平成21年4月22日

中央労働委員会事務局

第一部会担当審査総括室

室長   西野  幸雄
Tel 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250

山口県済生会不当労働行為再審査事件
(中労委平成20年(不再)第6号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成21年4月22日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要は、次のとおりです。

− 組合に対する公開質問状への連名を勧奨した行為は不当労働行為に当たらない −

組合が病院内に設置する自動販売機の手数料の流用等をめぐり、Aら一部の組合員が組合に対し公開質問状を提出するに当たり、病院の事務次長らが他の組合員に対して公開質問状の質問者として連名するよう勧奨した行為は、公開質問状作成等の行為の重要な部分に関与したということはできず、組合運営等に影響を与えたと評価することはできない。また、自販機問題は、法人としても施設管理上、労務管理上放置できない問題であり、公開質問状への連名勧奨という行為の目的及び手段は相当な範囲を逸脱するものとまではいえず、組合運営等に対する支配介入の意図に基づくものともいえない。したがって、本件勧奨行為は労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるということはできない。

I 当事者

1 再審査申立人:

全済生会労働組合山口支部(「組合」)   (山口県山口市)

2 再審査被申立人:

社会福祉法人恩賜財団済生会(「法人」)  (山口県山口市)

II 事案の概要

1 組合が済生会病院(「病院」)内の売店を経営する一環として飲料の自動販売機を設置していたところ、その手数料等の一部が流用ないし個人的に費消された事実が明らかになり、このことに組合役員が関与している疑いが生じた(以下、手数料等をめぐる諸問題を「自販機問題」)。

本件は、組合の一部の組合員(「Aら」)が自販機問題の解明を求めて平成18年8月10日付け公開質問状(「公開質問状」)を組合に提出するに当たり、病院の事務次長(「B次長」)らが、他の組合員に対して公開質問状の質問者として連名するよう勧奨した行為(「本件勧奨行為」)が不当労働行為であるとして、組合が山口県労委に救済を申し立てた事件である。

2 山口県労委は、本件勧奨行為は不当労働行為に当たらないとして、組合の申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要等(初審の棄却命令を維持)

1 主文

本件再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1) 自販機問題の位置づけ及び公開質問状作成等の目的・性格等について

ア 自販機問題は、組合自らが解決すべき組合内部の問題であるとともに、法人としても業務運営上ないし施設管理上・労務管理上放置できない問題であると位置づけられるものであるから、法人はその本来の目的及び手段の相当な範囲において、この件について調査等の行為をすることができると解される。

イ Aらによる公開質問状作成等は、組合員全体の利益を図り、組合の健全な運営を目指して自販機問題の事実の解明を図ることを目的として、組合の規約に規定された組合員の権利を行使したものと認められるものであり、組合員の自由かつ正当な組合活動の範囲に属することは明らかである。

(2) 本件勧奨行為の組合運営及び公開質問状作成等に対する関与の有無・程度や影響について

本件勧奨行為はAらによる公開質問状作成等の一部に関与したものではあるが、その経緯及び態様からすると、これをもって公開質問状作成等の行為の重要な部分に関与したということはできず、軽率であった点は否めないものの、それ自体組合運営に実質的に影響を及ぼす可能性がある行為とまでいうことはできない。

(3) B次長の意図について

病院としても自販機問題の事実解明を目的とする調査を進めており、B次長もこの調査に携わっていたこと等を勘案すると、本件勧奨行為には、自販機問題の事実解明を促進しようとする意図があったことを否定することはできず、他方本件において組合に対する不当な介入の意図を認めるに足りる証拠はない。

公開質問状作成等も自販機問題の事実解明を目的とするAらの正当な組合活動であること、自販機問題は、法人としても業務運営上ないし施設管理上・労務管理上放置できない問題であることを併せ考えると、本件勧奨行為におけるB次長らの行為は、Aらの組合活動に協力したものではあるが、これを不当に利用したとはいえず、あくまでも自販機問題の事実調査の域を出ないとみるべきものであって、組合運営及びAらの組合活動に対する支配介入の意図に基づくものと評価することはできない。

3 結論

以上のとおり、本件勧奨行為は、Aらの組合活動に一部関与したものではあるが、組合運営やAらの組合活動に影響を与えたと評価することはできないこと、その目的及び手段は相当な範囲を逸脱するものとまではいえず、組合運営やAらの組合活動に対する支配介入の意図に基づくとはいえないことから、組合運営及び公開質問状作成等に対する支配介入に該当するということはできない。

【参考】

1 本件審査の概要

初審救済申立日 平成18年10月24日(山口県労委平成18年(不)第3号)

初審命令交付日 平成20年 3月 5日

再審査申立日  平成20年 3月19日(労)

2 初審命令主文

本件申立てを棄却する。


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