平成21年8月11日

中央労働委員会事務局

第一部会担当審査総括室
  室長   西野 幸雄

Tel 03−5403−2157

Fax 03−5403−2250

横浜市資源リサイクル事業協同組合不当労働行為再審査事件
(平成20年(不再)第23号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長諏訪康雄)は、平成21年8月11日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

― 協同組合の本件団体交渉における対応は、賃金格差等の質問に相応の説明を行っていることから不誠実団体交渉ではなく、不当労働行為に当たらないとされた事例―
協同組合は、賃金格差に関する組合の要求や質問に対し、賃金格差が生ずる事情や検討状況等を説明し、その後、格差を是正する方向で賃上げを行うなどの 対策を講じていること、また、皆勤手当に関しても、組合の要求を踏まえて具体的対策を講じた上でその経緯について説明をしていることから、協同組合の対応は 不誠実であったということはできない。
I 当事者
再審査申立人:資源リサイクル労働組合(「組合」)[神奈川県横浜市]組合員数2名(20.3.14現在)
再審査被申立人:横浜市資源リサイクル事業協同組合(「協同組合」)[神奈川県横浜市]従業員数197名(20.2.25現在)
II 事案の概要等
1  本件は、協同組合が、[1]賃金格差、皆勤手当の未払い等を議題とする団体交渉(「本件団体交渉」)において誠実に対応しなかったこと、 [2]組合の上部団体に対し、組合を誹謗する内容の団交記録をファクシミリ送信したこと、[3]組合の上部団体と、組合を抜きにして団体交渉を行ったこと、 [4]ハローワークの求人票に「労働組合なし」と記載していたことが、不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
2  初審神奈川県労委は、上記の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
III 命令の概要(初審棄却命令を維持)
1 命令主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
(1) 不誠実団体交渉(労組法第7条第2号)の成否について
ア 賃金格差に関する団体交渉について
協同組合は、本件団体交渉において、組合の要求や質問に対し、賃金格差が生ずる事情やその時点での給与格差の検討状況等を説明し、 その場で回答できない事項については役員に伝える旨回答し、その後、給与格差を是正する方向で賃上げを行うなどの対策を講じているのである。 よって、協同組合の本件団体交渉における対応は不誠実であったとはいえない。
イ 皆勤手当に関する団体交渉について
組合が組合書記長の皆勤手当の清算を要求したのに対し、協同組合は、調査して回答する旨述べ、その後、同書記長を含む職員9名に対し 差額を支給し、さらにその後の団体交渉でも過去の経緯を踏まえて清算が必要であると判明した職員に対し先行して支給したもので、引き続き 調査している旨説明している。これらの協同組合の対応は、組合の要求を踏まえて具体的対策を講じた上で、その経緯についても説明をしている のであるから不誠実であるとはいえない。
ウ その他の対応について
[1]交渉担当者については、A室長は理事長の指示を受けて団体交渉に出席し、賃金格差等の団体交渉に誠実に対応していること、 [2]交渉場所については、組合が近辺を希望する旨申し入れたことから、ファミリーレストランで行うことになったところであり、実質的な交渉が 行われていること、[3]交渉時間については、賃金格差問題等について実質的な交渉が行われていたことが、それぞれ認められる。 したがって、協同組合の対応は不誠実であるとはいえない。
(2) 支配介入(労組法第7条3号)の成否について
ア 本件団交記録の送付について
組合は、A室長が団交記録を上部団体に送付したことは支配介入に当たると主張する。
しかし、A室長は別組合の委員長の求めに応じて団交記録を送付したのであり、同室長が積極的に本件団交記録の送付により、 上部団体から組合への働きかけを期待したものとはいえない。また、組合と上部団体との関係は、団交記録の送付を契機として悪化したとは 直ちにいえるものではない。したがって、協同組合が団交記録を送付したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない。
イ 上部団体との団体交渉について
組合は、協同組合と組合の上部団体との団体交渉が認められる根拠としてB主幹の発言を挙げるが、組合の委員長の証言では、 協同組合と上部団体が何時、どのような議題で団体交渉を行ったかについて明らかではなく、他に協同組合が上部団体と団体交渉を行ったことを 認めるに足りる証拠はない。したがって、この点について、労組法第7条第3号の不当労働行為は認められない。
ウ 求人票の「労働組合なし」の記載について
B主幹の「一般論として従業員を募集する際には労働組合がないとした方がよい場合もある」との発言は、一般論としても労働組合に対する 理解を欠く軽率な発言であったといわざるを得ず、協同組合が求人票の誤りを長期に亘って修正しなかったことは、事業主として不適切であった と解される。しかし、求人票の「労働組合なし」との記載につき、新規に求人を行う際には修正手続を行ったことからすると、協同組合が ことさら組合を嫌悪する意図をもって上記の記載を修正しなかったとまではいえない。また、協同組合は組合と団体交渉を行い、組合と一定の 労使関係を構築していた。したがって、協同組合は、求人票に「労働組合なし」と記載することによって組合の弱体化を企図していたとまでは いえず、これをもって労組法第7条第3号の不当労働行為とはいえない。
【参考】  本件審査の概要
初審救済申立日:平成18年9月29日(神奈川県労委平成18年(不)第26号)
初審命令交付日:平成20年6月24日
再審査申立日:平成20年7月7日(労)

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