平成21年6月29日

中央労働委員会事務局

第三部会担当審査総括室

室長   鈴木  裕二
電話 03(5403)2172
FAX 03(5403)2250

太陽自動車不当労働行為再審査事件
(平成19年(不再)第70・74号)命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成21年6月29日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

〜便宜供与の再開拒否に関する不当労働行為の成否について〜

会社が廃止したチェックオフ等の便宜供与について、組合が団体交渉等でその再開を要求したのに対し、会社が便宜供与を再開しなかったことに組合の弱体化の意図を認めることは困難であり、不当労働行為に当たるとはいえないが、団体交渉で上記再開要求に応じられないとの結論を述べる以上の対応を行っていないことは、団体交渉への不誠実な対応であり、不当労働行為に当たる。

I 当事者

太陽自動車株式会社(以下「会社」)従業員数約830名(平成15年10月29日現在)

太陽自動車労働組合(以下「組合」)組合員数約200名(平成15年10月29日現在)

II 事案の概要

1 本件は、会社が、(1)組合への便宜供与(組合費のチェックオフ、組合事務所の賃料負担等)を廃止したこと及びその再開を拒否したこと、(2)組合との団体交渉において、上記(1)の便宜供与の再開問題に関し誠実に対応しなかったこと、(3)組合員に対する賃率(営業収入額に対する賃金の支給率)の引上げを行わなかったことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。

2 初審東京都労働委員会は、団体交渉における便宜供与の再開問題に関する会社の対応は不当労働行為であるとして、会社に対し、(1)組合が申し入れた便宜供与の再開に向けての団体交渉に誠意をもって応ずること、(2)文書掲示、(3)履行報告を命じ、その余の申立てを棄却ないし却下したところ、会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要等

1 主文要旨

(1) 本件各再審査申立てを棄却する。

(2) 初審命令主文第1項を次のとおり訂正する。

会社は、組合が平成14年11月11日付け「2002年秋季要求書」及び平成15年3月6日付け「2003年春季要求書」により申し入れた便宜供与(組合費のチェックオフ、組合事務所の貸与等)の再開に係る団体交渉につき、会社の主張及びその根拠を具体的かつ合理的に説明するなどして、組合の要求に対し誠実に対応しなければならない。

2 判断の要旨

(1) 本件便宜供与の廃止及び再開拒否は支配介入の不当労働行為に当たるか

ア まず、会社によるチェックオフ等の便宜供与の廃止が不当労働行為に当たるとする申立ては、申立期間の徒過により却下せざるを得ない。

イ 組合は、廃止された便宜供与を再開することは、かつて組合が賃金制度の変更に同意した際に約束されたことであるとして、会社が組合の要求を拒否して同便宜供与を再開しないことは、組合に対する支配介入の不当労働行為に当たると主張する。   

 しかしながら、会社と組合との間で、組合が主張する便宜供与再開の約束があったとは認められず、会社が併存する他の労働組合にもチェックオフ等の便宜供与を実施していないことも考慮すると、会社が組合の要求を拒否して上記便宜供与を再開しないことが、組合の弱体化を意図したものと認めることは困難であり、不当労働行為に当たるとはいえない。

(2) 本件便宜供与の再開に係る団体交渉での会社の対応は不誠実な団体交渉に当たるか

会社は、組合が求める便宜供与の再開について、「今は再開する意思はない」などと、自らの結論を述べる以上の対応を行っておらず、再開できないとする具体的かつ合理的な理由等について説明するなどして、組合の理解や納得を得ようと努めたとは認められない。このことは、団体交渉を通じて労使の合意により問題解決を図り、正常な労使関係を構築する可能性を著しく失わしめるものであり、不誠実団交の不当労働行為に該当する。

(3) 組合員に対する賃率を改定しないことは支配介入の不当労働行為に当たるか

組合は、組合員運転手に対する賃率を引き上げることについて、会社との間で合意されていたにもかかわらず、会社が上記賃率の引上げを行わないことは不当労働行為に当たると主張するが、組合が主張する合意が会社と組合との間で明確になされていたとは認められず、会社が賃率の引上げを行わないことが不当労働行為に当たるとはいえない。

(4) 結論

本件各再審査申立てには理由がないので、いずれの申立ても棄却する。ただし、団体交渉において、会社は、自らの主張及びその根拠について具体的かつ合理的に説明し、組合の理解や納得を得ようとしたり、労使の見解の対立を可能な限り解消するよう努めることが望ましいので、その趣旨をより明確にするため、前記1(2)のとおり、初審命令主文第1項を訂正する。


【参考】 本件審査の概要

・初審救済申立日 平成15年10月29日(東京都労委平成15年(不)第98号)

・初審命令交付日 平成19年12月12日

・再審査申立日 平成19年12月18日(中労委平成19年(不再)第70号)
           平成19年12月25日(中労委平成19年(不再)第74号)


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