平成21年8月7日

中央労働委員会事務局

第三部会担当審査総括室
審査官  野 康夫

tel. 03(5403)2265
 fax. 03(5403)2250

大谷学園不当労働行為再審査事件(平成20年(不再)第26号)命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成21年8月7日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したのでお知らせします。命令の概要等は次のとおりです。

命令のポイント
学園が、組合からの団体交渉申入れに対し、
  1. 要求事項である退職金問題及び駐車場問題は取下げにより解決済みである
  2. 要求事項は義務的団体交渉事項ではない
  3. 学園従業員以外の者の交渉参加はルールに反する
などとしてこれらを拒否したことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
I 当事者
1 再審査申立人  : 学校法人大谷学園(以下「学園」) 教職員198名 (平成20年2月19日現在)
2 再審査被申立人 : ユニオンちれん(以下「本部」)  組合員250名  (同年12月26日現在)ユニオンちれん大谷学園支部(以下「支部」) 組合員19名    (同上)
II 事案の概要
1 本件は、学園が、(1)19年1月に支部が団体交渉を申し入れた退職金問題及び駐車場問題は、同年度春闘で取下済みであるとして団体交渉を拒否したこと、 (2)両組合連名による同年4月の団体交渉申入れについて、上記問題は交渉事項ではない、また、組合員以外の交渉参加はルールに反するなどとして団体交渉を 拒否したことが、労働組合法第7条第2号に該当するとして救済申立てのあった事件。
2 初審神奈川県労委は20年7月15日、上記(2)について不当労働行為と認め、学園に対し、両組合との誠実団交応諾と 文書手交を命ずる命令を交付し、その余の救済申立を棄却した。
3 学園は、同月18日、初審命令の救済部分の取消しを求めて、当委員会に再審査を申し立てた。
III 命令の概要等
1 主文   本件再審査申立てを棄却する。
ただし、初審命令主文第1項及び2項を次のとおり訂正する。
1 学園は、両組合が19年4月25日付け「要求書」で申し入れた団体交渉について、 退職金問題及び駐車場問題は団体交渉の 対象事項ではないとし、また、支部組合以外の 者が参加することは団体交渉ルールに反するなどとして拒否してはならず、誠実に応じ なければならない。
2 (上記1に係る)文書手交
2 判断の要旨
争点1 両組合は申立適格に欠け、また、救済申立権を濫用している旨の学園主張
労働組合法第27条第1項の救済申立資格は、同法第5条第1項の規定に基づく労働組合資格審査要件(同法第2条及び第5条第2項)に 適合するほかに格別な要件はない。当委員会は両組合の上記資格について適格決定しており、学園主張は採用できない。
争点2 学園による本件団交拒否の労働組合法第7条第2号該当性
(1) 組合には労働組合法第7条違反の前提となる社団性が欠けている旨の学園主張について両組合は労働組合法に適合している旨決定され、学園主張は採用できない。
(2) 学園の団体交渉拒否には正当な理由がある旨の学園主張について
ア 退職金問題及び駐車場問題は取下げにより決着済みだとする学園主張について
上記問題につき、学園の態度は、同問題を取下げなければ賃金についての妥結はできないというものであり、これに対して支部は、 次年度に再度要求を行うかたちで要求を繰り返してきたものであったことからすれば、取下げによって同問題が実質的に解決したと 見ることはできず、取下げは当該年度においては解決済みとして取扱う旨の合意にすぎないとみられるから、学園主張は採用できない。
イ 本件要求事項は義務的団体交渉事項ではないとする学園主張について
退職金は労働条件に関する問題であり、両組合の要求は、学園の現行退職金制度に金額を上積みする制度の 実施要求であって制度を誤解したものではなく、他私学の資料が開示されなければ交渉を開始できないものでもないから、 学園主張は採用できない。また、駐車場問題の要求は、勤務地による無償駐車場の有無から生じた労働条件の格差是正が趣旨であって 勤務上の取扱いに関するもので、是正の目的も、無償化による平等にあって、駐車場の有償化措置によって解決したとはいえない。
ウ 支部組合員以外の者が出席する団体交渉の拒否には正当な理由があるか
○ 2年の和解で、団体交渉出席者を支部組合員に限る合意がなされた旨の学園主張について2年当時の紛争に係る和解及び 合意書において、支部が本部含め第三者に団体交渉を委任せず、本部が学園に対する団体交渉権を行使しない合意などがなされた事実は 認められない。
○ 団交出席者を支部組合員に限るという慣行がある旨の学園主張について本部が、2〜18年度まで団体交渉に出席していない 状態のみをもって、直ちに、労使間に拘束力を有する程度に成熟した慣行であると認めることはできず、単に支部が第三者への委任権を 事実上行使しなかったことの結果にすぎず、学園主張は採用できない。
○ 本部と学園の間に、本部が団体交渉権を行使しない慣行がある旨の学園主張について団体交渉権は労働組合の 基本的かつ重要な権利である。本部が、2年の和解以降18年まで団体交渉を申し入れていない理由は、その間、殊更に団体交渉権を 行使するような紛争が生じていかったためとみるのが相当で、14年度以降の学園の交渉態度に対応して本部は、19年2月に至って 支部と連名で団体交渉を申し入れたとみることができ、学園主張は採用できない。
争点3 救済内容の相当性
初審命令主文第1項は両組合の19年4月25日付け申入れに係る団体交渉に誠実に応ずべき事を命ずる趣旨と解されるが、 この趣旨をいうものとしてはやや明確性を欠くので訂正する。
【参考】 本件審査の状況
初審救済申立日  平成19年2月23日(神奈川県労委平成19年(不)第6号・同第19号併合事件)
初審命令交付日  平成20年7月15日
再審査申立日   平成20年7月18日

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