せられたきこと。 [1]申請の日付 [2]申請者の名称(当事者の委任を受けた者であるときは、その権限を証明する書面を添付すること) [3]調停案提示の日付  [4]調停案の解釈または履行に関する意見不一致の要点 なお、口頭による申請があつたときには、事務局職員をして申請者から事実を聴取し上記各事項を明かにし、それを録取し読み聞かせた上 署名又は記名押印させるよう処理せられたきこと。
(三)第七十七条関係  公表に当つては、新聞ラジオによるは勿論、中労委にあつては官報に、地労委にあつては、都道府県公報にこれを 公示公告するよう取計われたきこと。
七、その他
本規則に基づく各種の書面の書式または報告書類の様式については、全国共通としておくことを便宜とするものにつき現在取急ぎ検討中であるから、 早急決定の上は事務連絡いたしたく、なお、経過的には、要件を充すべき任意の形式によつて措置せられたきこと。

以上

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