平成21年6月25日

中央労働委員会事務局

第一部会担当審査総括室

審査官   櫻井  惠治
Tel 03−5403−2169
Fax 03−5403−2250

光陽商事・コーヨー急送不当労働行為再審査事件(平成19年(不再)第76号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成21年6月24日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

− 組合事務所不貸与が支配介入に当たるとされた事例 −

会社が、組合事務所を設置・賃貸するという労使協定を締結したにもかかわらず、協定締結から8か月の長期間にわたって具体的提案を行わなかったことは、組合の影響力が及ぶことを阻止し、その組織運営の弱体化を企図した支配介入であり、不当労働行為に該当する。

I 当事者

1 再審査申立人:

全国金属機械労働組合港合同(「港合同」):組合員800名(平成19年6月1日現在)

全国金属機械労働組合港合同コーヨー急送分会(「分会」):組合員6名(平成19年6月1日現在)

(港合同と分会を併せて「組合」)

2 再審査被申立人:

光陽商事株式会社(「商事」)(大阪府門真市):従業員約260名(平成19年6月1日現在)

コーヨー急送株式会社(「急送」)(大阪市中央区):従業員約80名(平成19年6月1日現在)

(商事と急送を併せて「会社」)

II 事案の概要

本件は、会社が、(1)急送と組合との間で締結した16年6月25日付け協定書(以下「16.6.25協定書」)において組合事務所の設置及び賃貸を確認したにもかかわらず、これを履行しないこと、(2)組合の組合員に対して元組合員、急送の執行役員等を通じて組合からの脱退を勧奨したこと、(3)団体交渉等において急送の執行役員らが組合及び組合の組合員に対して誹謗・中傷をしたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。

初審大阪府労働委員会は、急送の上記(1)及び(3)の行為は不当労働行為に当たると認定し、急送に対して、組合事務所の設置・賃貸について組合と誠実に協議し、組合事務所を貸与すること、及び、今後はこのような行為を繰り返さない旨の文書交付を命じ、商事に対する申立ては却下し、その余の申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要

1 主文

本件再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1) 商事の使用者性について

急送は商事の運送部門ではなく別個独立の事業体としての実体を有していたものであり、商事は急送の従業員の労働契約上の雇用主ではなく、また、基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたということはできない。

よって、商事は、急送の従業員に対する関係において、労組法第7条の使用者に該当するものではなく、初審判断は相当である。

(2) 組合事務所不貸与について

ア 急送には、組合事務所を設置及び賃貸するという16.6.25協定書を履行する姿勢はみられず、本件の組合事務所不貸与は、同協定書を締結していながらこれを履行せず、組合の影響力が及ぶことを阻止することによって、その組織運営の弱体化を企図した支配介入であり、不当労働行為に該当する。

イ 急送は、本件初審申立て後の17年3月22日以降、組合事務所について具体的な提案を行っているが、16.6.25協定書締結から8か月を超えており、さらに、これら提案が適切なものであったとの証拠もない。

ウ 組合は、16.6.25協定書により16年8月には営業所構内に設置されていたはずの組合事務所がないことによって、組合活動に制約を受けたことが不利益取扱いの不当労働行為にも該当すると主張するが、16.6.25協定書には組合事務所の設置場所や時期に関して何ら記載されておらず、これらに関して労使確認があったことを認めるに足りる証拠はないこと等から、組合の上記主張は採用できない。

エ よって、急送に対して、組合事務所の設置及び賃貸について組合と誠実に協議し、組合事務所を貸与しなければならない旨を命じた初審命令は相当である。

(3) 脱退勧奨について

ア A元委員長らは、X執行役員と会食した後に組合を脱退しているが、X執行役員が会食時等にどのような会話をしたかは明らかではなく、その際に脱退勧奨が行われたとする証拠も認められない。

イ Y補佐は、B組合員が既に組合脱退の意思を有していたところ、同人の相談に応じて内容証明郵便による脱会届の提出方法を説明したのであるから、これをもって脱退勧奨の事実があったということはできない。

ウ A元委員長と港合同との間においては労働条件整備にかかる解決金の引渡しをめぐって対立が生じていたと認められることから、A元委員長は自らの意思で脱退を働きかけていたものとみるべきであり、不当労働行為は成立しない。

エ C元組合員は、他の組合員と勤務終了後に会食をしたことはあったが、会食における会話の内容等は明らかではなく、脱退勧奨の事実があったと認めることはできない。

オ よって、本件の脱退勧奨に関する申立てを棄却した初審判断は相当である。

(4) 会社従業員らの言動について

ア X執行役員及びY補佐の言動については、組合を嫌悪し、組合を威圧するものであり、組合の組織運営の弱体化を企図した支配介入に当たり、不当労働行為に該当する。

イ 組合は上記アに加えて、急送がY補佐やA元委員長らを団体交渉に出席させていること自体をもって支配介入に当たると主張するが、Y補佐は、X執行役員の要請を受けて同人の補佐として団体交渉に出席しているところであり、このこと自体をもって、直ちに組合員に対する威圧的行為に当たるなどとする特段の証拠は存在しないし、また、A元委員長らを出席させることによって組合の組合員を威圧したとまでいうことはできず、これによって誠実団交義務を逸脱したということはできない。

ウ よって、組合の上記イの主張は採用できず、会社従業員らの言動に関する初審判断は相当である。

【参考】

本件審査の概要

初審救済申立日 平成16年12月17日(大阪府労委平成16年(不)第69号)

初審命令交付日 平成19年12月13日

再審査申立日 平成19年12月28日


トップへ